年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

暖 竹

2012-11-20 | フォトエッセイ&短歌

 夕陽が沈む、夕焼け空、落日の大陽……とくれば、詩や句や短歌のみならず芝居や映画やドラマでもよく使われる絶景となる。海と空を黄金色に染めて水平線に没する人間を寄せ付けない紅の大陽、拡がる都市に秘やかに息する庶民の街を燃え尽くす炎の夕陽。人間がいてもいなくても夕焼け空は哲学的な美しくで迫って来る。
 朝の御来光を崇める事はあるが、夕日ほどの情感がない。思えば、生き物は一日一日を終末に向かって歩いている。何を成し遂げて没するのか、最後をどのように迎えるのか。そんな意識が明暗の日没に精神的郷愁を呼び覚ますのかもしれない。物足りないような、淋しいような、でも待ってはくれず宵闇が地上を被う。
 立冬を過ぎれば空気の澄む日も多くなり夕日が一段と美しくなる。山の端に消える陽光は神々しいばかりだ。無用で無敵の雑草と云われるダンチク(暖竹)の穂が何故か懸命に揺れてるようだ。逆光を受け濃い影をつくっている。 
 砂地、荒れ地などあらゆる土壌にも適応し、ヒ素、カドミウム、鉛の汚染された土地でも育つと云う可愛いげのない奴だ。ダンチクに敵なしである。ところが、最近、バイオ燃料の原料として使えるのではないかという報告がなされ注目を集めるようになった。その日がきたらダンチクが人類に対して初めて役に立つ活躍の時なのかもしれない。

*ダンチク(暖竹)は関東を北限とする暖地に生育するイネ科の多年草。地方によってはアセまたはヨシタケと呼ぶ。イタリアのヒトラーが紙の原料にしたことでも有名。


  暖竹は影絵見事に演出し靱(つよ)き花穂にも哀愁ありて

  ヨシタケのザワワザワワと風に鳴る日暮れの挽歌を静かに奏でる

  立冬を越えれば宙(そら)も広がりて夕日を抱きて沈み消えゆく

  光芒を放ちて沈む太陽はなお去りがたく夕映えとなる

  深き影スーッと消えゆく日没に犬抱く男の溜め息があり


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