ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

おたべ、おたべってな

2012-05-05 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
「おたべちゃんって、舞妓さんが頭を上下に振って…」
そ。ふよぉん(おたべ)、ふよぉんって(おたべ)って、笑顔を上下させる女が好きなんだよ。
おたべをマネて、頭を振ったら、
「ぷ…、あはははっ」吹き出したかと思ったら、大笑いしやがって、
遊女の笑い方じゃねぇな。
「だって、あはは…ふよぉん、ふよぉんって…ふははは」
笑い過ぎ…腹を抱えて笑って、こっち見た。その泣き笑いが、
「生八つ橋、食べたくなっちゃったわ」あん時のおたべ、だった。
…勿体ねぇ。
「え?」
いや、何でもねぇよ。
「君、可愛いのね」今度は、右に頭を傾げて、笑って俺を見た。
男に対する褒め言葉じゃねぇな。
「だって、顔真っ赤にして。本当におたべちゃんが好きなのね」
甘い菓子が好きなだけだ。柔肌に包まれた餡子を、ペロっと…、
「変な子」年下だと思って、小ばかにしやがって、客を変人扱いする遊女ってのも、
頭、おっかしいんじゃねぇの。
遊女がガキに情は入っちまって、移っちまって、仕事もままなりませんってか。
「ふ…ふふ…」おたべちゃんみたいに頭を振って笑ったかと思ったら…、
「ねぇ、私を、買ってくれない?」俺に目線を合わせて、じ…っと見た。
あん?
「おたべちゃんみたいに、笑っていたいの」
なら、そんな遊女みてぇ顔すんなよ。
「ここから、出してよ」冗談ぽく、どうせ、君みたいな年下には無理でしょ?みてぇな顔しやがったから、
支度する暇はねぇぞ。
「え?」
おたべちゃんに鞍替えだ、強引に菖蒲の手を引っ張って、
「ちょっと、待って…何、」
遊ぶ金作るのが精一杯、見受金なんか積めるかよ。