散歩日記X

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名古屋への慌ただしい旅(3)

2009年02月14日 14時27分38秒 | ART
昼飯をすませ地上に出る。名古屋にもテレビ塔があり、栄界隈ではこれがランドマークになるので方角が分かりやすい。もっとも札幌市民としては、白いテレビ塔には違和感を感じる。



まずは徒歩で行ける愛知県美術館へ。「アンドリュー・ワイエス-創造への道程-」を見る。多分、好きな画家だよなあと思っていたが、やっぱり好きだ。ど真ん中ストライクに近い。



今回の展示だが、ワイエスの制作過程に焦点を当てており、デッサンから色ありの習作、そして本作へという展示構成になっているのだ。順番に見ていくと、だんだん世界が立ち上がってくるような感じがする。

彼の作品は取り立てて素晴らしい景色や傑出したものを描いているわけではないのだが、なぜか真面目に向き合わなくてはいけない気持ちになってくる。彼自身が非常に誠実に画に向き合っているのが感じられるのが一つの理由だろう。もう一つは、その世界が「浮かれていない、実体のあるアメリカ」だからかな。アメリカにもちゃんとしたところはあって、金融バカやローン(つまり借金)を組んでまで消費する消費者もいるのだが、おそらく質実剛健な人たちもいるはずなのだ。

それから彼の画は上手い。これが細部まで細かく描きすぎた無用の上手さではなく(そういうのも大好きなのだが)、必要にして十分に上手いのである。きっちり描いているところの絶妙の上手さと、割とおおざっぱに色をのせている所。実に気持ちの良い作品だ。

今回、彼の自画像もあったのだが、これがまたカッコイイのだ。1938年に描かれた自画像は、緑色の明るい色使いで顔も生意気な感じだ。しかし1944年に描かれたものはもう遠くを見るような眼になっている。この間に「人生の大部分は華やかなものではない」と気づいてしまった男のようであった。

さて、次は常設展だ。まず「近代の日本画-木村定三コレクションを中心に-」では小川芋銭の作品が中心。珍しい所では萬鉄五郎の日本画が2点あった。

「20世紀美術の展開 クリムトから桑山忠明まで」では有名どころはクリムト、ココシュカ、ピカソ、モディリアーニ、マティス、藤田など。目録を見るとトヨタ・東海銀行・中部電力から寄贈された作品があり、財界力の差を感じる。

「特集展示 奈良美智1991-2001」。奈良の作品が19点あり、ファンにはたまらないだろう。私は好きでも嫌いでもないので、「ふーん」という感じで見た。

「近年の受贈作品から 大森運夫/片岡球子ほか」。地元の画家富田弘一の「とこなめ」という作品が良かった。昔からの陶器の町が開発などで崩壊していく様子を描いたものだ。球子は面構シリーズ1点と裸婦2点。

最後に「特集展示村上華岳」を見る。「観音」という作品は彼らしい柔らかさがあり、「魔障之図」は三面鬼をさらっと描いて上手い。これも10点近く見ることができたのは、なかなか無いことだろう。このあと屋上の野外展示を見て終了。かなり充実した美術館だと思う。



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