hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

朝井まかて『藪医ふらここ堂』を読む

2016年07月03日 | 読書2

 

 

朝井まかて著『藪医ふらここ堂』(2015年8月20日)を読んだ。

 

宣伝文句は以下

天野三哲(あまのさんてつ)は江戸・神田三河町で開業している小児医。「面倒臭ぇ」が口癖で、朝寝坊する、患者を選り好みする、面倒になると患者を置いて逃げ出しちまう、近所でも有名な藪医者だ。ところが、ひょんなことから患者が押し寄せてくる。三哲の娘・おゆん、弟子の次郎助、凄腕産婆のお亀婆さん、男前の薬種商・佐吉など、周囲の面々を巻き込んで、ふらここ堂はスッタモンダの大騒ぎに──。

 

江戸時代に大出世を成し遂げた実在の医者をモデルとする連作物語。

「ふらここ」とは庭の山桃の木に吊るしたぶらんこ。

 

いかにも本当はすごい名医という雰囲気を秘めながら、口が悪く、怠け者のくせに相手が金持ちとなるとやる気を出す、性格の悪さ全開で、本性を現さないヤブ医者天野三哲。

何事にも消極的で引っ込み思案の娘おゆん。

幼馴染の次郎助は三哲の押し掛け弟子となるが、おゆんが目的であることは最初から見え見えだ。

次郎助の母親で、おゆんの育ての母ともいうべき人の良いお安。

薬種問屋手代でイケメンの男やもめの佐吉と息子の勇太。

評判の取上げ婆で、しっかり金をため込んでいるお亀。三哲は「ありゃ、六十は越している。下手すりゃ喜寿じゃねえか」と言うが、「婆さん」と呼びかけると「婆さんて言うな!」と怒鳴られる。

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

軽く気楽に楽しめる。

藪医者が実は名医とか、次郎助が実はおゆんが好きとか、伏線は見え見えだが、江戸の長屋の日常生活の中での個性的な人たちのやりとりが生き生きと展開され、安心して、楽しんでスイスイ読める。

主人公三哲とえげつない凄腕取り上げ婆の亀婆との、心の底では互いに認め合いながらのこけおろし合いが小気味良い。

 

 

朝井まかて(あさい・まかて)

1959年、大阪生まれ。甲南女子大学文学部卒業。

2008年、第3回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞してデビュー(『花競べ 向嶋なずな屋繁盛記』と改題)

2013年、中島歌子の一生を描いた『恋歌』で第3回本屋が選ぶ時代小説大賞

2014年、同書『恋歌』で直木賞を受賞、また『阿蘭陀西鶴』で織田作之助賞を受賞。

2015年、『すかたん』がOsaka Book One Project に選定。

他に『ちゃんちゃら』『先生のお庭番』『ぬけまいる』『御松茸騒動』。

 

 

 

ちちんぷいぷい

春日局が病み勝ちで癇性だった幼い家光に「あなた様は知仁武勇(ちじんぶゆう)に優れた、この世の宝にごさいますよって唱えながら抱いたという。「知仁武勇は御代の御宝」が訛って「ちちんぷいぷい」になったという。

(後に大人物になる子供を励まし慈しむ話は、みんな春日局と家光に収束する)

 

コメント
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