《神山藩が舞台の『高瀬庄左衛門御留書』『黛家の兄弟』『霜月記』に連なる最新作。
国を棄てるかもしれぬ。
だが俺が知らぬ顔したら、義妹は死ぬ。
武士の理にあらがった二人の逃避行を描く表題作を含む、
四季薫る神山の原風景と、そこに生きる人々の気品が漂う作品集。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
~「神山藩シリーズ」とは~
架空の藩「神山藩」を舞台とした砂原浩太朗の時代小説シリーズ。それぞれ主人公も年代も違うので続き物ではないが、統一された世界観で物語が紡がれる。》
著者の作品は、時々図書館の書棚を探して回りますが・・、久し振りに未読作品に出会いました。
集中力が衰えた者には短篇集である事もありがたく、それぞれの作品が、浪花節的人情性を感じさせてくれて・・、濃淡は有るものの、引き込まれて読ませて頂きました。
(画像借りました。)
余談①
『半夏生』・・「烏柄杓といいます」「半夏とも申しますな。」
Wikiによれば「半夏生(はんげしょう)は雑節の1つで、半夏(烏柄杓)という薬草が生える頃。」
「カラスビシャク(烏柄杓、学名:Pinellia ternata)とは、サトイモ科の植物の一種である。別名や、乾燥させた根茎は半夏(はんげ)の名で知られる。」
「ハンゲショウ(半夏生、半化粧、学名: Saururus chinensis)は、ドクダミ科ハンゲショウ属に分類される多年草の1種である。カタシログサ (片白草) ともよばれる。」
烏柄杓は古家の周りでもよく見かけますが、半夏生とはカタシログサ (片白草)と思っていたので・・、烏柄杓が半夏だったとは・・。
余談②
作中の所々で野鳥が登場するが・・、
『白い檻』・・「尉鶲(ジョウビタキ)とおぼしき・・松の梢にでもとまっていたのが、雪の音におどろいて飛び立ったのだろう。」
Wikiによれば「(尉鶲は)チベットから中国東北部、沿海州、バイカル湖周辺で繁殖し、非繁殖期は日本、中国南部、インドシナ半島北部への渡りをおこない越冬する。日本では主に冬鳥として全国に渡来するが近年、国内での繁殖が拡大している。」
冬になると古家周りや公園で尉鶲をよく見かけるが・・、作品の時代に、僻村の雪の中に尉鶲がいたのだろうか・・。
余談③
『白い檻』・・正鵠(せいこく)
遠い昔、漢文の先生が正鵠(せいこう)と読んだ記憶があって、その後、ずっと気になっていたが・・、今回やっと検索してみたら、《慣用読みで「せいこう」とも》との記載がありました。