下牧人形には、ただの郷土芸能と見られるのは惜しいほどの見事なカシラがあります。
当初、わたしは地元だけの郷土芸能の人形なので、それほどのものがあるとは思っていませんでしたが、全国の名の知れた人形などをみると、下牧人形のカシラがとてもハイレベルのものであることに驚きました。
一言で表すと、田舎芝居特有の「安っぽさ」がまったく無いのです。
それは明治時代に教えをうけた吉田勘十との出会いが、大きく影響しているのではないかと思われます。
カシラは、いくつかのパターンで複数の役をかけ持つことが多いので、
それぞれの特徴がわかると鑑賞もとても面白くなるものです。
「立役がしら(たちやく)」
主役を演ずる
貞任でつかわれる「文七」は、とてもよく使われるもので、
カシラの中でも座頭(ざがしら)役といわれる
「老役がしら(ふけ、おやじがしら)」
老人役の人形に使う
写真の傔仗は「鬼一(きいち)」という老役がしらの代表的なもの。
眉が太く、目が張った怖い顔をしていて、表に剛骨、裏に風流味があって、一分別あるという表情が性根である。
「女形がしら(おやま)」
女の人形に使う。娘、年増、傾城、新造、婆、お福の6種類。
「子役がしら(こやく)」
割合に数は少なく、男は三種ほど女は大きいのを一種ですましている。
女役は、普通足はなく、着物の裾さばきだけで表現しますが、
この子役の「お君」だけは例外。
わらじ履きの立派な足がついてます。
「ちゃりがしら(ちゃり)」
滑稽な役回りに使われるもの。
「一役がしら(いちやく)」
「特殊がしら」ともよばれ、普通のカシラでは用をなさない一役のために作られたもの。「上人」「景清」「相丞」や狐や鬼に化ける「けつねがしら」「狐忠信」「がぶ」などがある。
・ ほかに、仕丁、捕手、町人、腰元など普通の芝居であるとその他大勢と、番付面へ出る役は、
「つめ」または「つめがしら(詰端頭)」という。
また、こうしたカシラを見ると、全国の人形浄瑠璃のカシラそれぞれが、端役ものなどはかなり手作りっぽい表情がありながら、どこも決まった形式の形や構造を踏襲していることがよくわかります。
(参照 宮尾しげを『文楽人形図譜』かのう書房)
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