ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

もしも、のお話

2012-02-25 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
厨房では、
シャカシャカおシャカ…と卵を攪拌して、ジュ…と卵焼きのいい匂いが漂って、
すみか「あ…、あのッ、佐藤のおじ様ッ」に声を掛けた。
基治さん「おッ、桜…気に入ったかい?」皆のために朝食を作っていて、
すみか「はい」胸元に、そっと手を当てて…「とても、きれいです」
桜が、私の体をきれいに生まれ変えてくれた。
佐藤のおじ様が、私をきれいに変えてくれた。
醜いお灸の傷痕…醜くただれて、嫌いだった。
鏡に映る自分は、醜い、そう蔑む目が見えた。それが、一夜にして、桜になって咲いた。
嬉しかった。
「あの…もう一つ、お願いがあります」
基治さん「ほいッ」と伊達巻を一つ、作り終えて…「今度は何?」
すみか「斯波の咲良と、彫って下さい」袖を捲し上げて、腕を出した。
基治さん「芝桜…?」
すみか「今度は、痛みに…堪えてみせます」
これから、どんどん傷付くんだ。
今度は、痛みから逃げ出さないように、受け止めて、
その痛みに負けないように、グッと歯を食い縛った。
基治さん「…なら、舌を噛まないように、」襷を外して「これを噛みなさい」
すみか「はいッ」噛み締めた佐藤のおじ様の襷には、昆布のダシの、醤油の味がした。
尖った針は、
チクッ…
心の痛みに比べたら、小さいかった。大げさに、痛がって…
基治さん「良く堪えたね」針を水で洗い、仕舞って、私の腕を取った。
刻まれた文字“芝之桜”を見て、
「これで、一生、桜は芝のモンだ」
すみか「…咲良って、私の本名なんです」
基治さん「そりゃ、強く咲くな…毎年、毎年…と!?」
咲良「おじ様ーッ」と、抱き締めた。
もし、おじ様が、おとうだったら…、