ヒュースタ日誌

相談機関「ヒューマン・スタジオ」の活動情報、ホームページ情報(新規書き込み・更新)を掲載しています。

コラム再録再延長(2)『筆者は反支援論者?』

2013年05月22日 17時35分00秒 | メルマガ再録
 若い女性タレントが3人でトークするテレビ番組をご存知の方がいらっしゃると思います。

 3月に放送されたその番組のなかで女優のKさんが、かつて交際男性から暴力を受けていた経験を語りながら、暴力を受けている女性は「逃げたら最後、絶対戻らない」という強い覚悟がなければ別れることはできないので「かくまってくれ」とでも言われないかぎり相談に乗っても無理だと思っている、といった話をしていました。

 Kさんは悩んでいる女性の気持ちを考えない、冷たい人なのでしょうか? 自分自身も経験した悩みですから、そんなことはないでしょう。

 暴力を受けている女性は、当然「相手の男性から逃れたい」と願っています。ところが、その願いがかなうようにと、周囲が親身になって支援しても、脱出することの困難さや、両者の間に生じている心理メカニズムによって、相手の男性のもとに戻ってしまう女性が多いようです。

 Kさんは、このような女性たちをかつての自分の姿と重ね合わせ「願いを実現する意思を貫き通す覚悟が決まるレベルまで気持ちを熟成させることは、本人にしかできない(周囲が熟成させてあげることはできない)」ということを実感しているのだと思います。

 同時に「本人には自分の気持ちを熟成させる力がある」という信頼を持ちながらも、最終的には「本人の人生は本人のもの」と腹をくくっていて、本人の気持ちが熟成するときが来るのを待つ覚悟が固まっていることもうかがわれます。

 これは「ドメスティックバイオレンス(家族や恋人など親しい相手からの暴力=DV)」の話ですが、どのような問題であれ「支援」のあり方に対する考え方に共通するものです。

 おかげさまで当メルマガは7年目を迎えましたが、長い読者の方はご存じのとおり、子どもの不登校と青年のひきこもりへの対応や支援について、私は似たようなことを繰り返し申し上げてきました。

 不登校・ひきこもりの“終わらせ方”はなく、終わらせることができるのは、当の本人以外にいないからです(97号)
 (堂々巡りは)自分でしかやめられないのです(119号)

 このような「本人に厳しい記述」(何人かの読者の方)に対して「支援を求める当事者や支援する関係者の気持ちをどう考えているのか?」というご質問をいただいたことがあります(この場合の「支援」とは、家庭訪問やフリースペースなど、本人への直接支援のことをさしていますので、以下「直接支援」と呼びます)。

 結論から言いますと、私の考え方は、今挙げたKさんと同じです。

 すなわち、不登校児やひきこもり青年は「学校に戻りたい」「社会に戻りたい」と願っています。それは切なる願いです。
 ところが、その願いがかなうようにと、周囲が親身になって学校や社会に戻れるように支援しても、ほとんどの青少年は拒否反応を示すか支援を受けても長続きしないのか、のどちらかです(これは本人の問題ではなく、そういう心理メカニズムだということです)。

 私は、このような青少年たちをかつての自分の姿と重ね合わせ「願いを実現する意思を貫き通す覚悟が決まるレベルまで気持ちを熟成させることは、本人しかできない(周囲が熟成させてあげることはできない)ということを実感しているのです(もちろん、熟成した結果学校に戻るかどうか、どのような社会生活を選ぶか、は人それぞれです)。

 同時に「本人には自分の気持ちを熟成させる力がある」という信頼を持ちながらも、最終的には「本人の人生は本人のもの」と腹をくくっていて、本人の気持ちが熟成するときが来るのを持つ覚悟が固まっている――そういう相談員でありたいと、日々自問自答しているしだいです。

 そのため当メルマガでは、直接支援を求める当事者や直接支援する関係者の気持ちに、ストレートに応える記述が少ないのかもしれません。

 ただそれは、そういう自分の立場を明確にしておかないと、メルマガでは言いたいことが伝わらなくなるからであって、当事者や関係者の気持ちを考えていないからではないことを、今の説明でおわかりいただけたでしょうか。

 それどころか、相談場面での私は、本人や親御さんの気持ちを決して否定していないつもりです。

 たとえば「直接支援を利用したい」という本人に「その程度の覚悟では無理だよ」とは言いませんし「家庭訪問してほしい」という親御さんに「そう急ぎなさんな」とは言いません。
 むしろその願いに応えるように「どうしたらそれが実現するか」という視点に立って話し合いを始めます。

