ヒュースタ日誌

相談機関「ヒューマン・スタジオ」の活動情報、ホームページ情報(新規書き込み・更新)を掲載しています。

コラム再録再延長(3)『本物の自分・本物の対応』

2013年06月29日 18時50分14秒 | メルマガ再録
 当メルマガを配信している相談機関「ヒューマン・スタジオ」が、10年目に入りました。

 この9年間の、相談をはじめとする支援業務を通じての結論は、前号で申し上げたとおり、子どもの不登校と青年のひきこもりは「本人の生きざまであり、無理にやめさせるべきものではなく、本人が自分の足で踏破する(歩き通す)ことを応援すべきものである」ということです。

 そこで私は、面接相談や家族学習会などの現場で「本人が歩んでいるペースに合った対応を」と訴え、本人の前を歩かないのと同時に本人の歩みに遅れ過ぎないような対応を、親御さん方に提案しています。

 その結果「つい先を急ぎたくなってしまう」と自覚している親御さんにとっては、私の援助がブレーキになっている一方、前号や6月配信号でお話ししたような「どう話しかけたらいいかわからない」「わが子の荒れをいつまで我慢していなければならないのか?」などとお迷いの親御さんにとっては、私の援助がアクセルになっているようです。

 「丸山は親御さんのペースメーカー」といったところでしょうか。

 いずれの場合も、前提にしているのは「本人のペース」であり「家族をはじめとする周囲が想定(このくらいだろう)または期待(このくらいであるべきだ)するペース」ではありません。

 すなわち、彼らの願いと思いを前提に据え、彼らが持っている良さや力、そして可能性を引き立たせることによって、彼らが納得できるプロセスを、彼らに合ったペースで歩んでいくことができるよう「控えめながら着実な対応・支援に徹する」ということです。

 このような私の援助方針は、料理では「素材の味を活かす」という言葉に、メイクでは「ナチュラルメイク」という技法に、それぞれたとえることができるでしょう。

 工夫を凝らした味付けや別人のように変身するメイクもいいものですが、不登校児やひきこもり青年の多くは、自分の心を他者に味付けされたり、別人の心のように変身させられたりすることを望んではいないようです。

 「変わりたい」と思っている青少年も、あくまで「納得できる方法とペースで主体的に」という条件が付いているように感じられます。

 これらを考えあわせると、彼らは「“作り物の自分”ではなく“本物の自分”でありたい」という思いを持っているような気がします。
 言い換えれば「自分の気持ちをごまかして/自分に嘘をついて」「学校/社会に復帰したくない」と思っていると考えられるのです。

 しかし、親御さんや関係者のなかには「自分の気持ちをごまかしてでも/自分に嘘をついてでも」「早く復帰すべきだ」と信じている方がおられます。一方私は、前述のような彼らの思いが活かされる方向で生きていける方法を、ギリギリまで追求しながら支援しているわけです。

 では、親御さんはどうでしょうか。本や講演から得た「知識」や関係者から伝授された「技術」に納得できなくても「自分の気持ちをごまかして/自分に嘘をついて」わが子に対応して、うまくいくでしょうか。

 「知識」として頭で理解されているだけでは「わかってはいるんだけど・・・」ということで、なかなか実行できませんし「技術」として指示されたことを実行されていても、わが子が動き出さないと「いつまでこの対応を続けなければならないの?」(179号)という思いがわき上がってくるのではないかと思います。

 このことは、その「知識」や「技術」が、親御さんにとって“借り物”であって“本物”ではない、ということを示しているのです。

 たとえば、前号でお話しした<受容><肯定>にしても、親御さんが自分なりに手探りで接しているうちに「知識」としてではなく「本人とのつきあいが楽だ」「本人とうまく話せる」などといった「実感」を得たり「技術」としてではなく、日常的に自然にできる対応なのだと気づいたりすることによってこそ「納得」でき、ご自身に合った無理のない方法で本人を「受容/肯定する」ことができるようになります。

 このように「模索」から「納得」にいたるプロセスを歩まれることで初めて、<受容>や<肯定>が“本物の対応”になるのです。

 もちろん、100%の納得ということはなかなかありません。親御さんも私も、常に模索と納得の繰り返しです。ただ確実に言えることは、親御さんがいくら「知識」を得ても「技術」を伝授されても、それに納得できなければ“本物の対応”はできない、ということです。

 ところで、前号で「私は<肯定>という言葉はよく使いますが、当コラムのなかでは<受容>という言葉は一度も使ったことがないと思います」とお話ししましたが、現場でもこの言葉はまず使いません。
 私がよく使うのは<認める>とか<受け止める>などの言葉です。

 前号でお話ししたように<受容>というのは誤解を招きやすい言葉ですし、正しく理解できてもそう簡単に実行できるものではありません。

 <受容>というと「積極的に受け入れる」というニュアンスが感じられますが、<認める>とか<受け止める>というと、必ずしもそれだけではなく「現状を認める」「とりあえず受け止める」といった消極的な意味でも使えますし、それでいいと私は考えています。

 大切なことは、用語を頭で理解することではなく、本人と日々つきあうなかで実感を積み重ねていくうちに「これが受容だったんだ・・・」などと、だんだん気づいてくることだと思うからです。

 最初は「この子にいくら言っても無駄だな」程度のレベルでいいのです。とにかく<認める>とか<受け止める>ことさえできれば、それが“本物の<受容><肯定>”への第一歩になるのですから。


