hiyamizu's blog

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レイチェル・カーソン『センス・オブ・ワンダー』を読む

2021年05月29日 | 読書2

 

レイチェル・カーソン著、上遠恵子訳、森本二太郎写真『センス・オブ・ワンダー』(1996年7月25日新潮社発行)を読んだ。

 

原題は ”THE SENCE OF WONDER”。原書はメイン州の林や海辺、空などの写真を収めた大判になっている。
本書は2014年発行の57刷だが、26刷から旧版のカバーと本文写真を森本二太郎撮影の、カーソンの別荘のあるアメリカ・メイン州の海辺、森、植物などの写真に全面的に変更された。

 

 

著者レイチェル・カーソンがガン宣告を受けながら書いた『沈黙の春』は環境保護運動のきっかけを作った歴史的名著だ。次に最後の仕事として本書を書き、遺作となって、彼女の友人たちによって出版された。

 

 

レイチェルは毎年、夏の数か月をメーン州の別荘で過ごした。本書は、彼女が姪の息子・幼いロジャーと、海岸と森を探索し、雨を吸い込んだ地衣類の感触を楽しみ、星空を眺め、鳥の声や風の音に耳をすませた、その情景を詩情豊かな筆致で静かにやさしく語りかけてくる。

 

レイチェルは、すべての子どもが生まれながらに持っている「センス・オブ・ワンダー」、つまり「神秘さや不思議さに目を見はる感性」を、いつまでも失わないでほしいと願っていた。そのためには、「わたしたちが住んでいる世界のよろこび、感激、神秘などを子どもといっしょに再発見し、感動を分かち合ってくれる大人が、すくなくともひとり、そばにいる」ことだという。

 

わたしは、子どもにとっても、どのようにして子どもを教育すべきか頭をなやませている親にとっても、「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではないと固く信じています。

 子どもたちがであう事実のひとつひとつが、やがて知識や知恵を生みだす種子だとしたら、さまざまな情緒やゆたかな感受性は、この種子をはぐくむ肥沃な土壌です。幼い子ども時代は、この土壌を耕すときです。(p24)

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

肩ひじ張らずに幼い子どもと森の中を歩き、足元の小さな世界を眺めるレイチェルの目線は澄み切って、やさしい。ガンにおかされ、おそらく余命を知り、後の世代に託そうとする彼女の静かな想いがしみわたってくる。

 

森の中の小さな、小さな光景、わずかな動き、ひそやかな音、なんということない話なのだが、あらためて自然というものが心に忍び寄ってくる一冊だ。

 

本文中に挿入されているメーン州の海辺、森、植物などの写真が美しい。とくに子どもが足元の小さな驚きを発見したような小さな写真、例えば一面のコケの中の芽吹いたばかりの木の赤ちゃんなどの写真は、レイチェルと幼いロジャーが発見した光景を眼前に彷彿とさせる。

 

 

レイチェル・カーソン Rachel Carson

1907年5月ペンシルヴェニア州生まれ。ペンシルヴェニア女子大学、ジョンズ・ホプキンズ大学に学んだ後、合衆国漁業局(現在の魚類野生生物局)に入る。海洋生物学者、作家。

1962年『沈黙の春』を出版。

著書に『潮風の下で』『われらをめぐる海』『海辺』『センス・オブ・ワンダー』がある。

1964年4月ワシントン郊外のシルヴァースプリングにて56歳で死去。。

 

 

上遠恵子(かみとお・けいこ)

1929年生れ。エッセイスト、翻訳家。レイチェル・カーソン日本協会理事長。東京薬科大学卒。

1974年、ポール・ブルックス『生命の棲家』(後に『レイチェル・カーソン』と改題)を訳出。以来カーソン研究をライフワークにする。

訳書にカーソン『センス・オブ・ワンダー』『海辺』『潮風の下で』などがある。

 

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