ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~それぞれの、感傷~

2014-03-19 | 散華の如く~天下出世の蝶~
今回タヌキ殿の接待で、
築山の一件、晴れた…、
とは思えぬ。
“許せ、瀬名よ、信康よ。余はいずれ必ず、そなたらの恨み晴らさずにおこうか”
帰蝶「いずれ…」
この恨みが“私たちに”
大きな災いをもたらす、
そう…思えてならない。
“安土方様、刻限にございます”
突然、小姓に声を掛けられ、
ハッと現実に引き戻された。
帰蝶「もうそんな時間…、殿は?」
蘭丸「天主に居られます」
帰蝶「そう。ところで…」
殿の、可愛い小姓を見つめて、
「蘭丸。殿には、慣れたか?」
蘭丸「はッ、あ…いえ、」
ふ…と、
赤らんだ頬を、
伏せて隠した。
帰蝶「可愛いものよ」
蘭丸「は…」
十二、三の少年に、可愛いとは失礼であったか?
俯いたまま、黙っていた。
蘭は安土築城の前年に殿の刀持ちとして召し抱えられた。
面立ちは女子の如く、均整のとれたそれは美しく華やか。
武骨寡黙な兄長可は、父に似て小姓には難しい所がある。
故に、この情緒豊か、少々感傷的な三男が殿の所に来た。
何より、大恩ある方の御子息で、
“私たちも”特別な感情がある。