英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

安倍さん、歴史的なスパンで政策を考えて   保守主義者といえるのか?

2012年12月31日 13時18分52秒 | 時事問題
 「『気合とアゲアゲのノリさえあれば、まあなんとかなるべえ』という空疎な前向きな感性」「気合があれば実現できる」「歴史的スパンで物事を考えることが苦手です。だから当座の立て直しには強いけれども、長期的な視野に立った発想はなかなか出てこない」。12月27日付朝日新聞が精神科医の斎藤環(たまき)さんの発言を紹介している。斎藤さんは自民党は「ヤンキー政党」だという。
 26日から27日にかけて、米国のニューヨーク・タイムズ紙、英国のインディペンデント紙やタイムズ紙は、安倍首相を「タカ派の民族主義者」と異口同音に紹介。安倍氏が尖閣や靖国参拝問題をめぐる日中韓国民の対立感情をさらにあおるのではないかと危惧している。
 安倍首相ばかりでなく、平均的な日本人は「歴史的スパンで物事を考えることが苦手」なように思える。長期的な視野に立った発想はなかなか出てこない。一直線に突っ走る傾向がある。白黒はっきりさせないと満足しない。
 安倍政権の茂木経済産業相が「2030年代の原発ゼロ」という方針を見直すとともに、「未着工の原発の新増設は認めない」という方針も白紙にする考えを示した。
 このままいくと、一直線になし崩し的に原発OKになるかもしれない。「今」だけから判断して原発を増設し、福島原発事故の「過去」を忘れ去っていくだろう。日本民族のお得いのパターンだ。
 原発事故が「なぜ起こったのか」を徹底的に検証する。その検証の結果と「太陽光などの自然エネルギー開発の商業的な実現性」などを加味して、原発政策をどうするか。原発と火力発電、風力発電をバランスよくどうすれば利用できるか。これから時の変化に応じて、柔軟に原子力政策を変更しながら、風力、地熱、太陽光開発を進めていく。地球温暖化阻止をも頭に入れて中長期な構想を練る。現在の構想が、将来のある時点での時の変化とそぐわなければ、現在の構想を修正する。原発を必要最小限にして、現在の経済レベルを維持できるようにするための道筋を見つけていく中長期的戦略の必要性がある。
 われわれ日本人は、決めたことを守る素晴らしい民族だ。しかし「歴史的スパン」でものごとを考えないために、いったん決めたことを守らないと「ひよっている」と言い出す傾向が強い。自らのご都合で当初の言葉を変えるのは言語道断だが、周囲の変化に応じて当初の姿勢を変えるのは正しい。
 ただ、なぜ見解を変えたのかを説明をしなければならない。その説明が多くの政治家にないように思う。尖閣にしても、靖国参拝、慰安婦問題にしても、自らの感情をストレートに表に出してしまう。
 ピューリタン(清教徒)を先祖にもつ米国人も理念の顔が時々前面に出てくる。歴史上、現実的な政治家もいるが、一直線に走る政治家も少なからずいるように思う。ベトナム戦争やイラク戦争は好例だ。ブッシュ前大統領は典型的ピューリタン米国人だと思う。
 イングランド人はこの点、日本人が大嫌いないな手練手札を使って押したり引いたりしてくる。じっと相手を観察している。時が自分に味方しないなら、退いて好機を待つ。ぼんやりと待つのではなく、好機をつくり出す努力をする。特に政治や外交ではそうする。
 「保守は知性に支えられた思想ですが、ヤンキー(安倍氏)は反知性主義です。徹底的に実利主義で『理屈をこねている暇があったら行動しろ』というスタンス。主張の内容よりも、どれだけきっぱり言ったか、言ったことを実行できるかが評価のポイントで、『決められない政治』というのが必要以上に注目されているのはそのせいです」。これも斎藤氏の発言だ。
 確かに本当の保守は「知性に支えられた思想」だ。絶えず変化し続ける時の流れを目をこらして観察、分析し、臆病なまでの慎重さで行動を始める。そして時の流れの変化を読み取り、スタンスを変え、妥協し、最後に核心的な利益をつかみ取る。現実を直視した行動である。
 取り留めのないことを書いているが、理想にばかり囚われて、現実を見なかった人物が嘉田・滋賀県知事だろう。知事が日本未来の党を立ち上げたとき、筆者は批判した。「夢ばかり見るな」と。
 現実ばかり見て政治権力をもてあそび、現実の中に理想を追い求める欠片もない小沢氏とは対局にいる人物だ。現実の中に理想は生まれ、理想の中に理想は生まれない。
 また小沢氏が理想の政治家かというと、そうではない。現実の政治をもてあそび、現実を分析や思考もしない中には、長期的な政治目標は生まれないからだ。
  チャーチルのように、長期的な政治目的を心に抱き、絶えず変化する時の流れを的確に判断し、時にはリスクを恐れず勇気を出して一歩も二歩も後退し、他人から変節したと思われても長期的な政治目的は決して曲げない政治家こそが信頼すべき政治家ではないだろうか。
 

 11月にこのブログで、私のホームページを12月中旬に立ち上げると書きました。約1週間前に立ち上げ、公開して試験運転をしていました。お知らせします。ホームページにお出かけください。「ダウニング街だより」。www.downing.jp/です

 (2012年12月28日 21時38分39秒)

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