経営コンサルタント田上康朗の雑感帳

経営コンサルタント田上康朗が、気ままに本音で記す雑感帳です。書く日もあれば書かないときもあります。

まさに母の顔

2008年07月24日 | Weblog
駅に向かった歩く。

友人のホテルの駐車場に車を置き、歩く。
時間は七時半ちょうど。携帯を見たから。

駅の近くの、当市唯一の高層マンションの出入り口。
三〇代後半の女性が、一人遠くを見つめていた。
その顔は、まさに母の顔。
だが、近くには子の姿は見えない。

一本道。私が通り過ぎても、
まだ、彼女の視線は、遠くの方を見たまま。
身動きもせず、私の通り過ぎた道の先を見ている。

それが気になり、彼女の脇を通り過ぎてから、
振り返って、その視線の先を追った。
五〇〇メートルも先。いやもっとか。
男児が、二人、遠ざかっていっている。
あっ。そうか。
この女性は、この男児のどちらかの母親なのだ。

まだ見ている。
つい私も立ち止まって、
その二人の男児が、左に曲がり消えるまで、
この女性と、遠くなる男児を交互に見ていた。

この母は、子供達が、完全に見えなくなるまで、
だまったまま、身じろぎもせず、ほんとうにまったく同じ姿勢で
子供らの背中に視線をおき、見送っているのだ。

多分毎日。

その間、時間を計った訳ではないが、
子供の足と距離から見て相当の時間。身じろぎもしないで、
子の母は、母の目で子供を見守っている。
見えなくなるまで。
見えなくなって、しばらくして彼女はマンションに消えた。

おそらく子等は気づいていまい。
その間子供は、おしゃべりに夢中だった。

私は、感動して、しばし動きたくなかった。
目頭が熱くなって、眼鏡を拭いて、気を静めた。
この子は幸せだな、と思った。
自分の幼かった頃が懐かしくなった。
この子達がうらやましくなった。

そしてちらりと見た、この母の顔が、仏様の顔に思えた。
母の顔は、あんなにも神々しいものか。
知った。感動した。

いや、彼女は、きっと仏様だったんだ、
と自分が無宗教で、神とか仏とは縁のないことを忘れて、
ほんとうにそう思った。

駅に着いても、涙が止められず、
顔見知りの駅員さんを避けて、
馴れない自販機で、切符を買った。