英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

中国の防空識別圏と日本

2013年11月27日 17時23分59秒 | 時事問題
 新聞・テレビは中国の「防空識別圏(ADIZ)」問題を連日報道している。日米だけでなくオーストラリアや英国など欧州諸国も中国のADIZ設定を、国際常識に反する行動だと批判している。
 中国は尖閣諸島(沖縄県)の上空を含むADIZの空域を飛ぶ飛行機に対し事前に飛行計画の提出を求めている。しかし米軍機が26日朝、中国が求める飛行計画の事前提出なしでこの空域を飛行した。米国防総省が同日、明らかにした。
 中国国防省は、防空識別圏に関する指示に従わない航空機に対しては、中国軍などが緊急措置を取る方針を発表していたが、米軍機の飛行に対する中国側の反応はなかったという。
 米国防総省高官によると、米軍はグアムのアンダーセン空軍基地から2機の軍用機を飛ばした。米メディアによると、2機ともB52爆撃機。中国が主張している防空識別圏内を通過したのは1時間ほどで、数時間後に帰還した。
 一方日本経済新聞のインターネットサイトによれば、中国国防省は27日、米軍のB52爆撃機が中国の防空識別圏を飛行したことについて「中国軍は全航程を監視し、直ちに識別した」との談話を発表した。防空識別圏ですでに監視体制を敷いていることを強調したものだ。今後も中国の識別圏内を飛行するあらゆる航空機について監視していく方針も示した。
 中国はアドバルーンを上げて”敵”の出方を観察しているのだろう。一時的な行動ではなく、今までの外交・国防・軍事政策の一環としての行動だと思われる。米国や日本から批判されるのは計算づくでの行動だろう。何よりも中国はこのような「リスク」行動に耐えうる軍事力を備えてつつあるという自信を深めている。そう読んでまず間違いないと思う。中国軍部は、依然として米陸海空軍や米国の総合国力に対して中国が劣っていることを熟知している。ADIZを設定し、その既成事実を構築し、最終目的である自国の制空権をADIZに確立することにあると読める。もちろん領空とADIZの国際的な意味の違いを、中国軍部は理解しているが、最終的にはADIZを事実上領空化する狙いを持っていると踏んで間違いない。
 中国の夢は強大な海軍を建設し、アジアの覇権国になることにある。少なくともそう考えるのが妥当かもしれない。このためには中国沿岸港から自由に太平洋や南シナ海に出入りする必要がある。日本列島と台湾は太平洋に出入りするための妨害杭にほかならない。
 中国国営新華社通信などによると、中国初の空母「遼寧」号が26日午前、山東省・青島の基地を出航し、訓練のため南シナ海に向かった。昨年9月の就役以来、渤海や黄海を越えて南シナ海まで遠洋航行するのは初めて。
 26日付読売新聞は「東シナ海と南シナ海で、制海権・制空権を確保しようという習政権の動きは、日本だけでなく、南シナ海の領有権を争うベトナムやフィリピンとの関係も緊迫化させるのは必至だ」と述べている。
 米国と旧ソ連は「核兵器は人類を滅ぼす」という前提にって対立(米ソ冷戦)していた。米国と旧ソ連には共通の認識があった。ロシア人はヨーロッパ国際政治とのかかわりが少なくとも400年ある。長い外交上の交わりから、米ソは互いを理解していた。「これ以上は駄目」だという共通認識があった。米国と中国にはそれがあるのだろうか。文化やものの見方も違う。日本人と中国人のものの見方は同じアジア人でも違うところが多い。
 中国人に法を守れと言っても、「馬の耳に念仏」だ。筆者のブログを読んでくださっている読者ならその理由を理解していただけるはずだ。このような状況下で不測の事態が起こらないとはいえない。ただ、中国人は利にさとい。現実主義者だ。「相手より自分が弱い」と思うかぎりは無謀な行動に出ることはないだろう。この意味で日米の緊密な連携と、豪州や東南アジア諸国のとの協力が不可欠になる。
 このためにも政府の外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)設置法の成立は必要だろう。また特定秘密保護法案も必要だろう。ただ、あいかわらず自民党は目の前のことにばかり気を取られて、拙速な形で特定秘密保護法案を成立させようとしている。国民の支持が不可欠だが、その支持も得られず、ずさんな特定秘密法案を成立させようとしている。長期的な視点に立てば、この法案を廃案にして、一から出直すほうが、結果として良い結果が得られるだろうに。どうもここでも日本人の欠点である忍耐力の欠如と視野の狭さが自民党と安倍首相に露見された。
 この中国の軍事優先の動きは、中国共産党が倒れないかぎり、続くだろう。この視点に立って安倍政権は国民の支持を得られる特定秘密法案をつくるため、現在の法案を廃案にして出直すべきである。それこそこれからの対中国政策にとって大きなプラスにあると思うのだが。
  
  

  

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