私の通った小学校はほぼ並行に走る小田急線と京王線の間にあり、子供たちは、小田急派と京王派に別れ、自慢と、けなしあいをしていた。
私は子供の頃、小田急線の線路から数十メートルのところに住んでいたので、当然小田急派だった。京王派は、「小田急って国鉄のお古の車両だろ」、「京王なんて4両あるんだぜ。小田急は2両か?」などと言う。しかし、こちらには、ロマンスカーがある。いつもこれで相手を悔しがらせられた。
小田急にはロマンスカーと呼ばれる特急が走っていた。今は騒音苦情で鳴らさなくなってしまったが、当時は遠くからサイレンのようなピーポー、ピーポーという音を鳴らしながら走ってきた。外で遊んでいるときにその音を聞くと、崖をよじ登って、線路ぎわでロマンスカーがやってくるのを待つ。高いサイレンの音を響かせていたのが、目の前を豪快に一気に過ぎ去ると、とたんに低音でなんだか間延びしたピイーイー、ポーオオーとなり、あっと言う間に、まっすぐ延びた遠く線路上へ消えていってしまう。決して行けない遠い世界へ点となって、甘酸っぱい子供のロマンを乗せて。