よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

ミトラ教とは?

2009年05月04日 | よもやま話、雑談

<牡牛を屠るミトラの図>

ミトラ(ミトラス)教についてメモ。

                 ***

・E・ルナンは言った「もしキリスト教が何らかの致命的疾患によってその成長過程で、その拡大を止められていたならば、世界はミトラス教化していたであろう」

・ローマに現れた時期はキリスト教もミトラ教もほぼ同時期。ネロはローマ帝国中枢部でミトラス教に接触していた。

・313年にコンスタンティヌス1世(306 - 337)がキリスト教を公認した時点(ミラノ勅令)で、ミトラ教は国教からはずれた。

・しかしその後、方向は一定しなかった。ギリシア哲学に傾倒し、教養ある賢帝だったユリアヌス帝(355 - 361)は、キリスト教ではなくミトラ教に帰依し、ミトラ教の復興に尽力した。

・その後グラティアヌス帝が382年に出した勅令でミトラ教を含むすべての密儀宗教は全面的に禁止された。ごたごたが続いたが、キリスト教メジャー化の方向づけがなされたと見ていいだろう。

追記注)382年までには、帝国の支配者の間で、キリスト教かミトラ教を選択するかの激論があったことだろう。当然、教義、信仰、正当性などの面でも議論があったろうが、帝国ガバナンスの上で、どの宗教が目的合理的かという現実的な議論があったのだろう。このあたりの記録がでてこればいいのだが・・・。

・ベルギーの宗教史学者フランツ・キュモン(Franz Cumont)の『ミトラの密儀』が1902年に、リバイス版が1913年に刊行され、これによってミトラ教の本格的な研究が始まった。

・その後は、あまり研究されていない。キリスト教世界のタブーのようなもの。

・ミトラ教が西方のローマ帝国へ伝搬し、キリスト教へ習合された。ただし、初期キリスト教にとっては、ミトラ教の存在は都合がよくなかったので、習合というよりは吸収合併の後、吸収先を消し込んだ。

・キリスト教勢力はミトラ教の儀式を「悪魔的な模倣」と呼んで非難、排斥。(本当のところは、悪魔的な模倣をしたのはキリスト教の方だったのだろう)

・キリスト教勢力の自らの出自たるミトラ教に対する隠滅工作、諜報諜略(インテリジェンス活動)があったのだろう。アンチ・キリストのイメージがミトラ教には纏わされている。

・井上文則(筑波大学)「古代ローマにおける宗教的多元性」簡略なレポート

・最近では、David Ulanseyが"THE ORIGINS OF THE MITHRAIC MYSTERIES"
(Oxford University Press, 1991)を著している。そのダイジェスト版

The ancient Roman religion known as the Mithraic mysteries has captivated the imaginations of scholars for generations. There are two reasons for this fascination. First, like the other ancient "mystery religions," such as the Eleusinian mysteries and the mysteries of Isis, Mithraism maintained strict secrecy about its teachings and practices, revealing them only to initiates. As a result, reconstructing the beliefs of the Mithraic devotees has posed an enormously intriguing challenge to scholarly ingenuity. Second, Mithraism arose in the Mediterranean world at exactly the same time as did Christianity, and thus the study of the cult holds the promise of shedding vital light on the cultural dynamics that led to the rise of Christianity.

・東方へも伝搬。大乗仏教へも習合して弥勒菩薩、弥勒如来となった。

・富永仲基の科学的な宗教教義の発展プロセス分析フレーム「加上説」を拡張すれば、

       西方:キリスト教←ミトラ教→東方:弥勒(大乗)など

というように習合していきながらも、結局、密儀宗教ミトラは世界宗教とならなかったプロセスが分析できるだろう。

ざっと以下のような伝搬プロセスか。

・前2000年以前:
 原始的なミトラ崇拝が誕生。
・前2000年~:  
 アレクサンダー王朝のもとで、ミトラ教はギリシア化する。
・前200年頃:  
 西方ミトラ教が生まれ、地中海世界全域に広がる。キリスト教が国教化されると抑圧されボゴミール派やカタリ派に変化。グノーシスにも継承。
・300年頃:   
 バビロニアから中央アジア、インドを経て大乗仏教へ習合。その後中国へ伝搬、弥勒教になる。
・500年~:   
 朝鮮半島を経て仏教や道教と習合して断片的に日本に伝搬。聖牛の供儀、伎楽(七位階の秘儀の一部)、占星術、弥勒教の教義などが持ち込まれる。
 沖縄では、ミルクとなる。

・キリスト教とユダヤ教の差異を説明する要素としてミトラ教の教義が初期キリスト教へ「加上」されたと解釈するとスンナリゆく部分が多々ある。

・たとえば幼神ミトラ(ミトラス)は12月25日に岩から生まれたという神話。これがキリスト教に採用(習合)され、キリスト誕生の日となる。岩窟のマリアとも符合。

・キリスト教がミトラ教から摂取したもの:秘密集会の開催、教団内の堅い紐帯、洗礼、堅信礼、日曜日の神聖視、厳格な道徳律、禁欲と純潔の重視、無欲と自戒、天と地獄の概念、歴史の始まりにあった大洪水、原初の啓示、霊魂の不滅説など。

ミトラ教天使七星協会なる団体のサイト。いろいろ説明あり。

・松岡正剛のマルタン・フェルマースレン『ミトラス教』についての解説

ヒロさんという人(別人!)のサイトには物語、説話の分析が多い。

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1 コメント

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一歩 (大きな海)
2009-12-27 16:18:40
こんにちは 海は広く大きいですね
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