英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

丸山氏の暴言の背景にある日本社会を見極めるべき  北方4島「戦争発言」に思う

2019年05月14日 20時19分14秒 | 日本の政治

  日本維新の会の丸山穂高衆議院議員が北方4島の返還について「戦争しないと、どうしようもなくないですか?」という発言がネットを賑わしている。この発言は論評する価値がないことは百も承知だが、この言葉の背景に投影された日本社会に言いしれぬ不安を感じる。
 この議員は1984年生まれということは、まだ30代後半。彼にとって「戦争」という言葉自体が死語に近く、実感がわかないのだろう。ということは彼と同じ30代の人々の何人がどんな心理、精神構造を持っているのか。彼の後ろの何万、何十万の丸山氏がいるのかもしれない。考えるだけで言いしれぬ怖さを感じる。
 丸山議員は元島民でビザなし交流訪問団長の大塚小彌太さん(89)に、BuzzFeed.Newsから引用すると、以下のように発言した。
  丸山議員「団長は、その戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」
  大塚さん「戦争で?」
  丸山議員「だから、ロシアが混乱しているときに、取り返すのはOKですか」
  大塚さん「いや、戦争なんて言葉は使いたくないです。使いたくない」
  丸山議員「でも取り返せないですよね」
  大塚さん「いや、戦争したって、戦争するべきではない」
  丸山議員「戦争しないとどうしようもなくないですか」
  大塚さん「戦争は必要ないです」
 1945年8月15日の無条件降伏(終戦=敗北)直後の旧ソ連軍(現在のロシア)の北方4島への不法占領以降の70年間にわたる日ソ(日ロ)交渉に絶望した発言とは言え、許されるものではない。そして丸山衆議院議員は酒に酔ったから暴言を吐いたのか。3年前に酒に酔って男性と喧嘩になり、「議員在職中に一切酒を口にしない」と宣言したのに、再び騒動を起こしたから許されないのか。
  私はそうは思わない。酒に酔ったから「戦争でこの島を取り返すのに賛成ですか」と発言したのではない。酒に酔ったから本音がでたのだ。
  丸山衆院議員が所属する日本維新の会の松井一郎代表は「国会議員として、あるまじき不適切な行為と発言。大勢の皆さんに申し訳ない思いでいっぱいです」と話し、議員辞職を勧告した。しかし、図らずもこの党の体質を露呈している。松井代表がいかに弁解しようとも、丸山氏を公認したのは日本維新の会。この党の独裁的で右派的な体質をものの見事に露呈している。それはこの党をつくり、現在も党に影響力を維持している橋下徹氏の体質でもある。
 この党は、橋下氏に代表されるように、大衆操作がひじょうに上手い。私が橋下氏が政界に現れ、一般の人々が草木もなびくがごとく橋下氏の支持者になって大阪へはせ参じた7~8年前、私はブログで書いた。「ナチス・ドイツの独裁者アドルフ・ヒトラーを連想させる」。橋下氏の名誉のために言っておくが、彼はヒトラーのような政治家では決してない。ただ、ヒトラーと同じように、大衆を熱狂させる巧み(空虚)な弁を持っている。
 橋下氏は弁が立つが、演説が上手いのではない。チャーチルのように筋道を立て歴史をひもといて脚色せず事実を話して説得し、聞き手を引き込んでいく演説ではなく、単なるデマゴギーに長けている。屁理屈をまくしたて、論敵を自分のペースに巻き込んで、大衆に「橋下は弁が立つ」と錯覚させる人物だと見抜いた。弁が立つが中身がない。その弁に踊らされている大衆を見た。
 北方4島をめぐる丸山氏の暴言は図らずも日本維新の会の右派体質をさらけ出し、この党との連携を模索する安部自民党政府の右派体質を明らかにした。多くの日本人、メディアでさえ、保守と右派との違いがわからない。なぜ右派と保守が違うのかを学ぶべきだ。右派と保守の違いがわからない日本人がこれからますます多くなれば、日本はもと来た暗い道を戻るかもしれない。日本人の国民性から判断して、左派や極左が日本を支配することはほとんどなく、右派が日本人の情緒をくすぐり台頭する。それは歴史が証明している。