ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

怪獣ブースカ

2014-09-24 | ~ 出 産 ~
実母はこのエーリアンのことを、怪獣ブースカと呼ぶ。
私はこのブーちゃんに、
“夏衣、絹の紗(しゃ)のような美しい花となれ”
と願いを込めて紗花(さやか)と名付けた。しかし、産まれ出てみたら、紗から遠い鬼瓦だ。
ブーちゃんは顔真っ赤にして、
「うぅ~ー…ん、んッ、うんッ」
悶える。
授乳中、精神安定剤である乳房をベッと出し、
「うあぁ~ん」
泣く。
「どうしたの?お乳がまずいの?」
ちなみに、お乳は怖い。母の口にしたものがそのまま乳と出る。
つまり、レトルト、インスタントにケーキなんぞ食べようものなら、そのまま影響が出る。
母たちはいったい、何を食せば良いか?助産婦さんに質問したところ、
「子供与えたいもの、体に良さそうなものを、食べて下さい」
個人差があるが、牛乳、小麦粉も乳腺を詰まらせるので控えている。代用に豆乳と米粉を食している。妊娠中それ以上に気を使うのが授乳中の食事だそうだ。
「梨とか柿とかも一口くらいなら良いけど、控えて下さい」
なぬ?秋の味覚をガッツリ食べられないのか?もしや、好物の栗も?
大正解、控えましょう。まだまだたくさんあるのでは?と調べてみた。
すると、出るわ出るわ。マズい母乳を作る食品が、ずらりと、ネットで公開されていた。
兎に角、甘いモノを節制し、団子汁飲んで、ヒジキ食って、豆乳飲んで、米食って…。
ちなみに、母乳に即効性があるのが“米”らしい。病院の産褥食でも米はどんぶりだった。
体に良いモノを食べ続け、便秘解消にバナナ、ミルミル、ヤクルト…と、
ぶー…ぶりぶり、ぶ、ぶーッ
真っ赤な顔のブースカは一瞬、あちゃっとはにかみ、すっきりした顔に戻る。
抱っこしているとオムツごしに分かるが、大量の実が出ているのだ。
母乳しか飲んでいないのに何で?と当初不安になり看護婦さんに質問した。
「この子、下痢ばかりして…、お腹が弱い子なんじゃ…」
母乳にラクトフェリンが多く含有している証拠だ…で、ブースカは緩い。しかし、正常だ。

和解の後…

2014-09-23 | ~ 出 産 ~
結局、母乳外来で母乳に自信を持つことで終わり、夜泣きの原因は特定出来なかった。
腹を空かせれば、泣く。
怖い夢を見ても、泣く。
不意に損なわれるご機嫌で、不愉快になっても、泣く。
体温調整がまだ出来ないため暑くても寒くても、泣く。
オムツ汚れやかぶれ、湿疹その他虫刺されでも、泣く。
さらに、羊水という保護シールドから突如過酷な現実世界に産み落とされた娘は娑婆(シャバ・この世)の空気に合わないと、泣く生物なのだ。
泣きたいのだ、泣かせて待とう、子の成長…。
愚図って、泣き始めて、無駄に時間だけが過ぎて、数時間このエーリアンを揺らし続けている夜もしばしば訪れるが、この言語未習熟エーリアンを産み落としたのは、私だ。
エーリアンの母は私しかいない。
エーリアンに母乳を与えるのも、私…。
エーリアンが時に襲撃、お乳をグーでパンチ、パワフルあんよでキック。
何されようとも、この意味不明なエーリアンと付き合えるのは、私しかいない。
エーリアンに、
「(お乳に)やり過ぎってこと、ありませんから」
分かった。
今はこのエーリアンをデッカく成長させることに専念し、言語習得後に和解、立派な地球のガーディアン(守護聖人)となるよう、育てよう。
このエーリアンの使命は立派な地球人になること。
それだけでいい。
兎に角、理解できる地球人になってもらいたい。
エーリアンの目標は、地球人…で、どうだろう?
同じ地球人として、この地で共に歩んで行ける日を楽しみに、
「ほれ、乳の時間じゃ」
乳首を銜えさす。
チュバ、チュバ、
気持ち良く乳を吸い上げ、満足気に笑みを浮かべる、この横顔…、
どことなく、実母に似ているように思う。それはそれで、複雑だ。

