ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2016.8.20 患者力を高めるために私たちが出来ること~かながわ乳がん市民フォーラム参加~

2016-08-20 21:51:59 | 日記
 ようやくの土曜日。あいにく朝から雨模様だ。けれど今日は大事な予定がある。少しだけ寝坊をしてベッドで朝の連続テレビ小説を見た後、雨にもめげず自宅を後にした。それは酷い降りで、最寄り駅に到着するまでに既に全身濡れ鼠となった。

2008年から2011年まで、再発以来4年連続で参加してきたのだが、それ以降は日程が合わずに参加を見送ってきた「かながわ乳がん市民フォーラム」。

 今回のパネルディスカッションは、私の主治医と以前取材でお世話になった記者さんが司会をされる、ということをごく最近HPで知った。手帳を見れば特に動かせない日程が入っているわけでもない。これはもう行くしかないではないか!と、早速参加の申し込みをした。

 5年ぶり5回目の参加となる第15回のテーマは『高めよう患者力!~情報に流されないために~』である。
 患者歴11年半の私にとって、このトピックはとても興味のある分野だ。以前「賢い患者になりたい」という記事を書いたのだが、患者力というのは賢い患者になる智慧の力ということではないか、とも思う。

 朝日新聞の医療サイト・アピタルで「これって効きますか?」の連載を持っておられる大野 智先生が、今回、パネリストとして参加される。
 その大野先生が、アピタル最新号で患者力について触れておられ、“ヨガなどの補完代替療法に関する情報の見極め方や向き合い方についても紹介する予定です。”と書いておられたので、今の私にとって欠かすことの出来ないお話だ、とワクワクして会場に向かった。

 以前参加した時は、みなとみらい地区の1000人規模の大ホールだったが、昨年からは500人規模の、駅にほど近いホールに会場が変わっている。舞台との臨場感ありフロアとの一体感あり、このくらいの大きさはとても良いと思う。今日は450人の方が参加ということで、ほぼ満席。参加者たちの学ぼうという熱気、主催者側の伝えようという熱い心が伝わってくる。

 内容は従来どおり開会挨拶の後、第一部が教育講演。
 まずは『乳がん治療の最新トピック』というテーマで、ここで改めてご紹介するまでもないあの勝俣範之先生が登壇された。
 自己紹介のスライドから始まってコンパクトに20分間、治療のポイントが紹介された。初めて聞く制吐剤もあり、化学療法の進歩を実感する。Q&Aも実に的を得たもの。腫瘍内科医は(Blind runnerの)がん患者さんと一緒に闘っていく伴走者です、という最後のスライドに心を強くする。

 続いて、『正確な情報の見分け方~補完代替療法は効果あるの?~』 を大野 智先生が。情報を科学的に見極めるクイズから始まったが、資料袋の中に入っていた表がピンク、裏がブルーの団扇が優れもの。参加者がクイズに答えるためのグッズを兼ねているのだ。エビデンスのランキングからスタートして、ランダム化比較試験等、普段コラムで拝読しているお話が、クイズと連動しながら実に分かりやすく展開されていった。医療の不確実性とエビデンスがないということはイコールではなく似て非なるもの、ということにとても納得する。

 補完代替療法では、これらに関する正確な情報(臨床試験の結果)の入手方法として厚労省の「統合医療」情報発信サイトが紹介された。その利用マニュアル冊子も配布して頂き、ラッキー。情報の見極め方10か条がとても分かりやすく掲載されている。ヨガが倦怠感や睡眠障害を軽減するというエビデンスはあるが、やってはいけない時があり、やってはいけない人もいるとのこと。いずれにせよこうした補完代替療法に関する情報にはあやふやなものが多いからこそ、情報の取捨選択、知恵(情報リテラシー)が必要ということでお話を結ばれた。

 前半ラストは来場者にとっては一番気になる『体験談』。Hさんは4年半前に温存手術をされ、先日左鎖骨に転移が見つかったとおっしゃる。自分は患者だとは思っていない、がんという闘いに絶対に勝つということだけを考えている、と。がん細胞も自分の細胞なわけだし、ずっとファイティングポーズを取り続けるのはしんどいので出来るだけ長く共存しようと思っている私からすれば、とても真似のできないアグレッシヴなお話をされた。

