年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

隅田川:雪吊りの庭

2009-03-11 | フォトエッセイ&短歌
 旧芝離宮庭園は江戸時代に「浜芝」と呼ばれた海浜で漁師の姿や日本橋に行き交う舟が目の当たりに眺められた。延宝の頃(1660年)に埋め立てが進み、4代将軍家綱から時の老中・相模国小田原藩主・大久保忠朝が拝領する。忠朝は小田原の根府川や伊豆の石などをふんだんに使った庭園「楽寿園」を造ったので石組が秀逸。それがこの庭園の始まりというからすでに440年が経過している。

<回遊式泉水庭園で池を中心とした豪快な石組が見どころの大名庭園である>

 「楽寿園」の特徴は海水を引き入れた「潮入りの池」である。満ち潮、引き潮が池と連動している事である。満潮時には中の島が満々とした水面に盛り上がり、汐がひくと州浜や島々が姿を現すなど劇的な変化を遂げたという。
 一部、州浜(すはま:砂浜)なども再現されているが、現在は海水の取り入れをしていないの淡水の池となっている。

<かって、池と海を結ぶ海水取入口跡で干満の調節を行ったという遺構>

 冷たい北風が吹き冬の気配を感じるころ、冬の準備が進められる。雪吊り・菰まき・雪囲いなどの職人の手捌きには見とれてしまう。特に冬の風物詩と言われる雪吊り(ゆきづり)の作業は手品師のように鮮やかである。
 雪吊りは、積もった雪の重みで樹木の枝が折れないように縄で枝を吊る。中心の柱から周囲にピンと伸びたたくさんの縄が美しく、枝折れを防ぐ実用面と庭を彩る装飾面の両方を兼ねそなえているという。
 地球温暖化の昨今、東京湾に雪が降る事があるのだろうか。雪の重みで縄がピンと緊張感を持って松の枝をしっかり支える、そんな雪景色も悪くはないのだが…。暖冬の今年も役割を果たすこともなく、やがて冬の季語としてのみ存在を許されるのか。
 
<背景のビルが威圧的で雪吊りの風情もないが伝統的な日本庭園の一景>