経営コンサルタント田上康朗の雑感帳

経営コンサルタント田上康朗が、気ままに本音で記す雑感帳です。書く日もあれば書かないときもあります。

世襲と継承

2009年04月12日 | Weblog
選挙が近くなると、政治家の世襲問題が、姦しくなる。
それは、何か問題があるからだろうが。
はて、何なのだろう?
世襲される人が問題なのか。世襲そのものが問題なのか。

前者なら、良い人であればそんなことどうでもいいと、と思うが、
どうもその良い人が少ないから問題と言うことなのか。

後者、すなわち世襲そのものが問題であるとするなら、
その問題とはなになのか。
器が良くないと、盛られた料理もまずいということなのか。
なぜ政治家の場合だけことさら取りざたされるのか。

べつに政治家を養護する立場ではないが、
また世襲賛成論者でもないが素朴にそう思う。

政治家の場合は問題になるが、歌舞伎ではほとんど世襲である。
これが問題になったことはない。
ここで政治家の世襲問題を云々したいのではなく、
今、話題になっている中小企業の事業継承について、
考えていることを述べたいのである。

中小企業の経営者は、ほとんど世襲である。
同族会社と、すこし色眼鏡を付けて見られたり、
二代目、三代目と揶揄されることはあっても
ほとんど世襲である。これは日本以外でも大筋では違いはない。
むしろ大企業経営者の方が、サラリーマン経営者と揶揄気味で呼ばれている。

事実、事業継承問題の相談が増えている。
国の応援をうけての事業継承のセミナーや講習会も増えている。
関連した本も書店にずらりだ。

その背景には、総じて世代交代期に入ったということがあろう。
事業継承の継承者は息子に家督と事業を継がせる。これがほとんどだ。
私自身、実子以外のケースに関係したことは稀有である。
世襲とどう違うのか。実態は変わらないのではないか。

ここで、おや?とわたしが感じるのはこの事業継承の中身、内容。
これが相続、ずばり税金問題に偏りすぎで、矮小化されているのではという点だ。
関連法規ではなくセミナー等のカリキュラムの中身において。
事業継承問題が、税対策、財産引き継ぎといったレベルでの論議に
始終されるとしたら、そのこと自体が私には杞憂すべき問題に思える。

実際そうしたことへのニーズ・要望があってのことだとしても
事業継承は人の生き方、企業の使命といった
もっと抽象度の高い見地から俯瞰、論議されるが主旨だからだ。

個人の相続問題や節税対策を、国が、乞うも大々的に施策を打ち出し
予算計上して、セミナーを開くことはないはずだ。

たとえば中には子供は継ぎたくないのに親はどうしてもと言い張り、
子は俺の人生、それに職業選択の自由はどうなのだと言う。
こうしたケースも少なくない。
また経営者としては合う合わない、適性、不適正といったことをもある。

難しい問題ながら、そうしたことも含めての論議がまずあって、
それから相続手続き、伴う節税問題、といったことだと思う。
それを最初から、いきなり方法、手続き。ここに違和感を感じている。

少なくとも継承期という大きな節目を大いに良き機会として、
事業のこれまでの反省を踏まえ今後の あり方を、
バトンを渡す者、受け取る者が論議し合う。
そういったものが、事業継承問題としてあるべきで、
施策の本来の主旨のはずである。