「コロナ禍が影を落とす異国の街に、9年前の光景が重なり合う。ドイツの学術都市に暮らす私の元に、震災で行方不明になったはずの友人が現れる。人と場所の記憶に向かい合い、静謐な祈りを込めて描く鎮魂の物語。」
映像の印象しか無い者には、大震災がどれだけ深く当事者の心に刻まれたかは想像出来なくて・・、ゲッティンゲンや、そこでの登場人物がイメージ出来難く、寺田寅彦や夏目漱石(夢十夜)も絡んでいて・・、鎮魂の過程は・・、理解困難な本でした。
「太陽系の惑星群から外されて準惑星になっても、冥王星がその軌道上を動くことに変わりはないでしょう。・・惑星という名前から切り離されたことにより、自動的に冥王星が忘れ去られてゆくような気がします。」
「家族は全員無事だったが、彼女の積み重ねてきた時間は水と火によってほぼ失われてしまった。・・彼女は家族と家のあった場所に戻って、波と炎にのまれた家を探し回った。しかし、過去の痕跡は他のものと混ざり合ったまま、見出すことはできなかったらしい。」
「私にとって問題なのは、距離ではなく距離感の方だから。記憶や場所とどれほどの距離を置いてきたのか、と疚しく感じ続けて・・。」
「この九年間で、私はまた自分と繋がりのある物を蓄えて、周りに並べて、消された物のことから距離をようやく取れるようになってきた。記憶に対しても、そうかもしれない。・・」
(21/12/18画像借りました。)