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自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

Open Source Business Conference in San Francisco

2006年02月01日 | オープンソース物語
再来週サンフランシスコで開かれるOpen Source Business Conference(OSBC)は刺激的なテーマ、キーノート・スピーチ、プレゼンテーションで満載だ。昨年も盛り上がっていたが、今年のサブタイトルは"Opensource Capitalism"つまり、オープンソース資本主義となっている。いやはや、刺激的な文言だ。

5-6年前までは、バークレーやスタンフォードあたりで新左翼運動(New Left Movement、ああ懐かしい響き)に身をこがしたオジサン連中が、OSS運動の本質は原始共産制にあり、マイクロソフト社に代表される覇権型ソフトウェアベンダからの搾取(exploitation、ああこれも懐かしい響き)からソフトウェア・ユーザを解放する階級闘争なのだ、という主張があった。

このような主張(実はかなり共感する)は、オープンソース資本主義というコンセプトの登場によって、オープンソース原理主義というように相対化されつつある。良くも悪くも資本主義、プラグマティズムの国=アメリカでは、現実的に資本主義の構造と機能のなかに組み込まれることを、みずからの進化のためにOSSは選択しているのである。

さて、キーノート・スピーチをするOSS企業の顔ぶれを眺めていると、同じOSSでもCOSS(Commercial Open Source Software)企業が多くなっているのが分かる。資本主義と相性の良いオープンソースとは、オープンソースをネタにビジネスが展開できるということ。さらに、ビジネスの展開において資本市場からエクイティ・ファイナンスで資金を吸収し、そのリターンを投資家に還元できるということだ。COSSのなかでも、Dual Lisence Modelがひときわ目立っている。

2004年から2005年にかけて、COSS系ベンチャー企業への投資は200%増の活況を呈している。それに対して、伝統的な、つまりプロプラエトリなクローズド・ビジネスモデルに対する投資はジリ貧の一途である。米国のプライベート・イクイティ・ファイナンスは明らかに、次の投資テーマのひとつとして、COSSを射程のなかにしかと納めている。

そうなると、勢いがよくなるのがアメリカのビジネスの常。ドドッといろいろなCOSS系ビジネスモデルを考えつき、足腰頭を使って、市場に参入してくる。そしてイノベーションが沸き起こる。このあたり、OSSやCOSS系のストラテジストの間では、「オープンソースがオープンイノベーションを巻き起こす!」といったレトリックが多用されている。

もちろん、自己正当化のための表層的レトリックにとどまるものではない。ソフトウェア・ベンダ企業との雇用関係に距離を置く自律分散的な個人がコミュニティに集散し、地球規模のワイガヤ、モノづくりをやって、スグレモノのソフトウェア・プロダクツをこしらえてしまった、こしらえつつある実績を見れば、オープンイノベーションという表現は誇張でも正当化でもなく、本質を突いた表現でさえある。

さて、このように資本主義、現実主義の文脈に自らを近寄らせ、資金フローの中に、オープンソースが入ることによってOSSビジネスが盛りあがり、さらなるイノベーションが立ち上がっているというコマーシャル・オープンソースの構図が、西海岸では活況を呈している。そして、この構図が、今年のOSBCには明らかに見て取れる。さすがに、OSBCの主催者は、先月あたりからフリーソフトウェア系のフリーク、OSSベンダ、OSSストラテジスト、ベンチャーキャピタリスト、起業家、政府関係者、奇人、変人、知的放浪者、ヨタ者をどどって集めて盛況ぶりをアピールしている。

再来週には、出張をかねてOSBCに顔を出してみる。さぞオープンソース的知的/ビジネス的刺激が充満しているだろう。とても楽しみだ。


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