佐藤功の釣ったろ釣られたろ日誌

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ダボ鯊の戯言

2020-10-24 19:11:14 | 日々の思い

だぼ鯊の戯言(たわごと)

八木禧昌

 

 平々凡々とした毎日の生活の中で、漫然と見過ごしておればそれはそれで誰も気づかないままに過ぎ去ってしまうわけですが、ひとたびピッとクエスチョンマーク「?」がつくと、放っておけないのがだぼ鯊の好奇心。

 今回は「たらば」にまつわる一考察です。

 

 東北の珍魚

    タラバ先生

 

 山形県鶴岡市の加茂水族館に行ったときのことです。ここはクラゲが何十種類も泳ぐ世界的に有名な水族館です。もちろん山形県庄内地方の海水魚や淡水魚も沢山展示されています。

 この日、海水魚の展示コーナーで思いがけなく「トクビレ」という魚に出会って「やった!」と快哉の声をあげました。

 「トクビレ」は東北や、北海道の深い海底に生息する魚で、これまで図鑑でしかお目に掛かった事がなかったからです。

 深い海を演出した水槽の、薄暗い砂地底に鎮座ましましている姿は図鑑の厳ついイメージではなく、白いひげをたくわえた好々爺、でも研ぎ澄ましたような目は知的で、まるで白衣を着たお医者さまのようでした。

 フト、水槽の上のパネルに目をやると、庄内地方では「タラバシェンシェ」という名で呼ばれているとの説明が…。

 ここで、えっ!と驚きの声を上げてしまいました。それは「シェンシェ」が富山、魚津方面で「先生」を意味する方言だったからです。つまり、たまたま僕が水槽の前で感じた「白衣のお医者さま」イメージを、時空を超えて大昔の名付け親たちと「共有した」驚きだったのです。

 水族館など無かった時代に、このトクビレという魚をタラバシェンシェと呼んでいた人びとの観察眼の鋭さと、ユーモア精神に惜しげなく喝采と脱帽です!

 ところで「タラバ」という言葉ですぐに頭に浮かぶ生き物は「タラバガニ」です。誰もが思うように、タラバガニのタラは、冷たい北国を代表する「魚偏に雪」と書く「鱈(たら)」と関係がある、とだぼ鯊は何の疑いもなく思っていました。

 広辞苑を見ますとタラバガニ=主要漁場はベーリング海やカムチャツカの近海でタラの漁場と重なるのでこの名がある。肉は美味=とあります。

 一方、タラバシェンシェのタラバも「タラの漁場」のことかなあ、と「分類方言辞典」などで調べてみると新潟方面から東北沿岸部では沖合十二キロくらいのところの外海で急に深くなるところを「垂れ場(タレバ)」と称するという記述を見つけました。

 ナールほど。釣りで言う「かけあがり」のスケールのデッカイものでしょうね。

 うっかり「タラが獲れるような冷たい海の海底に棲んでいる魚です」などと書いてしまいそうになりましたが、タラバの意味はどうやら魚のタラに関係あると断定は出来ないのではないでしょうか。このような場合は「一説には」と、断定を避けるのが正解でしょうね。

 ですから山形県庄内地方の珍魚トクビレの方言名「タラバシェンシェ」の意味は、「沖合の深場にいる髭を生やしたお医者様」。タラバは? と尋ねられたら「垂れ場」の転訛か、またはタラ漁場という説もあります、とするのが親切でしょうね。(イラストも・からくさ文庫主宰)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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