英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

ストレス解消のひとつは読書  偉大な読書家だった英宰相チャーチルが語る

2019年09月16日 09時44分59秒 | 英宰相ウィンストン・チャーチルの話
   チャーチルは、懸命に働く人々がストレスから解放される一つの方法として読書を薦める。読書は、歴史家や科学者、哲学者や詩人ら先哲の晴らしい知識やアイデアを手に入れ満足感に浸るとき、精神的な安らぎを感じると語る。
  19世紀後半~20世紀初頭に活躍した新聞記者で、自由党の政治家だったジョン・モーリー子爵の読書についての考え方を紹介し、「5千冊を下回るくらいのほんのちょっとの冊数を読むことは心の慰めになる」という。5千冊を「ほんのちょっとの冊数」だと言ってのけるほど読書家だった。
  ただ、膨大な本を精読したのかといえば、どうもそうではなかったらしく「私たちが持っている全ての本をどう読むか」との質問に対するチャーチルの答えはこうだ。 
  「全ての本を精読することができなければ、本に触れて愛でなさい。じっと見なさい。それからどのページでもよいから、まず開けなさい。そして拾い読みして目に留まった最初の文章をじっくり読みなさい。それから、ほかのページを開きなさい。たとえて言えば、海図のない海を探索して、発見の航海にするのです。終ったら本棚に戻しなさい。本棚を整理し、すぐ目的の本を取り出せるようにしなさい。内容が詳しくわかっていなくても、その本が本棚のどこにあるか直ぐにわかるように。もし本が諸君の親友でないのなら、とにかく知り合い程度で十分です。少なくとも知り合いだと認める程度まで読みなさい」
  本を多読、精読しても、そこに何か自分の心に響くものを発見できなければ何の意味もない、とチャーチルはいう。その意味で少年に多読を勧めていない。数多くの良書を読むことも禁じている。
  チャーチルは「本から受けた最初の感銘こそが大切だ。少年時代の読後感が浅ければ、本とはそんなものかと感じ、本に期待することもなくなる。……老人が食べ物を食べるのに細心の注意を払うように、少年は読書に細心の注意を払うべきだ」と強調している。
  チャーチルは読書の長所をこう述べているが、読書の短所も一つだけ指摘している。それは頭脳労働に近いため、人によっては気分転換にならないことだ。だから、体を動かす手仕事を見つけることの大切さも若者に語っている。
 私の知る限り、大政治家は例外なく、読書家だと思う。戦前の犬養毅や高橋是清にしてもそうだし、戦後の中曽根康弘元首相や石橋湛山にしてもそうだ。
 現在の政治家はどうだろか。選挙に勝つことばかりうつつを抜かして、地元の支援者回りばかりしている政治家が多いと聞く。これでは読書する時間もないだろう。
 世の中が平和な時は、政治家は誰がなっても大差はない。しかし、市民や国民、国家の難局の時は、勝海舟のような膨大な知識を駆使して危急存亡の秋に対処する政治家が必要だ。チャーチルも第2次世界大戦の指導者として英国民に「勇気を出せ」と激励した。
 チャーチルの読書観を拙書「人間チャーチルからのメッセージ 不安な豊かさの時代に生きる私たち」(2017年12月刊行、アマゾン、紀伊國屋書店などで販売)から抜粋した。読者の参考になればと思う。

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