hiyamizu's blog

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角田光代『希望という名のアナログ日記』を読む

2020年02月06日 | 読書2

 

角田光代著『希望という名のアナログ日記』(2019年11月6日小学館発行)を読んだ。

 

各種媒体へ書いたエッセイを集めた。一篇だけエッセイ風の短編小説がある。カバーは佐野洋子の絵。

 

小学館の宣伝文。 

作文の得意な少女は作家への夢を追いかけた

第一章「<希望>を書く」…小学生時代の作文修業から作家デビュー、幾度の挫折を経て直木賞受賞までを描く半生の記に始まり、追いかけるアイドルではなく目指すべき表現者であった忌野清志郎論など全21篇。
第二章「旅の時間、走るよろこび」…<旅のエッセイ>と見せかけて実はフィクションという見事な短篇小説「それぞれのウィーン」で幕を開け、「永遠、という美」と題したシャネルN。5のドキュメントがつづく。そして台湾、韓国、パリ、スペインへの旅、さらには那覇マラソンと西表島マラソンの鮮やかな記憶を綴る。
第三章「まちの記憶・暮らしのカケラ」…住んでいる町の素顔から東日本大震災で失われた町、そして日々の暮らしを生き生きと描いたエッセイ17篇。

 

Ⅰ <希望>を書く

充実しきった日々を夢中で過ごして、そうすることで、ずっと遠くに、ずっと高いところにいくことが以前の私は幸福だと思っていた。でも、そうではない、と思うようになった。今日一日を、昨日と同じようにくり返せること、フルの力じゃなくていい、高くも遠くもいかなくていい、掘った穴を埋めるような一日が過ごせること――そのほうが、ずっと幸福だと思うようになった。

その理由は、猫と暮らすようになったことと、年齢のせいだろう。

 

Ⅱ 旅の時間・走るよろこび

スペイン・サンティアゴ近郊のリオハ地区、蛇口が二つ並んでいて、右から水が、左からは赤ワインが出る。巡礼者に敬意を払うためだ。

 

那覇マラソンは日本一完走率が低いマラソンだ。沿道からたくさんの食べ物や、飲物、中には口がパサパサになるサーターアンダギーや、泡盛もある。

 

東日本大震災の2年後、三陸へ旅した。雪の積もった空き地に手書きの看板が立っていた。「ご支援ありがとうごさいます。いつかかならずご恩返しいたします。気をつけてお帰りください」

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

一つ一つのエッセイは読みやすく、明快な文章で、内容も納得できるものなのだが、さまざまな媒体向けに書いたエッセイの集合体なので、全体としては内容が広がり過ぎている。角田さんには、細かな依頼は断って、まとまったテーマでエッセイを書いてもらい、などと思ったりして。

 

一時期マラソン――ハーフだが――を走っていた者として、走る話は面白かった。ひとけのない田舎道を走っていて、沿道に応援の人がいると、気を引きしめてきちんと走る。応援は本当に力になる、少なくともその箇所だけはしっかり走れる。

 

若いときと考え方が違ってきたとの記述が散見する。角田さんも52歳。「まだまだ思いもかけないように変わりますよ」とお伝えしたい。

 

 

角田光代の略歴と既読本リスト

 

コメント
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