彩瀬まる著『新しい星』(2021年11月25日文藝春秋発行)を読んだ。
直木賞候補作、高校生直木賞受賞作『くちなし』から4年――
私たちは一人じゃない。これからもずっと、ずっと
愛するものの喪失と再生を描く、感動の物語
幸せな恋愛、結婚だった。これからも幸せな出産、子育てが続く……はずだった。順風満帆に「普通」の幸福を謳歌していた森崎青子に訪れた思いがけない転機――娘の死から、彼女の人生は暗転した。離婚、職場での理不尽、「普通」からはみ出した者への周囲の無理解。「再生」を期し、もがけばもがくほど、亡くした者への愛は溢れ、「普通」は遠ざかり……。(表題作「新しい星」)
美しく、静謐に佇む物語
気鋭が放つ、新たな代表作
大学の合気道部で親友だった男女4人。それぞれ苦難に襲われ、再会し、ほどよい距離感での交流と支え合いを描く連作短編集。
森崎青子は良い恋愛、幸せな結婚生活は真っ直ぐに続いていくのだと信じていた。しかし、早産で生まれた娘・なぎさを生後2ヶ月で亡くし、夫・穂高と離婚し、「なぎさはこれからもそばにいるから、一人でやっていける」と母・糸子に語ったら、両親ともうまくいかなくなった。「新しい星で、青子はやはり一人だった」。
大学の合気道部で出会った親友・日野原茅乃(かやの)は、青子に乳癌になったと告げる。5歳の娘・菜緒をもつ茅乃の苦しみを青子は共にしようと語りかける。
パワハラで辞職して引きこもりになっている31歳の安堂玄也に、合気道部のかつての仲間・青子から、茅乃は道場に通っているので来ないかと誘いのメッセージが届く。花田卓馬から、茅乃のガンからのリハビリのためだと聞いてためらったが勇気を振り絞って行くことにする。青子、茅乃、玄也と卓馬は道場で再会する。卓馬も家族と別居していて悩みを抱えていた。4人のゆるやかな連帯が再び始まった。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)
第一話は、未熟児で生まれてすぐ死んだ娘によって、青子の人生、周囲との人間関係は突然激変し、新しい星に生まれ直したかのようになる様子が説得力をもって迫る。しかし、第二話以降は徐々に緊張感が薄れ、淡々と進んでいく。
ややまとまり過ぎた、普通すぎる展開で、全員が良い人なので物足りない気持ちになる。自分が傷ついているからこそ、友に寄り添えるということなのではあるのだが。
彩瀬まる(あやせ・まる)
1986年千葉県生まれ。上智大学文学部卒。
2010年「花に眩む」で第九回女による女のためのR-18文学賞読者賞受賞。
2016年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、2018年同作で高校生直木賞受賞2017年『くちなし』で直木賞候補
2019年『森があふれる』で織田作之助賞候補
他に、『不在』『さいはての家』『まだ温かい鍋を抱いておやすみ』『川のほとりで羽化するぼくら』など。