 インターバルに席を立ってロビーに行くとちょうど大野先生とバッタリ。図々しくも思い切って「いつもコラム拝読しています。今日はいいお話をありがとうございました。」とご挨拶をしてしまった。
 再び席に戻る前に今度は勝俣先生の後ろ姿が。もうこんな機会は二度とないかも!とこれまた図々しくお呼び止めし、「再発8年半ですが、いつも先生のコラムに本当に励まされています。」とお礼のご挨拶。先生は白い手袋をしていた私に「手はどうされましたか。」と気遣ってくださる。もうすっかり感激して舞い上がってしまった。大満足して席に戻る。

 後半の第二部はパネルディスカッション。このテーマこそ今回の「高めよう 患者力!~ 情報に流されないために~」である。
 パネリストには勝俣・大野両先生の他、県立がんセンターのがん専門薬剤師さん、患者支援センターのがん認定看護師さんに加え、体験発表をされたHさんともうお一人の体験者Oさんが加わった。

 私も協力させて頂いた事前アンケートには、今回188名が回答を寄せたとのこと。司会の有岡先生がその結果を的確にまとめ、パネリストに発言を求めていく。ここでも参加者が手にした団扇が活躍。治療を決めるにあたり主治医の話以外の情報を参考にしたことがある、と答えた方が3分の2、代替療法を行っている、または行ったことがある人のうちサプリや食品など口から入れるものを行っている人が3分の2、2割はそれ以外の療法を受けたことがあるという結果だった。

 後半ではもうおひとりの司会の三輪さんがプロポリスやフコイダン、アガリクスといったものについて患者の気持ちも踏まえて質問され、最後のまとめとして、パネリスト各氏から患者力についてそれぞれの考えを引き出された。

 閉会の辞が述べられ、あっという間に3時間が経過。これまでは内容が盛り沢山過ぎて最後は駆け足、消化不良のまま終わった感じがあったが、今日のタイムキーピングは素晴らしかった。
 このところ勉強会や講演会にはすっかり足が遠のいていて、他のことに時間を費やしていた私だが、やはりたまには勉強もしないとな、とちょっと反省。自らの患者力は進化すべきもの。常にブラッシュアップしておかないといけないと改めて思った。

 いつもコラムを拝読している先生方からも良い刺激を受けて、メモを取りながら心地よく疲れた。外に出ると青空なのに天気雨。ちょっと名残惜しく大観覧車や帆船を後にした。
 JRの乗換駅まで迎えに来てくれた夫と駅ビルで買い物と食事をし、素敵な1日が終わった。
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2016.8.19文字通り、希望の“光”?

2016-08-19 20:50:23 | 日記
 毎日新聞のネット記事を見ていて、おお!と思ったものを見つけた。タイトルにしたように文字通り希望の“光”ではないか。
 以下、転載させて頂く。

※    ※   ※(転載開始)

がん光治療  転移に効果 免疫機能を活性化(毎日新聞2016年8月18日 07時00分)
 がん細胞を免疫の攻撃から守っている仕組みを壊し、がんを治す動物実験に成功したと、小林久隆・米国立衛生研究所(NIH)主任研究員らの研究チームが17日付の米医学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシンに発表した。1カ所のがんを治療すれば、遠くに転移したがんも消える効果があることが確認され、チームは「全身のがんを容易に治療できる可能性がある。3年程度で治験(臨床試験)を始めたい」と話す。
 がんが生体で増殖し続けるのは、がんの周りに「制御性T細胞」という細胞が集まり、異物を攻撃する免疫細胞の活動にブレーキをかけて守っているためだ。
 チームは、制御性T細胞に結びつく性質を持つ「抗体」に、特定の波長の近赤外光を当てると化学反応を起こす化学物質を付け、肺がん、大腸がん、甲状腺がんをそれぞれ発症させた計70匹のマウスに注射。体外から近赤外光を当てた結果、約1日で全てのマウスでがんが消えた。光を当てた約10分後には制御性T細胞が大幅に減り、免疫細胞「リンパ球」のブレーキが外れて、がんへの攻撃が始まったためとみられる。
 さらに、1匹のマウスに同じ種類のがんを同時に4カ所で発症させ、そのうち1カ所に光を当てたところ、全てのがんが消えた。光を当てた場所でがんへの攻撃力を得たリンパ球が血液に乗って全身を巡り、がんを壊したと考えられる。
 生体内の免疫機能が活発になると、自らの組織や臓器を攻撃する「自己免疫反応」が起きて障害が出る恐れがある。肺がんなどの治療に使われる免疫の仕組みを利用した最新のがん治療薬では、自己免疫反応による副作用が報告されている。研究チームが、異なる種類のがんを発症させたマウスで実験した結果、光を当てたがんだけが小さくなり、臓器にも異常はなかった。今回の方法は、光を当てた場所のがんを攻撃するリンパ球のブレーキだけが外れ、他の組織や臓器は攻撃しないことが確認された。
 小林さんは「転移があっても効果的に治療できる方法になると期待できる」と話す。【永山悦子】
 【ことば】制御性T細胞
 生体内に侵入したウイルスなどの異物を排除する、免疫反応を調整する細胞。免疫が働き過ぎないように抑える役割を担っている。この細胞が機能しないと、自らの細胞や組織を異物とみなして攻撃する関節リウマチや1型糖尿病などを発症する。坂口志文・大阪大特任教授が発見し、ノーベル賞の登竜門とされるガードナー国際賞などを受賞している。

