年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

塩田平:未完の塔

2009-05-01 | フォトエッセイ&短歌
 真言宗智山派の木造萱葺の古刹、独鈷山前山寺(ぜんさんじ)の本堂。塩田城の鬼門に位置し祈祷寺として武将の信仰も厚かったという。
 塩田平は広大な平地であるが、降水量が少なく飢饉に見舞われた。それが原因でもあろうか、有数の百姓一揆の多発地帯でもある。村人達は首謀者を義民として祀りながら、苦難の末に大小百を越える「ため池」を造り美田を作り上げていく。
 本堂の縁側から名物の「胡桃おはぎ」を食べながら平野の民衆のエネルギーを眺める。

<歴史を彩る寺社や支配階級である武士を支えたのも結局は民衆の力である>

 境内には国の重要文化財に指定されている三重塔がある。建立年代は不明だが和様・禅宗様の折衷様式から室町時代と推定されている。
 ところが、二層・三層の窓や扉、廻縁・勾欄が、何かの事情で工事が中断したままという珍しい建立途中の塔。それがかえってスッキリしていて調和がとれてるとかで「未完成の完成の塔」と呼ばれ評判となった。

<美しい未完の三重塔。竣功に至らなかった原因はミステリ-のままである>

 黒門を潜ると約200mの山門に至る参道が続く。両側には二抱えも三抱えもある見事な桜や松の巨木がある。圧巻は樹齢800年といわれる周囲5~6mもある欅の威容。まさに風雪に耐えた樹肌からは木の精が放たれているかのような感動を覚える。
 「参道を通ってこそ静かな、そして厳かな心になり仏や塔を拝観する心を養える」とか。

<参道を静かに見下ろすケヤキの妖樹。黒門の後には塩田平は開けている>


最新の画像もっと見る

コメントを投稿