中山祐次郎『医者の本音』(SB新書444、2018年8月15日SBクリエイティブ㈱発行)を読んだ。
医局に所属せず、がんの執刀医を続ける著者が、「医療のブラックボックス」に切り込む。
「なぜ病院はこんなに待たされるの?」、「なぜ医者の態度はいつも冷たいのか?」、「薬を減らしたいとき、なんといえばいいか?」、「袖の下は渡したほうがいいのか?」、「製薬会社からの賄賂は本当にあるのか?」、「玉の輿に乗るならねらい目は?」など面と向かっては聞けなかった疑問に答える。
第1章 医者の本音 その一言に込められた真意
第2章 医者は言わない 薬・手術の本当のところ
充分な説明時間が取れないことが原因で、インフォームドコンセントが十分でない。説明用動画ビデオを作成することを考えている。
がん患者3100人のうち1382人(45%)が1種類以上の補完代替医療(民間療法)を利用して月57千円出費。
第3章 病院の本音 患者の都合 医者の都合
第4章 医者のお金と恋愛 その収支明細と私生活
病院勤務医は、月123万円、年収1479万円(平均43歳)
個人開業医は、月205万円、年収2458万円(平均59歳)
アルバイト ガッツリ救急系:時給1万円、寝当直系:一晩3~4万円、専門活かし系:時給1万円以下。
日本に医師は30万人以上いる。
第5章 タブーとしての「死」と「老い」 人のいのちは本当に平等か?
積極的安楽死として許容されるための要件(平成7年3月28日横浜地裁判決)
1. 患者に耐えがたい激しい苦痛があること
2. 死が避けられず、かつ死期が迫っていること
3. 患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くしほかに手段がないこと
4. 生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示があること
高額医療を保険で行うかどうかに関して、例えば「ある人が一年、元気な状態で生きるために使える額は、5万ドル」=それ以上なら治療をやめるとの考えがある(イギリスでは一部実施)。
「若い人のがんは進行が速い」と言われるが、正確には「若い人は進行した状態でがんが見つかることが多いため、進みが速く見える」ことが多い。
私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき)(最大は五つ星)
とかくきれいごとですまされてしまう医者の主張が、ほぼ本音で語られている。内容的には一般の人が思っている通りなことがほとんどだが、医師の口から語られることに意味がある。
勤務医は忙しすぎる。利権団体の医師会、厚生省を打ち破って医師枠増加を図るべきだ。そのためにも女性医師を増やそう!
それにしても、多忙が唯一の原因ではないだろうが、「女性医師の生涯未婚率は35.9%、男性医師は2.8%、すべての職業の平均が15.1%」はひどすぎる。
「後医は名医」:後の方になって患者を診たら、経過もわかるのし症状が多く出て全体像がわかる。診断はつけやすいし治療もうまくいくだろう。だから名医のように見える」