よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

コモンセンスはスキーマのスキマを埋める

2005年02月12日 | ニューパラダイム人間学
スキーマ理論が面白い。

体系的な知識の学習には「テクストを読んで理解する」という作業が必ず求められる。テクストを読んで理解するという作業には派手さはない。どちらかと言えば地道な作業だ。しかし、「テクストを読んで理解する」という知的な作業は、Eラーニングのみならず、読書、ネット経由での情報アクセス、大学・院での勉強、生涯学習、著作活動、専門分野の構築、近接分野への進出など、ありとあらゆるラーニングそして、知識を扱う仕事のシーンにとって示唆するものは多い。

さて、スキーマ理論では「テクストを読んで理解する」ことをリーディング・コンプリヘンションという。英語の学習でも使われるリーディング・コンプリヘンションだ。リーディング・コンプリヘンションは、学習者がテクスト(text)の活字から受動的に意味を汲み取る行為ではない。そうではなくてスキーマ理論は学習とはスキーマ(schema)と呼ばれる読み手の持つ先行知識(prior knowledge)とテクストの間の相互作用によって内容を再構築するプロセスと見立てる。

各個人の雑多な知識や経験は、実はスキーマと呼ばれる数多くの入れ子構造の知識として深いレベルの意識におさめられていて、スキーマは知識の記銘、保管、想起、さらには類推、判断などの認知活動にも大きな影響を与える。

だれしも興味があることはすぐに憶えられるが、関心のないことはなかなか覚えることができないのはそのためだ。スキーマは興味を形づくるし、興味がスキーマの持ち方、つまり知識に対する構えを形づくる。

さて、人はテクストに含まれる何らかのカギ(cue)を基に、自分のスキーマから最も適切なものを引っ張り出し、テクストの内容を再構築(reconstruction)する。この再構築した内容とテクストのコンテンツをすりあわせ、合致させれば理解(comprehension)したことになる。さらに理解したことをなにがしかの文脈のなかで活用できれば、アウトプット系の学習や仕事の成果に発展してゆく。

得意分野の本や論文はスラスラ読めるが、あまり読んだこともないような本だとゆっくり読んでもなかなか理解できないという経験はだれにでもあるだろう。読み手にテクスト理解に必要なスキーマがなく、間違ったスキーマを呼び出すと理解までには至らない。また書き手の意図とは違った解釈をすることになる。スキーマの種類、広がり、深さ、浅さが「テクストを読んで理解する」つまり学習を左右するし、アウトプット系の学習にも大きな影響を与える。

インフォメーション・ワーカー。ナレッジ・ワーカー。知識を扱う仕事をうまくこなせる人は、そのためのスキーマを持っているし、たえずスキーマをタテヨコに拡充できる。スキーマを共有できている者同志は、うまくコミュニケーションもできる。プロ級ならば、IT技術者はIT技術者としての共通スキーマがあるし、ウェブデザイナーにはウェブデザイナーのスキーマがある。看護師には看護師としてのそれぞれ専門スキーマがあるわけだ。

近接分野の優良なスキーマを持っている人、自分とは異なった秀でたスキーマを持っている人は大切にしたいものだ。自分の認識の地平線が拡がり、また組織にとってもいいチームができあがる可能性が大きい。

異なったスキーマをもった専門家ほど、それぞれのスキーマを異種交配させるスキーマのノリシロが必要だ。このノリシロのことをコモン・センス(≒常識)といってよいだろう。コモン・センスが飛んでしまっているとコミュニケーションができなくなってしまうから要注意だ。俗に言う専門バカには、ノリシロを埋める常識がないのだ。コモン・センス(≒常識)がスキーマのスキマ(隙間)を埋めてくれると言ってもいい。^^)最後はダジャレになってしまった。

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