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日経ビジネスの特集、「嫌われ成果主義の逆襲」はダイヤモンドの「大失業減給危機」と同じ現象を2つの異なった視点から眺めるものだ。
アンケート調査の結果はこんな具合だ。
・「勤務先が成果主義型の制度を取っている」と答えた944人を対象に、勤務先の成果主義の成否を聞いたところ、「失敗だった」とする回答は68.5%に達し、「成功だった」という回答(31.0%)
・「成果主義に基づく自身の評価に満足しているかどうか」についても聞いたところ、「不満である」は43.3%、「満足している」16.2%。
・「成果主義型の制度の導入後、仕事に対する意欲が向上したか」は、「向上していない」36.3%。「向上した」16.1%。
・「職場に何らかの弊害が発生したかどうか」は、「発生した」65.7%。
・「制度そのものより運用上の問題が大きい」が66.0%。「制度そのものの問題が大きい」は32.5%。
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筆者は1980年代後半からHay Management Consultantsにて、大企業の「嫌われ成果主義」の導入相談に応じてきた。独立してからも、この手の相談、コンサルティングは引きも切らなかった。
成果主義はそれを支える企業体質とのスリアワセで考えなければいけない。
社畜育成型の年功体質、共同体体質、職能資格インフレ体質、ポスト不足体質、中高年賃金コスト体質、曖昧評価体質の企業ほど、成果主義へのニーズは大きかったし、いまでも大きい。
もっと細かに見ていくと、上記のような企業組織には共通点がある。
・上層部ほど職務の定義があいまい。
・上層部ほど職務の成果責任の定義があいまい。
・社畜度が高い経営層が、管理職や一般職に成果主義を強いるといういびつ構造。
・経営層こそが成果主義とはほど遠い。
こういう会社ほど、成果主義へのニーズは大きいのだが、また体質としての乖離も大きい。だから、成果主義を導入したときのねじれ現象が生じるのだ。現場からの反発も強い。また問題をとらえそこなうと、「虚妄の成果主義」のような年功賃金逆行をよしとする、これまた被害者意識迎合型の論説もウケたわけだ。こういう議論に、やれ人本主義だ、新自由主義批判だのが混ざってきて、「嫌われ成果主義」のムードが醸成されてきたのはいかにも日本的だ。
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「転職経験がある」が66%、「会社が倒産するかもしれない」が42%、「解雇されるかもしれない」が30%をしめる35歳のロスジェネ世代が企業の中核をしめ、オジサン社畜世代が、定年、出向、雇用調整を受けている現在、新しい成果主義が再度復活する機会が訪れたのだ。
ロスジェネ世代は、その上の世代に比べ、成果主義をつきはなして冷静に受けとめる素地は格段にある。また成果主義をポジティブに個人で受け止め展開すれば、その創造的な行き先は、独立・起業・セルフエンプロイメントとなる。旧型成果主義には、この個人のキャリアを起業に発展させていくパスがなかった。
不況・恐慌の過程は創造的破壊が顕在化する。成果主義を貫徹するためは創造的破壊のための冷めた構えが必要だ。だれもがハッピーな成果主義はありえない。そんなものがあれば、それこそ、虚妄だ。
役員、役職者、正社員を聖域化せず、全従業員を成果主義の俎上に載せることによって、社会的にリスクを取らされてきたワーキングプアに社会資源が再配分されれば尚いいだろう。
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