懐かしく思う香港の味のひとつ、エッグタルト―蛋撻(ターンターッ)。ときどき食べたくなる。
香港の餅屋(餅は広東語でクッキーなどの焼菓子のことで、餅屋はパンやケーキを売るベーカリー)や、茶餐廳(大衆的な喫茶店・食堂)でよく売っている。生地はビスケット生地とパイ生地、店によって違う。真ん中のカスタードは卵の味が強く、つるんと滑らか。たいていは丸型だが、聖安娜というチェーン店は楕円形が特徴。値段は2ドル50セント~4ドルくらい。これを食べながら香港風の思いっきり濃いミルクティーなんか飲むと、、、満足
維基百科(Wikipedia中文版)によると、香港のエッグタルトの起源は1920年代の広州で、百貨店が客寄せに「今週のお菓子」を作ったのが始まりだそうな。香港に入ったのは40年代、餅屋(ベーカリー)が売るようになり、50年代以降は茶餐廳のメニューにとり入れられた。今では飲茶の点心として、一口サイズの小さい蛋撻(一皿に3、4個のっている、たいていパイ生地)もよく見かける。
日本でも何年か前、エッグタルトがブームになったことがあった。試してみたが、微妙に違う~。何が違うって、、、卵が弱い!
どういうわけか、香港の卵は味が強い。鶏の種類なのか、育て方や餌の関係なのか、香港の卵を食べると日本の卵は頼りなく感じてしまう。生や半熟で食べたいときは日本から輸入した卵を買ったが、どっちかというと香港の卵が美味しかった。その卵をたっぷり使うレシピでないと、どうもパンチの効いたエッグタルトにならない。案の定、日本のエッグタルトブームは、いつのまにか消えてしまった。。。
香港のとはまたタイプの違うエッグタルトが、マカオのポルトガル風エッグタルト、葡萄牙式奶油撻、略して葡撻(ポウターッ)。やや甘めで、焦げ目がついてるのが特徴。これも維基百科によると、元はリスボンのジェロニモ修道院の修道女が発明したとか。ポルトガル語ではPastel de Nata又はPastel de Belem(売り出された頃、店がリスボンのベレン地区にあったからだそうな)と呼ばれる。
有名になったのはイギリス人のアンドリュー・ストウ氏がマカオに開いたLord Stow's Bakeryで発売して大人気になってから。90年代末には香港にも一大“葡撻”ブームが訪れた(しばらくしたら沈静化したが)。離婚した奥さんのマーガレットさんが開いたマーガレット・カフェでも同じ葡撻を売っていて、このレシピはKFC(ケンタッキー・フライド・チキン)が許諾を得てメニューになっている。(日本のKFCでも食べられる)
餅屋の店先、鉄板の上に焼型に入ったまま並んでる蛋撻。注文すると型をはずして袋に入れたり、多めに買うと箱に入れてくれたり。熱いうちも、冷たくしても美味しい。天后の餅屋のオバチャン、元気かな~