(転載終了)※  ※  ※

 一般に、がんは、遠隔転移すると全身に撒き散らされているから、もはや完治させるのは非常に難しい(もしくは完治しない。)というのが常識だ。けれど、この治療であれば転移治療にも希望が持てそうではないか。しかも、他の組織や臓器を攻撃せずにあくまでも光を当てた場所のがんを攻撃するリンパ球のブレーキだけが外れるということだから、これは期待が持てそうだ。

 もちろんこれから3年後に臨床試験を目指すというからそうすぐに標準治療に、というわけにはいかないけれど、今の治療でしぶとく粘っていることが出来れば、いずれその恩恵に与れる方も少なくないだろう。

 がん細胞だけでなく正常な細胞も一緒くたに絨毯攻撃するいわゆる狭義の抗がん剤から、ピンポイント攻撃でがんの特定遺伝子に特化して作用する分子標的治療薬へ、と瞬く間に医療が進歩し、そのおかげで今こうして命を繋げている私だ。とはいえ身体にマイルドである筈の分子標的薬も、長く使えばそれなりに副作用も出てくることが判ってきている。こと皮膚や粘膜などへのダメージが大きい。
 
 それが今度はがんの周りに集まり、異物を攻撃する免疫細胞の活動にブレーキをかけてがん細胞を守っている「制御性T細胞」に結びつく性質を持つ「抗体」に、特定の波長の近赤外光を当て、化学反応を起こさせるだけという夢のような光治療だ。

 本当に生命の神秘に光が当たった、という印象を得た。この希望の光、待てるものなら待ち続けたいと思う。

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2016.8.18 お盆を過ぎて思うこと

2016-08-18 21:48:00 | 日記
 台風一過、茹りそうな厳しい暑さにゲンナリしたら、今度はまた雨がちらつく不安定で蒸し暑いお天気だ。
 先週末から今週にかけて夏休みという教職員が結構多く、職場はかなり静かだったが、後半になってメンバーが席に戻り始めている。

 昨日は暑さバテなのか眠くてだるくてイマイチの体調。仕事も一段落したので思い切って午後お休みを頂いた。
 夫の帰宅にあわせて夕食を準備し、食後はソファに横になって録り溜めたビデオ映画を見始めたのだけれど、眠くて眠くて途中でウトウト。気付けば、エンドクレジットになっていたという体たらく。

 諦めて早々に入浴してベッドに入り、そのまま朝だ。オリンピックを見るわけでもなく、高校野球を見るわけでもなく、スポーツ中継とは無縁の私。あまりに早く寝てしまったので、夫が具合でも悪いのかと心配してくれた。

 体調はどうか、といえば朝起きたときの重苦しい胸の圧力・鈍痛は相変わらず。
 朝食後のロキソニンでなんとか収まるのを待って出勤し、あとはなんとかやり過ごしている。
 こう暑くて湿度が高ければ、健康な人でも体調を崩しやすいだろう。台風やゲリラ豪雨による気圧の変化で頭が重く、痛くなるのも頷ける。
 そして暑い中、抗がん剤治療にチェンジするのを先延ばしにして、やはり正解だったと思う。

 ただでさえ体がしんどいのに、さらに何が出てくるか予想がつかない副作用による体調不良が重なれば、微妙な按配でバランスを保っていた体調は一気に崩れる。
 そうした事態は出来れば避けたい。そういう思いで今を凌いでいる。もちろんこの選択をしたことで、結果が吉と出るかは、わからない。けれど、例え凶が出ても結果は自分で引き受けるということを納得した上での選択だ。

 もちろん、こうした暑さなど言っている場合ではなく、待ったなしで厳しい再発治療を続けておられる方、初発の術前化学療法や術後化学療法で今まさに治療中である方も数多くおられるだろう。

