地球温暖化は相当深刻な様相を呈しながら進んでいるようだ。愚かな人間はそれに気づいていない。否、気づいていても「地球温暖化ではない」と呪文のように唱えながら現実を見ないように努めている節がある。哲学者ゲオルク・フリードリッヒ・ヘーゲルの思想と照らし合わせると、人間の愚かさが理解できる。
哲学思想はそれぞれの人々の生き様から生まれる。17世紀末から18世紀前半を生きたドイツの哲学者ヘーゲルは古代ギリシャのソクラテスからの欧州の哲学を集大成し発展させた偉大な哲学者である。ヘーゲルの前にヘーゲルなし、ヘーゲルの後にヘーゲルはなし、と言われた人物だが、決して聖人君主ではない。
若い頃は学校の勉強ができず、女たらしで、不倫して既婚女性に子どもを産ませ、10年以上も、今で言えばフリーター(家庭教師)をしながらその日その日を食いつないでいた。しかし47歳のとき、ベルリン大学に招かれた。以降13年間在職し、広汎な講壇活動を展開した。
彼の思想の中核は「弁証法」だ。大学時代ほんのちょっとだけこの思想をかじった私は「テーゼ、アンチテーゼ、ジンテーゼ」と難解な理論を振りかざす思想家だとしか認識してこなかった。カール・マルクスやサルトル、西田幾太郎らに大きな影響を与えたぐらいにしか理解していなかった。
会社を完全に退職してから4年過ぎ去り暇をもてあましていた私は、この4月から白鴎大学(栃木県小山市)の聴講生としてヘーゲル哲学を学んでいる。そこで、素晴らしい教授に出会い、ヘーゲル哲学の一端を理解した。
弁証法とは平たく言えば、「勝ち組が負け組になり、負け組が勝ち組になる」と言うことだ。ヘーゲルは「人間社会と、そこに住む自分を固定化して考えてはならない」という。
高校時代、まれに見る優秀な生徒が40年後に再会すれば、平凡な生活をしていることがよく見かける。当時の先生が将来を嘱望したほど優秀な生徒が転落の人生を歩むこともある。平凡が悪いのではない。それもまた「是」である。しかし、高校時代、校則に何度も違反して謹慎処分を喰らい、成績は下から数えた方が早かった生徒が40年後に一流会社の枢要な職責についているケースもある。私の友人の1人だが、後に担任の先生が驚いているを目の当たりにした記憶がある。
ヘーゲルは著書「精神現象学」で「自分があるものを肯定する。自分が気づいていようがいまいが、必ず肯定するものがあれば否定するものが存在する」「社会は矛盾だらけだ。しかし社会はそれを超えた有機的な統一がある」
ヘーゲルは「弁証法」を編みだし難しいことを言っているが、要するにそれは「自らが経験したこと、それを叙述して把握したあかつきに、そのものを俯瞰(ふかん)して見なければ、統一した全体像は見えてこない。ものは変化しながら動いていくのだから」。だから永遠不滅の真理は存在しない。トータルにものを見なければならないのだ。
19歳のとき、ヘーゲルはフランス革命を隣国ドイツ(当時は日本の江戸時代と同じように諸侯の国々《藩》に分かれていた)から見た。彼は最初、一般の人々が国王・貴族社会をひっくり返し自由と博愛を手に入れたことを諸手を挙げて支持した。しかし、彼らが国王と貴族と同じ圧政を始めたことにお驚き落胆した。
マクシミリアン・ロベスピエールらフランス革命の急進派は国王ルイ16世や貴族を断頭台に送り、自らの理想に反対する人々を殺した。ヘーゲルは革命と理想は虐殺を生み反動に変ることを、自らの経験で理解した。つまり「世の中は定在(動かずに存在)することはない」と悟った。時とともに変化するのだ。理想は理想のままではありえず、真っ黒などぶに変るのが普通だ。
地球温暖化も社会の変化のひとつだと私は思う。人間は営みの中で、社会や環境を変えていく。トランプ大統領のような人物はものは「定在」しているかのようなことを主張し、地球温暖化を否定する。彼は愚か者か、それとも偽善者のどちらかだと思う。社会と時の変化から目を背けている。
このまま地球温暖化が進めば今世紀末に海面が1メートル強上昇し、世界の氷河は40%以上失われる恐れがある。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が9月25日、特別報告書を公表し、こう述べた。生態系に深刻な被害が生じ、高潮や巨大台風による災害リスクが増すと警告する。
IPCCは「温暖化抑制のためエネルギーや土地利用といった社会のあらゆる面で変革が必要だ」と指摘、来年に本格始動するパリ協定の下で温室効果ガス排出を迅速に減らす必要性を強調する。
特別報告書によると、海面の高さはこの100年ほどで最大21センチ上昇した。南極などの氷が解けて上昇のペースが加速している。
