島本理生著『ファーストラブ』(2018年5月30日文藝春秋発行)を読んだ。
女子大生・聖山環菜は、アナウンサー試験の面接を受けていたが、途中で辞退し、父親・那雄人が講師を務める美術学校を訪ね、あらかじめ購入していた包丁を使い父を刺殺した。多摩川沿いを血まみれで歩いているところを逮捕された環菜は、犯行は認めるが「動機はそちらで見つけてください」と語る。「美人すぎる殺人者」と事件はマスコミで大きく取り上げられた。
臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、環菜やその周辺の人々と面会を重ねることになる。弁護を担当する義弟の迦葉と、なぜ環菜は「父親を殺さねばならなかったのか?」を明らかにしようとする。
第159回直木賞受賞作。
真壁由紀:主人公。臨床心理士で、テレビにも出演する。夫と小4の息子・正親と暮らす。父親が海外出張時に、たびたび少女買春していたことを知り、心に傷を持つ。自己中の母親ともしっくりいっていない。クリニックを開業している。スタッフは里沙。
真壁我聞(がもん):由紀の夫。写真家だが、家庭を支えている。おおらかで優しい。
庵野迦葉(あんの・かしょう):8歳の時、実母に捨てられて、叔母(我聞の母)に我聞の弟として育てられた。由紀と大学の同期で、親しく付き合っていた。弁護士。環菜の事件を国選で、北野とともに担当。
聖山環菜(ひじりやま・かんな):22歳。小さな頃から情緒不安定なところがあり、自傷を繰り返していた。美人だが、大人びた少女顔。美人の母は昭菜。
聖山那雄人(なおと):画家。環菜の父親だが、血は繋がっていない。
辻:出版社の編集者。由紀と一緒に環菜についての本を出版すべく取材する。
臼井香子:環奈の小学校からの親友。燃える花のような美女。
賀川洋一:環奈の元恋人?。
初出:「別冊文藝春秋」2016年7月号~2018年1月号
島本理生の略歴と既読本リスト
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
事件の謎に迫るミステリーとしては展開が遅く、意外性も少なく、面白味が無い。
環菜が抱える心の闇を面会や取材で少しずつ暴いていく様子はよく書けているが、内容は想定の範囲。
環菜が、由紀や迦葉の協力により、徐々に過去の自分と向き合い、素直になっていく様子は、年寄にはほほえましく思えるが、こんなんで直木賞?と思ってしまう。
由紀と迦葉の過去もそれほどに傷になる話でもなく、思わせぶりなだけ。登場する女性がすべて極上の美人というのにはあきれる。美人でも何か特徴、癖があって欲しかった。