2010.10.13 [No.182]


文中「前号」として引用している号のコラムを再録した日の本欄を読む

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コラム再録再延長(3)掲載のお知らせ

2013年06月29日 18時27分43秒 | メルマガ再録
 去年10月から3か月間、メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』の創刊10周年を記念して本欄で実施していた「コラム再録」を3か月間延長のうえ、半分の頻度で実施する「コラム再録延長」が終了しましたが、ご好評につきさらに月1回だけで3か月間延長し、当スタジオの援助方針をストレートにお伝えしている3本のコラムを毎月転載している標記企画も、いよいよ今月で最後になりました。


 半年間にわたるコラム再録企画の“大トリ”は『本物の自分・本物の対応』。不登校やひきこもりから、本人はどのように生きたいのか、そして親御さんはどのように対応したいのか、ということについて「こうではありませんか?」と問いかけ、そういう思いを活かしながら進めていく援助方針を説明しています。

 “ヒューマン・スタジオ流相談援助”の理念と方針がよくわかる1編です。

 最終回ですので、半年前からの再録分をお読みくださった方には、よろしければ総評をコメント欄にお書きください。


 都合により3日遅れてしまいまして恐縮ですが、このあと掲載します。
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メルマガ創刊200号記念読者会に関するお知らせ

2013年06月25日 13時20分59秒 | 記念企画
 登録読者の皆様はご存じのとおり、当スタジオを代表する業務であるメールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』が、今月12日に創刊200号を配信したことを記念して、来たる6月30日(日)に読者会(オフ会)を開催することになっています。

 登録読者の方または新規に読者登録してくださった方限定のため、先月配信の「創刊200号直前臨時増刊号」と今月配信の200号だけに参加募集告知を掲載していましたが、定員に余裕があるため、このたび追加募集として「2次募集」と「利用者優待募集」を行うことになりました。

 いずれも、募集期間は「本日14時から28日(金)16時まで」です。下記それぞれの趣旨をご参照のうえ、いずれかに該当する方はこの機会にぜひご検討ください。


*2次募集のご案内

 前記2回の配信号それぞれに1週間の期限付きで募集しましたので、正規募集は締め切っていますが再度募集いたします。
 参加を検討していながら正規の募集期間に間に合わなかった方や、募集期間終了後に初めて『ごかいの部屋』をお読みになった方は、ぜひお申し込みください。

*利用者優待募集のご案内

 当スタジオの親の会「しゃべるの会」では、毎回『ごかいの部屋』をテキストに使用していますから、1度でも参加された方は必ずお読みになっています。そこで、同会に参加したことがおありの方は、登録読者でなくても特別にご参加いただけることといたしました。
 「3か月に1度のしゃべるの会だけでは間が空きすぎてしまう」「親だけでなくいろいろな方と話してみたい」などとお感じの方は、ぜひお申し込みください。



読者会の詳細と申し込み方法を見る
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『ごかいの部屋』第200号配信

2013年06月12日 15時06分03秒 | ホーププロジェクト
 久しぶりに通常日時に配信しました。

 今号は創刊200号のため、コラムをお休みして特別編集でお届けしています。

 筆者の挨拶から始まり、特別企画(2)として第100号に続く逆引き方式で業界するコラム(本文)のタイトル一覧、そして記念企画として開催する「読者会(オフ会)」の告知、最後に通常どおりの「来月のスタジオ」欄・・・という内容です。

 なかでも「<逆引き>101~200号の歩み」は第100号に掲載して好評だった「<逆引き>100号の歩み」の第2弾として、コラムをテーマごとにまとめてありますので、お悩みやご関心に応じてまとめ読みしていただく際には非常に便利な記事です。どうぞご活用ください。

 また、読者会(オフ会)は先月配信の臨時増刊号か今号のいずれかをご覧の方々だけの限定募集です。そのため参加申込受付期間は1週間だけになっています。登録読者の方はもちろん、初めてお読みになった方でも、告知記事中に記載の要領にしたがって登録したうえ、コラムを1号分でもお読みになればお申し込みいただけます。

 次号からの“200号台”の当メルマガを引き続きよろしくお願いいたします。

 
『ごかいの部屋』200号を読む
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業務カレンダーに6月の予定を掲載

2013年06月05日 17時27分22秒 | ホームページ
 都合により5月の業務日程を予定より数日遅れで入力しました。

 今月も研修参加など代表の都合により臨時休業日がありますが、原則休業日(日月土)の一部を業務日にしていますので、これらの曜日にお問い合わせ・ご利用をご希望の方はご確認ください。

また、メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』の創刊10周年記念企画「コラム再録再延長」の最終回を第4水曜日に、「創刊200号」を第2水曜日に、それぞれ予定しています。

 なお、今月は当スタジオと近隣の「湘南市民メディアネットワーク」を中心とした新しい青少年支援団体が発足します。詳細は本欄でご報告します。

 そんな今月もよろしくお願いいたします。


6月の業務カレンダーを見る


【業務カレンダーの表示について】

 原則休業日は「ご予約が入っていなければ休業できる日」という意味であり、必ず休業するわけではなくお問合わせ・ご利用が可能な日がありますので、可能かどうかをカレンダーの日付をクリックしてご確認ください。
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