冲方丁(うぶかた・とう)著『はなとゆめ』(角川文庫う20-10、2016年7月25日KADOKAWA発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
なぜ彼女は、『枕草子』を書いたのか――。28歳の清少納言は、帝の妃である17歳の中宮定子様に仕え始めた。華やかな宮中の雰囲気になじめずにいたが、定子様に導かれ、その才能を開花させていく。機転をもって知識を披露し、清少納言はやがて、宮中での存在感を強める。しかし幸福なときは長くは続かず、権力を掌握せんとする藤原道長と定子様の政争に巻き込まれて……。清少納言の心ふるわす生涯を描く、珠玉の歴史小説!
歌人としては高名だが身分は高いとは言えない清原元輔を父に持つ清少納言が、橘則光と離婚して、息子を夫に取られた。帝のおわす皇居の内裏を浄土に近い場所として憧れていたなか、25歳になり藤原信義を二人目の夫とすることになった。彼は「…君の頭の良さと、わたしの顔の良さを持った子を。…」と言った。
そして、思いもかけずくせっ毛で28歳(おお年増)の清少納言は、中宮である藤原定子(ていし)のもとへ出仕することとなる。中宮定子は権勢を誇る父・藤原道隆、20歳の若さで権大納言の兄・伊周に支えられ、支えて繁栄の真っただ中だった。まだ、藤原道長ははるかかなただった。
本書は2013年11月刊の単行本を加筆訂正のうえ文庫化。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
従来、私は清少納言を好きになれなかった。自慢話が多く、機転はきくが深い考えがない女性と思っていた。
しかし、この本を読んで、そして山本淳子氏の解説を読んで、それほど単純ではなく、誤解していた面もあったと考えるようになった。『枕草子に』には、仕える中宮定子が悲劇的状況になってもなお、「中宮様はお笑いになった」「不如意なことは何一つなかった」など定子をたたえ、幸せであるとの記述が続くという。悲劇的状態にあるからこそ、定子の素晴らしさだけを後の記憶に残そうとしたというのだ。
この本を読んで少なくとも清少納言の定子に対する献身的な思いは十二分に感じ取ることが出来た。対立する彰子に仕えた底意地が悪そうな紫式部より人柄は良いかも。
『枕草子』の面白がる解説だけでなく、一度ちゃんと読んでみたくなった。この本はそんな一冊であった。
冲方丁(うぶかた・とう)
1977年岐阜県生まれ。14歳まで、シンガポール、ネパールに在住。埼玉県立川越高校卒。
1996年早稲田大学在学中に『黒い季節』で第1回スニーカー大賞 金賞を受賞しデビュー
1997年ゲーム制作者としてデビュー。先鋭的なゲーム開発に多数関わる。
2003年小説『マルドゥック・スクランブル』で日本SF大賞受賞
2009年『 天地明察』刊行。2010年本屋大賞1位、吉川英治文学新人賞受賞、舟橋聖一文学賞受賞、直木賞候補
2012年『光圀伝』で第3回山田風太郎賞を受賞
その他、『もらい泣き』『戦の国』など。
・今の所ブログを止めるつもりはありません。
・将来ブログを停止するときには予告します。
・したがって、急にブログが止まったときには、事故などで著者が書けない状態になったとご理解ください。なお、このブログは数日~1か月ほど先まで予約投稿していますので、事故などの時期は不明となります。