ウクライナ危機をめぐる評論家の橋下徹氏の発言が物議を醸しだしている。ウクライナ人は国を捨てて逃亡するべきだ、といった趣旨のことを主張している。テレビ朝日のキャスター、玉川徹氏も、ウクライナは早く降伏して命を守るべきだ、と主張している。
人道的な観点から話しているのだろう。ロシア史を知らない人々からは賛同を得るかもしれないが、今から50年前、イギリスの大学院でロシア政治をかじった者として思うことは、この両人はロシアの政治家を知らない。
私は英語が読めるようになって、旧ソ連の独裁者スターリンの、日本人から見て想像すらできない残虐性を目の当たりにして最初は信じられず、担当教授に2度、この事実は本当かと尋ねた。
1944年、ロシア帝国の地図を引き継いだ旧ソ連の独裁者スターリンは、温暖な黒海沿岸に住んでいたタタール人(モンゴル族、ロシアと東ヨーロッパを侵略したジンギスハンの子孫)がナチス・ドイツに協力した嫌疑で、約20万人のタタール人全員を極寒の地シベリアに追放した。そして民族の一体性が失われた。
島国の日本人には想像できない所行だ。日本は中国を侵略し、中国人を虐殺、戦争犯罪に手を染めた。しかし日本民族には、スターリンやナチスドイツのヒトラーのように、民族ごと浄化する考えは思いつきもしないだろう。
1945年8月15日、日本は旧ソ連や米国を含む連合国に無条件降伏した。ソ連のスターリンは日本が降伏したにもかかわらず北方4島を占領。現在のロシアのプーチン大統領は、日本が降伏調印をした1945年9月2日前に占領したのだから正当だと主張している。そしてスターリンは米軍最高司令官ダグラス・マッカーサーに北海道の半分をよこせと要求した。
マッカーサーはその要求を拒絶した。もしマッカーサーが承諾したら、北海道の住民はタタール人と同じ運命を辿っていたかもしれない。アメリカに占領されたことが幸いした。いかにアメリカの指導者が過酷な占領政策を敷いたとしても、日本民族を消滅させる考えはなかったからだ。
今日、ウクライナ人はタタール人と同じ立場にいる。ロシア帝国の版図を広げたエカチェリーナ2世を敬愛するウラジミール・プーチンは、一言で言えば、失った旧ソ連(ロシア帝国)の領土を取り戻そうとしているようだ。
このため、民主主義を軽視しているとアメリカに批判され、あれほど米国に殺陣を突いてきたポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ首相は一夜にして態度を変えた。ロシアのプーチン大統領にシンパシーを抱いていた彼が一夜にして恐怖におののいている。
モラヴィエツキ首相はこう話す。「私は間違っていたのを認めます。我々は幻想を抱いてはいけない。ロシアのウクライナ侵攻はまさに始まりであります」
ポーランドはロシア帝国に3回の分割をへて、1795年に地球上から消えた。再び国家としてよみがえるのは第1次世界大戦の時である。
ロシア帝国と旧ソ連によって2度、地球から消されたバルト三国の一つ、リトアニアのガブリエス・ランズベルギス外相も米国紙「ニューヨーク・タイムズ」に「われわれは新しい現実に直面しています。もしプーチンを止めることができなければ、彼はさらに前進するでしょう」と強調している。
中立国のフィンランドも中立を捨てて、米国や英国の自由民主主義国の同盟、北大西洋条約機構加盟に傾斜している。この国も第1次世界大戦までロシア帝国の一部だった。この大戦で独立してからも、ロシア帝国を引き継いだ旧ソ連と2度戦っている。ロシアの脅威をかつて受けたスウェーデンもNATOに
避難しようかと考えているというニュースが入っている。
プーチンが2008年と2012年の大統領選挙で「強いロシアを復活する」と言い、2005年の議会演説で「ソ連の解体(ロシア帝国の解体)はロシア人にとって悲劇だった」と述べたことが、かつてのロシア帝国と旧ソ連にいじめられた東ヨーロッパ諸国やフィンランドを震え上がらせている。
プーチンはウクライナを、長いロシアの歴史を振り返り、ロシアの一部だと信じ込んでいる。その国が核を持ち、プーチンの信念、理念を振りかざしてウクライナに侵攻した。彼にとって妥協はあり得ない。
橋元さんや玉川さんはロシア帝国とソ連の歴史を学んでほしい。彼らはあまりにもナイーブだ。玉川さんや橋元さん、そして多くの人々の人道主義的発言は独裁者で、典型的な強権ロシア”帝国”のプーチンには通じないのだ。
