年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

冬遠からじ<1>葡萄柿

2010-12-01 | フォトエッセイ&短歌
 「桃栗三年柿八年」。芽を出してから柿の実がなるまでの期間は長い。収穫されるようになればしめたものだ。「柿が赤くなると医者が青くなる」と言うことわざがあるように、豊富なビタミン類とミネラルを含み医者いらずの万能薬としても重宝された。特に冬に向かっての風邪の予防には絶対的であっる。そして二日酔いの回復には最適というのが呑んべ~にはうれしい。
 甘柿・不完全甘柿、渋柿・不完全渋柿など日本柿の種類は1000種もあるそうだがビタミン類の含有には変わりが無いようだ。

<川崎市原産の禅師丸柿。不完全甘柿で小ぶりだが種が大きく果肉が少ない>

 晩秋に向かい柿の季節である。どこの屋敷にも柿の木があって、枝ごと取った柿を束ねて市場に出荷するのである。取り損なって傷の付いた柿は自家用で食べる。農家の貴重な現金収入の果物であったし食料でもあった。戦後の食糧欠乏時代、渋の残った未熟の柿を盗み食いして怒られたっけ!バナナが高級輸入品で庶民の手の届かない頃の話である。
 現在では採る事も忘れられて、里の霜降る季節の風景として放置されたままの柿の赤が珍しくはなくなった。

<角田市の山里、柿の木の田園風景。花火もように広がった赤い実が美しい>

 屋敷に続く土手道に見事な柿の老木があるので寄ってみる。脇に大粒のブドウ状の大きさの黒い実を付けた木の実が目につく。う~ん、ハテナ。
 実物を見たことはないが、信濃柿(しなのがき)と呼ばれる、豆柿(まめがき)か。柿渋を取るために信越地方で盛んに栽培された事があった。渋柿の未熟な果実を粉砕、圧搾して出来た汁液を発酵・熟成させて得られる柿渋。用途は多種多様である。
 紙に塗って乾燥させると硬く頑丈になるため、うちわや番傘に使用、また防腐作用があるため、即身仏(ミイラ)に塗布したともある。
 
<地方によってシナノガキ、マメガキ、ブドウガキ、ビンボガキ等とよばれる>