新保信長著『字が汚い!』(2017年4月15日文藝春秋発行)を読んだ。
表紙裏にはこうある。
字の汚さには定評のあるコラムニストの石原壮一郎氏、
女子高生みたいな字を書くゲッツ板谷氏、
デッサン力で字を書く画家の山口晃氏、
手書き文字を装丁に使うデザイナーの寄藤文平氏らに話を聞き、
作家や著名人の文字を検証し、ペン字練習帳で練習し、
ペン字教室にも通った。その結果、
著者の字はどう変わったのか…!?
著者は、『30日できれいな字が書けるペン習字練習帳』、『かんたん!100字できれいになるボールペン字練習帳』、『まっすぐな線が引ければ字はうまくなる』、『練習しないで、字がうまくなる!』でみっちり練習した。さらにペン字教室にも通った。
結果は、丁寧に書かなければ字は汚くなり、文全体のバランスをとらないとおかしくなるということだけ(極論)。ただし、今は筆記用具も格段に進歩していて弘法でない人は筆を選ぶ必要があるというヒントを得た。
さらに、「字は人を表すか?」「字にも流行があるのか?」『「うまい字」より「味のある字」をめざせ』と続く。
新保信長(しんぼ・のぶなが)
1964年大阪生まれ。東京大学文学部心理学科卒。流しの編集者&ライター。阪神タイガースファン。
『SPA!』などの雑誌に携わりつつ、単行本やムックの編集・執筆を手がける。
著書に『笑う入試問題』(角川書店)、『東大生はなぜ「一応、東大です」と言うのか?』(アスペクト)、『国歌斉唱♪ 「君が代」と世界の国歌はどう違う?』(河出書房新社)、編書に『できるかな』シリーズ(西原理恵子/扶桑社)、文藝別冊『総特集いしいひさいち』(河出書房新社)などがある。
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
私はもともときれいに字を書くという気持ちがなく、字は読めればよく、できれば読みやすければよいと思っている。その結果、なんとか読める字を書いている。
手書きで文字を書く機会は現代ではどれほどあるだろうか。各種申込書への住所・氏名の記入は手書きだが、それほど気を使うものでもない。結婚式や法事の受付での記帳、祝儀袋・香典袋への記銘などは、年寄りなのにあまりに子供っぽい字だと困るので、丁寧に楷書的に書けば、なんとかやり過ごせる。
この本では、遺言書をそれなりの字で書きたいとあった。確かに、そう思う。今さら遺言書のために練習する気にもならないので丁寧に、全体のバランスを保ち、曲がらずに書く以外ない。ほとんど遺産もないのに、達筆ではかえって空しいのではと、負け惜しみで思う。
この本は、かなり冗長だが、写真例の悪筆ぶりを見て、笑え、これなら私の方がまだましだと、安心できる。著者の奮闘にも拘わらず、結果として、きれいな字とはほどとおく、丁寧に書いているとはわかるが、バランスが悪いところが散見できる。簡単には上手くならない、センスが問題なのだということが分かった。