散歩日記X

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春の東京(3)もう一つガンバル

2018年03月11日 16時43分37秒 | ART
「仁和寺展」を見てグッタリしたといいつつも、時間はまだ早く、もう一つくらい見ていかなくてはなるまい。ということで、国立西洋博物館へ。こちらはチケット購入に5分、入場待ちはなしということで、穏やかな状況であった。

■国立西洋美術館「プラド美術館展」。
ジュゼペ・デ・リベーラ「触覚」:手で彫刻の頭部を撫でまわしている絵画という、視覚に触覚を持ち込んだ作品。
アロンソ・カーノ「聖ベルナルドゥスと聖母」:聖母像から乳が飛んだ奇跡を描いたものだが、まるで白いレーザービームのように乳が飛び、聖人の口で飛沫が飛ぶという、謎の作品。
ディエゴ・ベラスケス「メニッポス」:ちょい悪風、荒野のガンマンか医者にも見える人物像である。今調べてみると、ギリシャの風刺家なのね。

ヤン・ブリューゲル(父)、ヘンドリク・ファン・バーレン、ヘラルト・セーヘルスら「視覚と嗅覚」:画中画(私の見た感じ、ラファエル風、ルーベンス風、ブリューゲル風など)、花・動物・宝石などシンボル満載の絵画。
ディエゴ・ベラスケス「マルス」:疲れた老マルス。
テイツィアーノ・ヴェチェッリオ「音楽にくつろぐヴィーナス」:オルガン引きの座る位置がベッドになっており、ヴィーナスに手を伸ばしている。何らかのほのめかしがあったように思えるが。

ぺーテル・パウル・ルーベンス、ヤーコブ・ヨルダーンス「アンドロメダを救うペルセウス」:ペルセウスの顔がオダギリジョーぽいと思うのは私だけか?
ビセンテ・カルドゥーチョに帰属「巨大な男性頭部」:高さ数メートルの人物の顔。1634年の作品だそうだが、何の狙いがあったのか?
ディエゴ・ベラスケス「狩猟服姿のフェリペ4世」:例の独特な顔立ちなのだが、それでも王様っぷりは歴然である。

ファン・カレーニョ・デ・ミランダ「甲冑姿のカルロス2世」:長い鼻と顎。独特の顔が表現されている。
アロンソ・サンチェス・コエーリョ「王女イサベル・クララ・エウヘニアとマグダレーナ・ルイス」:実に豪華な作品なのだが、王女が年長者である矮人の頭に無造作に手を置く当たり、まさに「上から」の態度である。
フアン・バン・デル・アメン「矮人の肖像」:服の赤い小さなスリット文様が実に細やか。矮人の顔はしっかりと描かれている。

ディエゴ・ベラスケス「バリェーカスの少年」:この時代にして、クールベを思わせるような大胆な描写だ(後でクールベを見たら、より写実要素が強かった気もするが)。
フランシスコ・デ・スルバラン「ヘラクレスとレルネのヒュドラ」:ヒュドラが小さいのだが、顔の生々しさはすごい。
ジュゼペ・デ・リベーラ「女の戦い」:なぜ戦っているのか分からないが、迫力の一騎打ち。

フェリクス・カステーリョ「西ゴート王テオドリック」:ややワイルド・ヤンキー系の王様だ。
ディエゴ・ベラスケス「王太子バルタサール・カルロス騎馬像」:描き方と言い、構図と言い、絶対的中心人物である。



デニス・ファン・アルスロート「ブリュッセルのオメガングもしくは鸚鵡の祝祭:職業組合の行列」:行列に大量の人が描かれている。しかし細かくそれぞれの人物は描き分けされており、「これ、俺だよ、俺」という会話がなされたであろう。
パウル・デ・フォス「犬と肉の寓話」:水にうつった肉が欲しくて、犬がくわえていた肉を失う寓話だが、このバカ犬が巨大な画として描かれている。教訓画なのだろうか。
ディエゴ・ベラスケス「東方三博士の礼拝」:人形のようなイエス像で、古典的ではあるが、極力普通の人間を描こうとしているところもある。

フランシスコ・デ・スルバラン「祝福する救世主」:後光はさしているが、それでいて細身の青年イエスである。
アンソニー・ヴァン・ダイク「聖フランチェスコの法悦」:天使が霊感を与えて法悦に浸る図であるが、これは危ない。まさに宗教の危険性とはこういうところではあるまいか。
ピーテル・パウル・ルーベンス「聖アンナのいる聖家族」:ルーベンス得意のムチムチ母子。
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ「小鳥のいる聖家族」:実に人間味のある聖家族である。ムリーリョのこういうところは好きだ。

ベラスケスの大作も良かったが、その他にもスルバラン、ムリーリョと私好みの作品が多くて良かった。この時代は王権、古典主義的なものがまだ中心だったのであろうが、近代のはしりを見るような所も多かったと思う。全体的に混雑はさほどでもなかったが、かなりの名作・大作ぞろいで、精神的に圧倒されるものがあった。


■国立西洋美術館「マーグ画廊と20世紀の画家たち-美術雑誌『デリエール・ル・ミロワール』を中心に」。常設展示の中の小企画展であるが、ボナール、マティス、ブラック、シャガール、ミロ等の作品があり、面白い。中でもカンディンスキーの「小さな世界」シリーズは非常に興味深いものであった。



よし、これで今日の美術館賞は終わりだ。


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