われわれはヘーゲルの思想を思い浮かべながら、地球温暖化と正面から向き合い、適切に対処していかなければならない。そうしなければ、その変化は人類を飲み込み、人類は死滅することは火を見るよりも明らかだ。
哲学思想はそれぞれの人々の生き様から生まれる。17世紀末から18世紀前半を生きたドイツの哲学者ヘーゲルは古代ギリシャのソクラテスからの欧州の哲学を集大成し発展させた偉大な哲学者である。ヘーゲルの前にヘーゲルなし、ヘーゲルの後にヘーゲルはなし、と言われた人物だが、決して聖人君主ではない。
若い頃は学校の勉強ができず、女たらしで、不倫して既婚女性に子どもを産ませ、10年以上も、今で言えばフリーター(家庭教師)をしながらその日その日を食いつないでいた。しかし47歳のとき、ベルリン大学に招かれた。以降13年間在職し、広汎な講壇活動を展開した。
彼の思想の中核は「弁証法」だ。大学時代ほんのちょっとだけこの思想をかじった私は「テーゼ、アンチテーゼ、ジンテーゼ」と難解な理論を振りかざす思想家だとしか認識してこなかった。カール・マルクスやサルトル、西田幾太郎らに大きな影響を与えたぐらいにしか理解していなかった。
会社を完全に退職してから4年過ぎ去り暇をもてあましていた私は、この4月から白鴎大学(栃木県小山市)の聴講生としてヘーゲル哲学を学んでいる。そこで、素晴らしい教授に出会い、ヘーゲル哲学の一端を理解した。
弁証法とは平たく言えば、「勝ち組が負け組になり、負け組が勝ち組になる」と言うことだ。ヘーゲルは「人間社会と、そこに住む自分を固定化して考えてはならない」という。
高校時代、まれに見る優秀な生徒が40年後に再会すれば、平凡な生活をしていることがよく見かける。当時の先生が将来を嘱望したほど優秀な生徒が転落の人生を歩むこともある。平凡が悪いのではない。それもまた「是」である。しかし、高校時代、校則に何度も違反して謹慎処分を喰らい、成績は下から数えた方が早かった生徒が40年後に一流会社の枢要な職責についているケースもある。私の友人の1人だが、後に担任の先生が驚いているを目の当たりにした記憶がある。
ヘーゲルは著書「精神現象学」で「自分があるものを肯定する。自分が気づいていようがいまいが、必ず肯定するものがあれば否定するものが存在する」「社会は矛盾だらけだ。しかし社会はそれを超えた有機的な統一がある」
ヘーゲルは「弁証法」を編みだし難しいことを言っているが、要するにそれは「自らが経験したこと、それを叙述して把握したあかつきに、そのものを俯瞰(ふかん)して見なければ、統一した全体像は見えてこない。ものは変化しながら動いていくのだから」。だから永遠不滅の真理は存在しない。トータルにものを見なければならないのだ。
19歳のとき、ヘーゲルはフランス革命を隣国ドイツ(当時は日本の江戸時代と同じように諸侯の国々《藩》に分かれていた)から見た。彼は最初、一般の人々が国王・貴族社会をひっくり返し自由と博愛を手に入れたことを諸手を挙げて支持した。しかし、彼らが国王と貴族と同じ圧政を始めたことにお驚き落胆した。
マクシミリアン・ロベスピエールらフランス革命の急進派は国王ルイ16世や貴族を断頭台に送り、自らの理想に反対する人々を殺した。ヘーゲルは革命と理想は虐殺を生み反動に変ることを、自らの経験で理解した。つまり「世の中は定在(動かずに存在)することはない」と悟った。時とともに変化するのだ。理想は理想のままではありえず、真っ黒などぶに変るのが普通だ。
地球温暖化も社会の変化のひとつだと私は思う。人間は営みの中で、社会や環境を変えていく。トランプ大統領のような人物はものは「定在」しているかのようなことを主張し、地球温暖化を否定する。彼は愚か者か、それとも偽善者のどちらかだと思う。社会と時の変化から目を背けている。
このまま地球温暖化が進めば今世紀末に海面が1メートル強上昇し、世界の氷河は40%以上失われる恐れがある。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が9月25日、特別報告書を公表し、こう述べた。生態系に深刻な被害が生じ、高潮や巨大台風による災害リスクが増すと警告する。
IPCCは「温暖化抑制のためエネルギーや土地利用といった社会のあらゆる面で変革が必要だ」と指摘、来年に本格始動するパリ協定の下で温室効果ガス排出を迅速に減らす必要性を強調する。
特別報告書によると、海面の高さはこの100年ほどで最大21センチ上昇した。南極などの氷が解けて上昇のペースが加速している。
われわれはヘーゲルの思想を思い浮かべながら、地球温暖化と正面から向き合い、適切に対処していかなければならない。そうしなければ、その変化は人類を飲み込み、人類は死滅することは火を見るよりも明らかだ。