 そして「あの直接支援団体を利用したい」とか「就労支援を利用したい」などという希望が本人から出れば、その情報を提供します。「まだその段階ではないから利用するな」と説得することはありません。

 大事なのは、相談員がアドバイスしてわからせることではなく、本人や親御さんが自分自身で実感することだからです。

 もっとも、情報を提供してもすぐ利用する本人は少ないし、話が進むにつれ「今はどういう段階か」という私の説明とその意味を理解なさって、先を急がずじっくり取り組む気になられる親御さんは多い、というのが、私が相談業務で経験している事実です。

 私は直接支援を否定していません。ただこのコラムは、直接支援を利用する意思が固まるほどに気持ちが熟成するまでの道のり(気持ちが熟成したら直接支援を利用せずに再出発する青少年もいます)を大切に考え、その道のりに必要な対応を中心に書いているのです。


2008.10.8 [No.158]


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コラム再録再延長(2)掲載のお知らせ

2013年05月22日 17時30分00秒 | メルマガ再録
 去年10月から3か月間、メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』の創刊10周年を記念して本欄で実施していた「コラム再録」を3か月間延長のうえ、半分の頻度で実施する「コラム再録延長」が終了しましたが、ご好評につきさらに月1回だけでさらに3か月間延長し、当スタジオの援助方針をストレートにお伝えしている3本のコラムを毎月転載しています。


 今月は『筆者は反支援論者?』。親しい読者のなかに「当事者に厳しい記述」と評したり「支援を求める当事者と支援している人たちのことをどう考えているのか?」と疑問を呈したりする人がいらしたことから、それらに答えるために書かれた号です。

 いわゆるDVの被害者経験のある有名女性タレントの言葉を引きながら、不登校・ひきこもりの経験者ならではの視点に立ち続けて、一般的な支援と一線を画しながらも支援を否定せず、当事者やそのご家族の願いに寄り添い続けることの意味を、自らに言い聞かせるように語っています。

 不登校・ひきこもりへの相談援助に対する、筆者の一貫した信念をお読み取りいただき、よろしければコメントをお書きくだされば幸いです。


 では、このあと掲載します。
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『ごかいの部屋』創刊200号直前臨時増刊号配信

2013年05月10日 16時08分58秒 | ホーププロジェクト
 偶数月配信の当メルマガは、翌月に公開業務(セミナーや親の会などの集まり)を開催する場合にかぎり奇数月にも号外として配信しています。

 例年ですと今月は号外を配信する月ではありませんが、来月「創刊200号記念読者会」が開催されますので、そのお知らせを兼ねて特別に配信したものです。

 そのため、標記のとおり「号外」ではなく「臨時増刊号」と銘打っておととい配信しました。

 来月配信号が200号という節目。そこで、今号では、当メルマガがどう読まれているかを知っていただくため、去年12月に開催された「創刊10周年記念懇談会」の報告記事を、機関紙「ヒュースタ通心」38号からほぼそのまま掲載するとともに「来月のスタジオ」欄で前記「読者会」の要項を発表しています。

 来月配信の200号も特別版として「特別企画」中心の構成でお届けします。どうぞご期待ください。


『ごかいの部屋』臨時増刊号を読む
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業務カレンダーに5月の予定を掲載

2013年05月08日 16時38分42秒 | ホームページ
 都合により5月の業務日程を予定より1週間遅れで入力しました。

 今月は研修参加など代表の都合により原則休業日の完全休業や臨時休業日を多くいただいています。また通常とは違う時間帯に業務する「特別業務時間日」があります。

 お問い合わせまたはご利用希望の方はあらかじめご了承のうえ、お手数ですがカレンダーをご確認くださいますようお願いいたします。

 また、メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』の創刊10周年記念企画「コラム再録再延長」は第4水曜日に、「創刊200号直前臨時増刊号」を第2水曜日に、それぞれ予定しています。

 今月もよろしくお願いいたします。


5月の業務カレンダーを見る


【業務カレンダーの表示について】

 原則休業日は「ご予約が入っていなければ休業できる日」という意味であり、必ず休業するわけではなくお問合わせ・ご利用が可能な日がありますので、可能かどうかをカレンダーの日付をクリックしてご確認ください。
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