有川浩著『植物図鑑』2010年6月角川書店発行、を読んだ。
角川書店の宣伝はこうだ。
男の子に美少女が落ちてくるなら女の子にもイケメンが落ちてきて何が悪い!ある日道端に落ちていた好みの男子。「樹木の樹って書いてイツキと読むんだ」。野に育つ草花に託して語られる、最新にして最強の恋愛小説!
こんな調子で話は始まる。
「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか」・・・
「ひ・・・拾って、って。捨て犬みたいにそんな、あんた」・・・
「咬みません。躾のできたよい子です」
「やだ、やめてー」
「ひ・・・拾って、って。捨て犬みたいにそんな、あんた」・・・
「咬みません。躾のできたよい子です」
「やだ、やめてー」
拾われた男子は野草に詳しく、女子と一緒に野草狩りに出かけ、とった草を調理して食べる。ヘクソガズラに始まる9つの章と、最後の章からなる。さらにカーテンコールの短編と、後日談の書きおろし短編が付け加わっている。登場する野草、雑草のカラー写真、巻末特別付録の野草料理レシピ4つがあり、まさに『植物図鑑』だ。
初出は、植物図鑑:ケイタイ小説サイト「小説屋sari-sari」2008年6月~2009年4月、午後三時:「野生時代」2009年6月、ゴゴサンジ:書下ろし
webKADOKAWAの「『植物図鑑』特集」
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)
二人の恋愛模様は良く書けているとはいえ、当初から想像がつく流れだし、どうみても雑草の説明、料理には少なくとも私は興味がわかない。身近な野草を紹介するという他に例を見ない小説ではある。
本筋に無関係だが、気になったところを一つだけ引用する。
川端康成が言ったという。
別れる男に、花の名を一つは教えておきなさい。花は毎年必ず咲きます。
いやらしい事をいう奴だ。おっと、ノーベル賞受賞作家だった。それでなくとも、女はからりと気持ちを入れ替え、男はいつまでも引きずるのに。
有川浩(ありかわ・ひろ)の略歴と既読本リスト