 今、キツい治療を続けておられる方たちが、体調も心もうまくコントロールしながら乗り切れますようにと心から願う。
 特に初発の方は、たとえ辛くても再発予防のためには今、叩くしかないのだ。再発してしまったら期間限定の治療ではなくなってしまう。だからなんとか乗り切って・・・と祈りたい。

 そしてエンドレスの再発治療の方、あまりに辛かったら主治医ともよく相談されて、1週間でも2週間でもお休みして身体を労わりながら続けて頂くことは出来ないだろうか、と思う。体調が悪く思考までネガティヴな螺旋に入ってしまうと、どうしても治療にも良い影響が出ないように思う。

 そんな時は、深呼吸して身体と心の声に耳を澄ませることが大切ではないか。身体と心に少しだけインターバルを与えて体調も気持ちも立て直す。そして、再び共存への静かな闘い(余り好きではない言葉だが、敢えて)を続けて頂きたい、と願う8月の夜である。
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2016.8.14 旅行2日目、温泉と食事を満喫して帰宅

2016-08-14 22:28:58 | 
 昨夜は食後それぞれ部屋で温泉浴。息子によれば、夫はコテンと眠ってしまったとのこと。お風呂好きの息子は、昨夕外出から戻って夕食前にさっさと男性用浴室「太閤湯」で入浴したのに、片やお風呂嫌いの夫は、前回に引き続き今回も大風呂はパス。部屋の温泉浴1回で十分とのこと。温泉にやって来て大きなお風呂に入らずに十分とは、4年前も書いたけれど何とももったいないことだ。とはいえ人それぞれの価値観。外野がとやかく言うことも出来ない。
 一方、母と私はベッドに入り、揃ってパックをしてリラックス。あまりに満腹過ぎてマッサージをお願いする元気もなく、そのまま就寝した。

 今朝。早々と目覚めた母と再び女性用浴室「不老泉」へ。無色無臭なのに浸かればあっという間にお肌がすべすべになるお湯を愉しんだ。

 朝食は、和食をチョイス。皇室の御用邸として明治時代に建てられた落ち着いた佇まいの別館は、数奇屋風書院造りの純日本建築と庭園がその当時のままの形で残っており、時を忘れる素敵な空間だ。眼前に広がる山々は霧がかかっており、ひんやりと涼しい。

 高原の朝、日頃の慌ただしい朝食とは打って変わってゆったりとした時間が流れる中、優雅に頂くことが出来た。朝から既に30品目をクリアするほど沢山の品数のお料理に舌鼓。しばし、鯉が池で朝食を所望している庭園を散策し、満ち足りた1日のスタートだ。

 息子は午後のコンサート鑑賞に備えて、私達より1時間ほど早く宿を後にした。こちらは清算を済ませ、チェックアウト時間ぎりぎりまで部屋やショップでのんびり過ごした。なんと贅沢な過ごし方だろう。チェックインからチェックアウトまで21時間半、ホテルライフオンリーだった。

 再びタクシーで湯本の駅まで降りる。往路は空いていてラッキーだったが、折しもどこのホテルもチェックアウト時間で、既に渋滞が始まっているとのこと。復路は車窓からの看板をゆっくり読めるほど乗りでがあった。カンカン照りでもなく雨が降るわけでもなく、ごくごく過ごし易い恵まれた2日間だった。

 帰路のロマンスカーまで時間調整のため駅カフェでお茶。時間通りに車中の人となった。息子はその頃、ターミナル駅まで到着して会場に向かった模様。私達3人はJRの駅で降り、少し遅めの昼食を摂ってから、実家を目指した。
 実家では、夫がまた便利屋さんよろしく仏壇回りを整えてくれて、一服してからタクシーで帰宅した。

 息子に逃げられ、夫は4人分の荷物持ちですっかり草臥れた様子で、帰宅後はソファでお昼寝。私は洗濯を済ませてゆるゆると夕飯の支度。
 息子は先日購入したスーツを受け取ってから帰宅。こうして今回の帰省最後の3人での夕餉を囲んだ。

 明日からまた新しい1週間が始まる。息子は明朝京都に帰っていく。
 再び夫と2人の生活、徐々に通常生活へとシフトしていきたい。何をしたわけでもなく、ひたすらお風呂と食事を満喫した2日間だったわりには、結構疲れている。
 体力温存のために今夜は早く休むとしよう。

