よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

徳島赤十字病院で「年次改革要望書」を語る

2008年06月07日 | 講演放浪記
久しぶりに徳島へ行く。午前は招待講演、午後はコンサルティングで忙しい一日。すべての予定をこなし、ひととき歓談。その後、看護部長さん、副部長さんの美女軍団に囲まれて記念のフォト。

全国に散らばる伝統的ノンプロフィット医療機関の赤十字病院のなかでも徳島赤十字病院は、その新しさがユニークだ。

徳島赤十字病院は急性期病院で、高度救命救急センターを運用し、Emergency Roomも強力。また、難病、集約的医療の必要な慢性疾患にも対応している。しかも屋上にはヘリポートを持つ。

2年前に移転した高機能病院でもある。全面的に電子カルテを展開していて、64列CT撮影装置設置、高機能心臓血管撮影装置を設置(撮影室2室)。また拡散強調画像が撮影可能なMRI装置を装備していて、ER悪性血液疾患治療にも対応している。

株式会社と異なり配当などで利益配分を株主に還元する必要はないが、赤字では運営できない。Going Concernは株式会社以上に、ノンプロフィット医療機関には厳しく問われる。だから組織の維持拡大を図るには、優れたマネジメント力が必須である。徳島赤十字病院では経営担当の事務部長が副院長を兼ねるということだけでも、医療・経営分離のガバナンスのもとでも経営マインドが旺盛なことが分かる。

さて株式会社が経営するアメリカの病院では多くがビジネスマンが病院長を勤める。診療ニーズに対して、経営ニーズが優先されると、利益率が高い診療科目に傾斜配分するようになるので儲かる診療科目に資源を集中させたり、金払いのいい患者しか診療しない、保険会社と契約をしている患者しか診ない、というようになっている。

保険会社、病院、医師、患者・・・、それぞれ健康のステークホルダーが個別の利益を追求した結果、均衡しているとされる米国の医療は、医療費世界No.1だが、無保険者が4200万人もいて平均余命も短く、けっしてパフォーマンスのいい医療制度ではない。Managed Careとよばれる均衡状態がもたらしたものは、いびつの均衡でしかない。

さて日本では、ノンプロフィット医療機関の病院長は医師だから、必然的に診療と経営を統合することが医師である病院長の仕事となる。しかし、医師の多くは経営に関するトレーニングをうけることは、あまりないので医療がわかるビジネスマンを経営チームの中にいちづけることが重要だ。聞けば徳島赤十字病院は黒字で、平均在院日数は8日位で7:1看護を維持しているという。地方にあって大健闘している病院だ。

そして医療政策では、国民皆保険を堅持して公的医療費をキチンと上げてゆくことが望まれる。もちろん、ムリ、ムダ、ムラをなくす努力をしながら。混合診療や高い自己負担を認めると、あひるがギャーギャー鳴くような喧騒をかなでながら外資系(米国系)保険会社や、目ざとい保険会社が大挙して参入してしてくるだろう。

米国の国益のため書かれる「年次改革要望書」に沿って郵政民営化では簡易保険市場が民営化される方向にうまく誘導されてしまった。「民」というのは実はアメリカの保険会社が中心。そのおこぼれにあずかり年次改革要望書を応援するさもしいオリックス保険なども、もちろん医療保険市場を狙っている。外圧に協力することによって利益を得るという手法。

ついでに言うと「年次改革要望書」を白日のもとに晒して糾弾した関岡英之はいい仕事をした。

いまこそ、反面教師としてのアメリカの医療を学び、「年次改革要望書」を読み込まねばいけない。「年次改革要望書」の路線で行なわれる政策では、利益が米国に移転され、日本が収奪されるという構造が透けて見える。そのツケはすべて患者に来るからだ。日本の公的医療を安直に市場原理に明け渡し保険会社の草刈場としてはいけない。新自由主義的な医療保険制度改革には要注意だ。

最近の講演はこんな話で盛り上がる。



最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
コンピテンシーにはまりました (木内 和江)
2008-06-09 10:19:33
 徳島は梅雨でしたが、講演の日は晴れており、松下先生を歓迎しているようでした。
 昨年、先生の研修を受け、コンピテンシーについて興味深く聞かせていただき、是非、徳島にと思っておりましたので、とても嬉しかったです。
 今後、人材開発、採用試験、能力開発などに役立てていきたいと思います。
 先生のお人柄に、師長達もフアンになりました。アンケートでも、全員が新しい知識の発見があり、今後に役立つ、と答えており、企画をして本当に良かったと思います。今後も、ご指導頂ければ幸いです。遠いところ、本当にありがとうございました。
      徳島赤十字病院 
         看護副部長 木内 和江
返信する
コンピテンシーにはまりました (まつした)
2008-06-09 16:33:22
2時間の講演はあっという間におわってしまいました。

ぜひ頑張ってご研究を進めてください。ご不明な点などありましたら、ご連絡ください。
返信する

コメントを投稿