村元哉中/高橋大輔のデビュー戦を見て

　先週11月27日～29日に開催されたNHK杯でデビューした、アイスダンスの村元哉中/高橋大輔組。大会前から注目を浴び、優勝した小松原美里/コレト ティム組よりもはるかに記事が多かった。
　シングルで実績を上げてからカップル競技に転向する選手、シングルと二刀流をする選手はこれまでにもいるが、五輪銅メダリストで世界チャンピオンほどの選手は世界でも初めてとあって、注目されるのは当然だろう。
　私もいったいどんな演技ができるのか、わくわく、はらはら(?!)しながら見ていた　最初の印象は、、、それらしくなってる
　リズムダンス「マスク」はコミカルな動きでキャラを立たせ、いい感じに表現している。ラテンがテーマだった2017/2018シーズンのショートダンスでノリノリだった哉中ちゃんを思い出させた。
　深瀬理香子/張睿中組より高い得点が、演技構成点だけでなく技術点でも出たのにびっくり　ジャッジスコアをチェックすると：
　ミッドラインステップでレベルは2だがGOEで2.52もらっている。組まずに滑る部分が多いところで、Numberの記事にもあるように、2人それぞれのスケーティング力をそのまま出して評価された感じだ。小松原/コレトのダイアゴナル（対角線）ステップ、深瀬理香子/張睿中のダイアゴナルステップもレベル2で基礎点は同じだが、GOEで1.75と0.97。今後も村元/高橋の強みになりそう。
　ツイズルは2人ともレベル3とまあまあだが、世界のトップはレベル4が当たり前だし、GOEでマイナスをつけたジャッジもいるので、ここはまだまだの部分だ。
　パターンダンスのフィンステップ、キーポイントがY（Yes＝成功）は1つだけでレベル1。同じレベル1でも、深瀬/張にはマイナスをつけたジャッジがいなかったあたりに少し差が出ている。
　リフトでレベル4が取れたのは偉いが、「まだ力で上げているように見えた」（木戸章之さん、時事通信の記事）。GOEでマイナスをつけたジャッジもいたのは、そのあたりかな。
　フリーは、Numberの記事によるとリズムダンスより早い時期に作ったとか。2日目ということもあって、少し落ち着いていた気がする。演技構成点も項目平均で0.2くらい上がっていた。
　手をついてしまうミスが出たツイズルについては、「ずっと一定の角速度で回りながら進まなくてはいけないが、回転速度が一回一回違う」と木戸さん（時事通信の記事）。「まだ、シングルの時のターンを連続してやっている感じが残っています」とも（朝日新聞の記事）。なるほど
　片足で滑るワンフットステップ、対角線のダイアゴナルステップ、この2つは小松原/コレトや深瀬/張のミッドラインステップより高いGOEをもらっている。組まなくていい部分は強い
　YouTubeでフィギュアスケートについてのトークを配信している「すけとーく」で、男子シングルからアイスダンスに転向した経験を持つ森望（かなた）くんが「転向して覚える要素の中で一番難しいのがスピン」と語っていた。2人で手をつないだり組んだりして回るダンススピンは、2人の間に回転軸があるので1人で回るのとは全然違うのだそうで、キックアウト（無効）になる可能性が一番高いのだとか。レベル1でもちゃんとできるなら、まずまずか
　全体に、2人それぞれの持つ力に対していい点が出たという印象を受けた。まだ、2人で作り出したものに対しての評価ではないというか、、、　その点は「まだ一体感が出せていない」（木戸さん、朝日新聞の記事）「一体感はまだかなと感じますね」（渡辺心さん、東スポの記事）と一致している。
　技術点も演技構成点も、ロシアやアメリカ、カナダ、フランスなどのアイスダンス大国のジャッジが見てどう評価するか。レベルの認定やGOEはどうなるか。国際大会で見てみたい（四大陸選手権の中止が痛い）
　昨年10月、高橋大輔のアイスダンス転向というニュースを聞いて書いた私の投稿で、「高橋大輔が村元哉中の1季目と同じくらいのレベルまでいければ、130近くまで出るか」なんて書いているが　いい意味で予想を裏切ってくれた。コーチのマリア・ズエワさんは「あの二人なら、オリンピックで表彰台に上がることも可能だと私は考えています」と絶賛しているそうだ。「キングカズを目指す」と長く滑る覚悟を決めているらしい高橋大輔、来季はともかく5年後はそうなっているかも

　昨年の私の投稿で「高橋大輔がが出場するとなれば、アイスダンスも放送時間が長くなったり、時間帯がゴールデンになったり、ネット配信でライブで見られるようになるかもしれない。報道も圧倒的に増えるだろう。」と書いたが、これはその通りになった
　“「アイスダンスやってみようか」と思う子ども（特に男子！）が増える”か、経験者が戻ってくるか、、、高橋大輔が凄い分、「大ちゃんだからできたんだ、自分は無理～」となってしまうのか？　今後数年を見ていかないとわからないが
　全日本選手権も楽しみ