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2016.8.13 お疲れ様の温泉一泊旅行へ出発

2016-08-13 22:48:06 | 
 ようやくの土曜日。息子帰省中最初で最後の土日である。一昨日父の法要もなんとか終えたところで、この1か月余りの母の慰労を兼ねて、4人で温泉一泊の旅にやってきた。

 普段より少し遅めに起床し、BSで朝の連続テレビ小説を視る。主人公の妹の結婚式での挨拶シーンに朝から目がウルウルしてしまう。寝坊助の息子を起こし、朝食を済ませていざ出発。母とはJR乗換駅で無事に合流して、私鉄駅でロマンスカーの切符を手配する。

 既に夫がネットで予約してくれていたのだけれど、息子が明日の午後に都心で開催される合唱のコンサートチケットを買ってあるということで、急遽帰りの電車の特急券を変更したり買い直したりでモタモタ。随分早めの到着だったので、ロマンスカーに乗る前にお茶する時間もあるかも、と思って出かけたけれど、とんでもなかった。

 予定通りのLSE車に無事乗り込む。母はこれまで父と車でばかり移動していたので、ロマンスカーに乗るのは数十年ぶりだという。車内でお茶とお菓子を摘まみながらあっという間に湯本の駅に到着。4人でボックスシートに向かいあえば、僅か1時間の車中もすっかり旅気分になって盛り上がる。

 少し雲が出ているかと思ったけれど、お天気はまずまず。風もあって都心より凌ぎやすい。駅前のお蕎麦屋さんに並んで昼食を摂る。夫が前から気になっていたというお店は奥行きが広く、天井が高くクラシックな雰囲気。けれど、何分量が上品過ぎて息子も夫もとても足りない。私や母でさえペロリなのだから当然か。それに、都内の一流店以上にいいお値段。なかなか・・・、である。

 ホテルに到着したらまた食べ直そうということで、タクシーで宮ノ下のホテルに向かう。いつもなら登山電車に乗ってフリーパスでウロウロしながら、なのだが、さすがに高齢の母と一緒なので今日はホテルに直行。

 このホテルには、以前息子が修学旅行中で不在だった時に夫と二人でお世話になった。クラシックホテル巡りをしてみようと意気込んでいた頃で、全ての客室に花の名前がつけられた、千鳥破風の屋根と校倉造りを模した壁が象徴的な花御殿をチョイスした。今回は女性に人気だという鎧戸付きの上げ下げ窓の外観、典型的な明治期の洋館、築110年の西洋館。
 実は父がこのホテルに一度泊まってみたいと言っていたそうだ。残念ながらそれが叶わぬ身になったので、母が父の遺影を携えて訪れた。

 チェックインの手続きをして、荷物を預け身軽になる。お部屋に案内出来るのにあと小一時間ということで、ラウンジでアップルパイと紅茶で一息。緑豊かな窓の外を眺めながら贅沢で緩やかな時間が流れる。

 夫と息子、母と私で二部屋に分かれた。赤い絨毯が引かれた階段はちょっと急勾配で母にはしんどそうなのが玉に瑕。お部屋の天井はとても高く、いかにも当時の外国のお客様向けといった感じ。室内のお風呂にも温泉が引かれていて私たちの部屋は猫足のバスタブだ。

 荷物を片付けて、夫と小さい頃から虫が大好きな息子は、強羅公園で開催中のカブトクワガタ展を目指したが、残念ながらクローズの時間で、やむなく早雲山まで行ってとんぼ返りしてきたという。

 母と私は2人を見送り、部屋でお茶をしてのんびり。不老泉という名前の浴場でゆったり手足を伸ばした。お湯は柔らかくすっかりリラックス。母は「温泉の大きなお風呂なんて何年ぶりかしら、気持ちいいわぁ」ととても嬉しそう。そんなに長いこと出かけていなかったのかと、年中あちこちに出没している私としては、ちょっと申し訳なく思う。
 庭園も素敵なのだけれど、アップダウンが激しいので夜は足元が悪いため、母を連れて歩くのは断念。
 
 2人が帰ってきてからは、80余年の歴史を刻むバーでオリジナルのクラシックカクテルを頂き、高山植物や野鳥が描かれた格天井と彫刻が見事なメインダイニングルームで、料理長が選んだという往年の復刻ディナーコースを心ゆくまで愉しんだ。たっぷり2時間かけてお腹がはち切れそうなほど。
 さて、お腹ごなしにもう一度お風呂を楽しんでくるとしよう。

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