今から10年ほど前、長い間旅館を経営されていた方からの相談がありました。 残念ながら亡くなられましたが、その後「石川通信」にひとこと書きました。
認知症 人付き合いが壊れたSさん 先週三回忌のOさんのことをお話しましたが、もう一人、三回忌のSさん(76歳)も思い出深い方でした。最初の相談は、「銀行からお金をだまし取られた」です。 お伺いし、お話しをお聞きしたところ「初期の認知症」の疑いが感じられました。友人・知人に対して「お金や宝石を盗んだ」とトラブルを引き起こし人間関係が壊れてしまっていたのでした。そのうえ十数年も病気をしたことがなく、病院不信の医者嫌いでした。 銀行の支店長と話し合い、保健所の保健師さんやケアマネの協力を得ながら、のべ十数時間に及ぶ世間話や昔話をしつつ、なんとか病院につなげようと努力しました。 足が弱っていたことから「リハビリすると元気になるよ。そのためにも病院の診察が必要」とようやく合意を得ることができました。病院に行くとき、小袖の立派な着物をきちんと着てから出発しました。 ようやく安心できる環境が整えられようとした矢先、不幸にも亡くなられました。 認知症の自覚を拒否している場合、一番傷つき不安な状況におちいっているのが本人です。一日も早く病院や介護関係者など専門機関との接点が求められています。 Sさんは、亡くなられたご主人のお墓に入られました。もっと早くお会いしていればと考えてしまいます・・ 以上
この方は、訪問する人を次から次へと「物を取った」と攻撃し、誰も近づかなくなっていました。「被害感情」が大きく、介護の人たちも大変な目にあっていました。
私も2回目から、「お金を取られた」と攻撃されましたが、覚悟の上で毎日訪問し、なんとか打ち解けるところまでになり、世間話から問題点を把握することができました。
細かい数字を繰り返したり、何年も前の日時までしっかり覚えていて、「自分はまだ大丈夫」だと、不安と必死にたたかっている様子がみてとれました。居間や台所の片づけも出来なくなっていました。会話のなかから、「何に困っているのか」を自覚させるだけでも苦労しました。
当然、Sさんには「認知症」ということを、ひとことも話しませんでした。
認知症は一人ひとり皆違う症状を示し、対応は苦労するものです。 とりわけ被害感情や攻撃性が出てくると困難なケースになってしまいます。
しかし、いずれ私たちが「行く道」です。 認知症の本はたくさん出版されていますが、ぜひこの本も読んでいただきたいと思います。
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