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人道的な観点から話しているのだろう。ロシア史を知らない人々からは賛同を得るかもしれないが、今から50年前、イギリスの大学院でロシア政治をかじった者として思うことは、この両人はロシアの政治家を知らない。
私は英語が読めるようになって、旧ソ連の独裁者スターリンの、日本人から見て想像すらできない残虐性を目の当たりにして最初は信じられず、担当教授に2度、この事実は本当かと尋ねた。
1944年、ロシア帝国の地図を引き継いだ旧ソ連の独裁者スターリンは、温暖な黒海沿岸に住んでいたタタール人(モンゴル族、ロシアと東ヨーロッパを侵略したジンギスハンの子孫)がナチス・ドイツに協力した嫌疑で、約20万人のタタール人全員を極寒の地シベリアに追放した。そして民族の一体性が失われた。
島国の日本人には想像できない所行だ。日本は中国を侵略し、中国人を虐殺、戦争犯罪に手を染めた。しかし日本民族には、スターリンやナチスドイツのヒトラーのように、民族ごと浄化する考えは思いつきもしないだろう。
1945年8月15日、日本は旧ソ連や米国を含む連合国に無条件降伏した。ソ連のスターリンは日本が降伏したにもかかわらず北方4島を占領。現在のロシアのプーチン大統領は、日本が降伏調印をした1945年9月2日前に占領したのだから正当だと主張している。そしてスターリンは米軍最高司令官ダグラス・マッカーサーに北海道の半分をよこせと要求した。
マッカーサーはその要求を拒絶した。もしマッカーサーが承諾したら、北海道の住民はタタール人と同じ運命を辿っていたかもしれない。アメリカに占領されたことが幸いした。いかにアメリカの指導者が過酷な占領政策を敷いたとしても、日本民族を消滅させる考えはなかったからだ。
今日、ウクライナ人はタタール人と同じ立場にいる。ロシア帝国の版図を広げたエカチェリーナ2世を敬愛するウラジミール・プーチンは、一言で言えば、失った旧ソ連(ロシア帝国)の領土を取り戻そうとしているようだ。
このため、民主主義を軽視しているとアメリカに批判され、あれほど米国に殺陣を突いてきたポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ首相は一夜にして態度を変えた。ロシアのプーチン大統領にシンパシーを抱いていた彼が一夜にして恐怖におののいている。
モラヴィエツキ首相はこう話す。「私は間違っていたのを認めます。我々は幻想を抱いてはいけない。ロシアのウクライナ侵攻はまさに始まりであります」
ポーランドはロシア帝国に3回の分割をへて、1795年に地球上から消えた。再び国家としてよみがえるのは第1次世界大戦の時である。
ロシア帝国と旧ソ連によって2度、地球から消されたバルト三国の一つ、リトアニアのガブリエス・ランズベルギス外相も米国紙「ニューヨーク・タイムズ」に「われわれは新しい現実に直面しています。もしプーチンを止めることができなければ、彼はさらに前進するでしょう」と強調している。
中立国のフィンランドも中立を捨てて、米国や英国の自由民主主義国の同盟、北大西洋条約機構加盟に傾斜している。この国も第1次世界大戦までロシア帝国の一部だった。この大戦で独立してからも、ロシア帝国を引き継いだ旧ソ連と2度戦っている。ロシアの脅威をかつて受けたスウェーデンもNATOに
避難しようかと考えているというニュースが入っている。
プーチンが2008年と2012年の大統領選挙で「強いロシアを復活する」と言い、2005年の議会演説で「ソ連の解体(ロシア帝国の解体)はロシア人にとって悲劇だった」と述べたことが、かつてのロシア帝国と旧ソ連にいじめられた東ヨーロッパ諸国やフィンランドを震え上がらせている。
プーチンはウクライナを、長いロシアの歴史を振り返り、ロシアの一部だと信じ込んでいる。その国が核を持ち、プーチンの信念、理念を振りかざしてウクライナに侵攻した。彼にとって妥協はあり得ない。
橋元さんや玉川さんはロシア帝国とソ連の歴史を学んでほしい。彼らはあまりにもナイーブだ。玉川さんや橋元さん、そして多くの人々の人道主義的発言は独裁者で、典型的な強権ロシア”帝国”のプーチンには通じないのだ。
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