いか@ 筑豊境 寓 『看猫録』

Across a Death Valley with my own Distilled Resentment

やっぱり、おいらは、高踏派

2010年09月30日 07時05分58秒 | ぐち
 

■ああ、もう9月も終わる。年度の半分が過ぎた。<死谷渡世>はろくに進展しない。関係ないが、朝、彼岸花が咲いていた#2。以前、おいらは、絶対、高踏派 で書いたが、よんじゅう過ぎてバイトのおいらの日常はリスクに満ちている。

■今年度はさらに天井の高い仕事場で(も)働いている。天井までの高さは5メートルくらいかな。これまで長らく使われてなかった部屋だったので、使い始めると次々と蛍光灯が切れる。取り換えるのが大変だ。脚立では用が済まず、やぐらを組まないといけない。

■気持ちは3月の年度末にある。昨年度後半はは実用スケール用の装置の設置に必死だった。200平米の部屋を割り当てられた。装置費用総額は約5000万円。設計仕様から発注、製作監督、検収まで、実際は、おいらの一存である。バイトなのに。上司は正社員さまで、仏さまのようだ。何でも承認してくれる。やっとのことで3月末の年度末に設置した(年度内に予算を使い切ることの苦労!)。4月以降はこれらを立ち上げて、モノを作らなければならない。うまくいってない。

■社長さまが「ポスドク」経験者だ。

社長さまが「ポスドク」経験者って、ベンチャー企業じゃ珍しくないだろうと思われるだろう。でも、今のおいらのバイト先は売り上げ何兆円、従業員数何万人のメーカーさまだ。ベンチャー企業ではないのだ。ただ、R&D(#1)をバイトにまかしているだけなのだ。

バイト先のこの会社でドクター持ちは珍しくないが、ほとんどが論博である。旧帝大を中心としたマスター出の秀才ちゃんたちが入社後、自分の出身の研究室や派遣先の研究室(会社との共同研究先)で論文を提出して、博士号を取得した人たちだ。論博=士。みんないい人たちである。社長さまの話にもどって、彼は、なんと!、課程博士だ。珍しい!と思いませんか!!!。しかも、「ポスドク」までやっていたらしい。その後入社。ただし、誰も彼が"偉いこと"と"ドクター持ち"であること、それもコースドクター(課程博士)であることに関係があるという認識は持っていないに違いない。つまり誰も彼がドクターだから出世したとは思っていない。彼は仕事ができたから出世したのだ。以前、彼が一般新聞紙上に出たとき、経歴として、「Z大、院卒」とだけ書いてあった。『○X産業社長、山田太郎、工学博士』とか書いてなかった。博士無用!の日本産業界。

■<木村摂津>との別れ;

<木村摂津>も旧帝大のマスターを出て入社。論博。団塊の世代だ。オイルショック直前の高度経済成長末期にこのメーカーに入社。社歴40年近くである。部長クラス。彼と話していると会社は、ほとんど"自分ち"である。社歴ca.40年ということで、会社のことは何でも知っている。のびのびしている。重役クラスに対し物おじしない。定年を過ぎているが、社歴40年近くのお貴族さま筆頭であるからにして、社籍を確保しているのだ。その<木村摂津>が3年前においらが属していた"ベンチャー"を買った。彼の一存で買ったのだろう。買収に際し、彼が自由にした会社の資金は2億円くらい。人選も彼がやった。

なんで彼を<木村摂津>というかは、福沢諭吉を米国に連れっていってくれたあの軍艦奉行の木村摂津守からのもの。(諭吉センセとおいらを相同化して恐縮ですが。もっとも、おいらは<木村摂津>に雇ってくれ!とは頼んでいない。)幕臣でもなんでもない諭吉が、幕府が出す米国行きの船に乗り込むため、木村摂津守に頼む。『福翁自伝』にある;

案ずるに、その時の世態人情において、外国航海など言えば、開闢以来の珍事と言おうか、むしろ恐ろしい命がけのことで、木村は勿論軍艦奉行であるから家来はある、あるけれどもその家来という者も余り行く気はないところに、かりそめにも自分から進んで行きたいという言うのであるから、実はあっちでも妙なやつだ、幸いというくらいなことであったろうと思う。すぐに許されて私はお供をすることになった。 

<従業員何万人のメーカー>の部長級の<木村摂津>なのに、R&Dをやる人材を割けない。会社が手下を配属してくれないのだ(#3)。バイトでやれ!と。この<従業員何万人のメーカー>は典型的高度成長期の産業。<木村摂津>の世代でさえ入社時に会社の売上げの大部を叩きだす"ドル箱"大工場は、ルーチンで稼働。<従業員何万人のメーカー>のお貴族正社員さまたちは、出来上がったルーチン産業機構を滞りなく回すことが最大の責務だった。し、今でもそうなのである(恐ろしいことに!!!)。あやしいR&Dなんかいやなのだろう。

ちなみに、<木村摂津>とは一度、ふたりで仕事で、オランダに行き、アムステルダムで運河の遊覧船に乗った。彼は<従業員何万人のメーカー>の<遊覧船奉行>だったようだ⇒愚記事;普通のアムステルダムの風景

<木村摂津>は買収後もこのグループの運営を統括した。前述"仏様上司"を従えて。この"仏様上司"は<木村摂津>の元部下。この買収時に、急きょ呼び出されて、<木村摂津>を補佐。現在、責任者。でも1-2年ではめざましい成果というわけにはいかなかった。このめざましい成果とは、売上として数十億円立つ見通しといった基準。<木村摂津>は今年春、別の部署に移動となった。<木村摂津>との別れ。

■<木村摂津>との別れの後もプロジェクトは進み、上記設備投資も計画通り昨年度内になされた。でも、今聞くに、<従業員何万人のメーカー>の経営陣は、買収後1年ほどで、このプロジェクトが"嫌になって"、また転売しようとしていたらしい(それにしても判断早すぎだろう~)。その際、巻き返しが功を奏し今の存続にいたっているとのこと。バイトのおいらには知るよしもない話だが、おいらの運命も風前のともしびなのである。せめて、高い天井の蛍光灯を取り換える時は気をつけようと思う。転落してアタマ打って死なないように。高踏派は、つらいのだ。

  


#1 R&D;research and development=研究開発

#2


#3; ちなみにこの会社、正社員のお貴族さまたちは配置移動願いを出す権利をもつ。つまり、手さえあげれば正社員さまは誰でも参加できるのだ。もっとも、そもそも、このプロジェクトの社内公募してないと思うが。それは<木村摂津>の判断だ