不況・恐慌のときは、だれしもが不安を感じて大胆な一歩を踏み出せない。こういうご時世だからこそ、逆張り発想と時代への逆噴射が大切だ。
大学院の授業、講演、身の上(起業)相談などでよく語る起業に対する4つの新しいアプローチをちょっと紹介する。
(1)
能力開発型起業(能力開発のため起業する)
そりゃ、起業してお金儲けできればいい。でも創業からイグジットまで一通りやった経験を振り返ると、お金よりも能力のほうがたまった気がする。もとがトロかったのでそう感じているのかもしれないが、身銭を切ってビジネスをすると、身の周りで起きることがすべて勉強の機会となる。
財務、ファイナンス、マーケティング、顧客開拓、人事・労務管理、PR、IR、統計学などの形式知系のスキルはもちろん、修羅場のくぐり方、葛藤処理、ケンカ、ナダメ、スカシ、シノギなど状況処理能力、人間関係スキル、コミュニケーション能力など暗黙知系、実践力系も知らず知らずのうちに伸びる。
起業というのは成長の場であり、その場を自分で創るというのは究極の成果主義の実行である。
(2)
リスク軽減型起業(リスクを軽減するために起業する)
今の時代、規模の大小を問わず組織に雇用されているリクスは、独立して働くリスクより大きい。NHK「35歳を救え」という特集でも紹介していたが、35歳の平均的なサラリーマンは「転職経験がある」が66%、「会社が倒産するかもしれない」が42%、「解雇されるかもしれない」が30%。
内心大きな不安を感じながらビクビクしながら雇用されているのだ。ならば発想を変えよう。他人にコントロールされるリスクと自分でコントロールできるリスクを比べたら、どちらがいいか?明々白々、後者にきまっている。
自分でリスクを取ってコントロールするほうがすがすがしいし、精神衛生のためにもよいのだ。
(3)
セルフヘルプ型起業(自分で自分を雇用するために起業する)
英語では起業、起業家的行動様式のことを"Entrepreneurship"っていうが、Self-employmentともいう。いずれもSelf-help(自助努力)の延長にある。自分の能力をテコにして、他者に雇用されるというフックをかければサラリーパースン(Salaried person)。逆張りで、自分が自分を雇用するようにすれば起業となる。
そのためには自分以外のモノ資産ではなく、自分の人的資源(スキル、技術、ノウハウ、人脈、商脈など)でジカに仕事ができるナレッジ・ワークを確立しよう。自分を盛り上げるために、自分に知的シャワーを浴びせることがセルフ・ヘルプに直結する。
自己責任で自分の人生は自分で切り開く。それは自分を雇用することから始まる。
(4)
ビークルフリー型起業(ネタ優先、制度はあとで)
なにをレバレッジにして起業するのか?このレバレッジとなるものがビジネスモデルとビジネスプランだ。世の中にないなにかで、絶対的なニーズがあるものを金の草鞋を履いてでも探して見つけよう。市場のなかのムリ、ムダ、ムラ、ネジレ、スキマ、ウラガワなどは機会の宝庫だ。
そのあとで、ビジネスの出口イメージ、社会性、ボトムラインなどをじっくり考え、ビジネスのビークル(制度的乗り物)を選ぶ。個人事業、任意団体、NPO,株式会社などなど、ほんとうにいろいろあるので、ナカミ(コア技術、コアサービス、ビジネスモデルとビジネスプラン)をじっくり練ってから構想する。逆だと発想が狭くなりダメ。
絶対的に世の中に必要とされることだったら、社会起業でもゼニ儲け起業でもどちらでも成功するだろう。つまりビークル(制度的乗り物)を選ぶことができるナカミが大事。
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サービスの差別化に役立つコア技術をキチンと身につける。ただし、いい技術が市場で売れるわけではない。市場で売れる技術がいい技術なのだ。とくに、エンジニアバックグラウンドを持つ人は、この発想のギアチェンジが大事だ。
すくなくとも他人に雇われているより創造的だ。他人任せの人生(社畜)がいいのか、自分で切り開く人生(創造的人間)がいいのか。断然後者だ。不況・恐慌期に起業するヤツはホンモノだと思う。