hiyamizu's blog

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海堂尊『極北ラプソディ』を読む

2013年09月08日 | 読書2
海堂尊著『極北ラプソディ』(2011年12月朝日新聞出版発行)を読んだ。

極北市が財政破たんし、病院再建請負人・世良雅志が極北市民病院の院長に就任する。世良は人員削減、薬剤費抑制、救急患者の受け入れ拒否の強硬策をとる。医師は院長世良と今中の二人だけで、極北市の救命救急業務は隣接する雪見市にある極北救命救急センターに依頼する。
極北市民病院が診察拒否した患者が死亡する。そこで、世良は、今中を極北救命救急センターへの出向させ、病院ただ一人の医師となり世論の非難をかわす。そしてそれは、同時に、今中にドクターヘリによる救急の最前線を経験させるためでもあった。

2013年3月19日、20日NHKで、瑛太主演の特集ドラマとなった。

初出:2011年2月4日号~11月18日号



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

救命救急の現場、ドクターヘリの問題、自治体と市立病院の関係など良く書けていて興味深かった。しかし、登場人物が多く、かつ癖のある人ばかりなので、突っ込みが浅く、話が深まらない。

主人公の今中は目立った活躍がなく、世良の方針に疑問を持つなど迷いの多い語り手に徹している。したがって、隔靴掻痒(この言葉、初めて使えた)の感じで、読み終わってもすっきりしない。
いわくありげに登場した人物のその後がチラッと出るだけで、肩すかしだ。例えば、消防士の広崎宏明、極北大水沢教授が何かたくらんでいるかのようなのに、なんということなく終わる。IT分野の天才技術者として西野が登場するが、ネットの動画配信しただけで事が終わる。

速水などかつての作品で活躍したらしい人物が脇役として登場するが、シリーズの外の本を読んでいない私には乗り切れない。



海堂 尊(かいどう たける)
1961年千葉県生まれ。千葉大学医学部卒業、同大学院医学博士号取得。
外科医を経て病理専門医。
2009年より独立行政法人・放射線医学総合研究所・重粒子医科学センター・Ai 情報研究推進室室長。剣道3段。
2006年『チーム・バチスタの栄光』で、「このミステリーがすごい!」大賞受賞。
その他、『ジーン・ワルツ』『ナイチンゲールの沈黙』『ジェネラル・ルージュの伝説』『イノセント・ゲリラの祝祭』『アリアドネの弾丸』『トリセツ・カラダ』『死因不明社会』『ケルベロスの肖像

登場人物

今中 良夫
語り手。極北市民病院副院長。といっても、極北市が財政再建団体に指定されたので、医師は院長と2人だけ。院長世良の救急患者受入拒否の方針に対して、迷いがある。

世良 雅志
破たんした極北市の極北市民病院再建請負人として院長となる。しがらみ、同情を排し、論理的に考え、ストレートに意見をいうことから敵も多い。講演やメディアで活動し「テレビ先生」と呼ばれている。外科の名門・東城医大佐伯外科の外科医だった過去がある。彼が再建した後、去った後には多くの悪評が残る。

速水晃一
雪見市にある極北救命救急センター副センター長。東城医大で救命救急センターを率いていた過去がある。傲岸な性格から「将軍」と呼ばれ、彼が病棟責任者となる日は、患者が大挙押し寄せることから、「将軍の日」と恐れられる。

花房 美和
極北救命救急センター看護師長。速水とともに、東城医大から赴任した。

桃倉 義治
極北救命救急センター長。白衣の下に作務衣を着て坊主頭。

伊達 伸也
極北救命救急センターのフライトドクター。脳外科医だったが、救急にこだわる。

五條 郁美
極北救命救急センターのフライトナース。負けん気が強く、美人だが、酒癖が悪い。講演会で世良に救急患者を受入れるよう主張するが、世良に論破され悔し泣く。

大月
極東航空から派遣されているドクターヘリのパイロット。フライトに備え、烏龍茶を飲むが、酒豪。

越川
ドクターヘリと管制塔の連絡、ドクターヘリの運航管理を行うCS(コミュニケーション・スペシャリスト)。患者の命の危機よりもフライトドクターとフライトナースらの安全を第一に優先し、無謀なフライトは断固拒否する。

仲根 貴子
雪見市市長。強運の持ち主で、来年の統一地方選挙向けのドクタージェット構想を企画している。

久世 敦夫
神威島の診療所を30年間一人で守る。

後藤 継夫
神威島の診療所で働く医師。元極北市民病院研修医で、看護師の並木梢と結婚。前作からは一転し頼り甲斐のある医師となっている。


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