ごめんね、ごめんね…

2014-09-22 | ~ 出 産 ~
お乳チェックの結果、
「(母乳に)自信持って下さい」
体重は四日で294gUPの3454g、一日73.5g増えていた。
母乳が出てないから、娘が泣くわけでは無かった。
「スゴイですよ、90㏄も飲んで…」
母乳は十分に飲んでいる。
体重も順調に増え続け…、
じゃ、何で泣くの?
泣くのは仕事とはいうけど、仕事し過ぎだ。
「スんゴイです。泣いて、泣いて…死んじゃわないかと思って…」
泣き過ぎて、息が止まっちゃうんじゃないかと思うくらい泣く。
あれこれ試して、必死に宥めるが、
“うぎゃぁ~、うぎゃ、うッ、ぎゃぁッギャッぎゃあ、あッ、あッ、あッ…”
泣き止まない。
泣かれると…、
子供の要求に応えられない自分が情けなくて、
ごめんね、ごめんね、
私の所に生まれたばっかりに、こんな、ごめんね…。
お母さんのこと嫌いでも…お乳は上げ続けるからね。
なかなか泣き止まない娘を前に、夜中、空しくなる。
眠っていると天使、愚図ると鬼瓦。その豹変ぶりに、
もう…どうしていいのか、分からなくなる。
そう悩みを訴えたら、
「みんな、そうですよ」
お乳、夜泣き、育児に悩み、悩みながらもお母さんはずっとお母さんで…。
赤ちゃんは赤ちゃんで今を必死に生きて、成長過程で途中もがくわけで…。
私から生れ落ちた赤ちゃんの方にこそ、大きな試練が与えられているのかもしれない、そう思った。
ちなみに、どうしようもなくなったら、赤ちゃんを安全な所にそっと置き、パタンッ。
別室で深呼吸、ノンカフェイン茶でも飲んで一服してから、再びあやそうと言われた。

神秘の水、アムリタ

2014-09-21 | ~ 出 産 ~
「私の、(お乳)出にくいですか?」
助産師さんにお乳チェックしてもらった。
むぎゅッ、
「ッ(イタッ)」
右乳の脇に大きな塊があって、母乳渋滞を引き起こしていた。
その渋滞を緩和したら、出るわ、出るわ、お乳がでるわ、で、
お乳を鷲掴み、すると、お乳はぴゅーッと噴水みたいに出た。
自分で揉むと力をセーブしてしまうので噴水になることは少なかった。
しかし、躊躇容赦ない助産師さんの乳マッサージは一発で噴水させる。
助産師さんは私の乳噴水を浴びながら、
揉む。揉む。揉む。
ピュ、ピュ、ピュ、
いったい、どこでその乳マッサージを習得するのだ?
どんだけの乳を揉んだら、そうなるのだ?
私は揉み解されながら、その技を盗もうと試みた。しかし、噴水はすぐに終わった…。
「大丈夫です。十分に出ますよ」
余り出すと、勿体ないらしい。
お乳とは貴重であり、神秘としかいいようがない。
インド神話で月から流れ出るアムリタ(甘露水)というものがある。
神々や悪魔が世界を舞台にそれを廻って、大戦争を起こす、なんて話であるが、乳白色のそれは、まさに、お乳だ。
入院中、私のアムリタを固く信じて疑わない助産師さんがいた。
多くの男性陣から、無礼にも貧乳とレッテル張られる私の乳で。アムリタなんて出せるはずがないと思っていた。しかし、一人の助産師さんはこう言った。
「金田さんの、出ますから」
何を根拠に?どうしてそんな自信を持って、出ると言えるのか?
「青い筋が見えるから」
つまり、胸が小さいとか、大きいとか、関係ないらしい。
胸の青筋がアムリタの通り道で、私のはくっきりと、無数に浮き上がっていたのだ。
妊娠したら体質が変わるというが、お乳もそれなりに準備をしていたというわけである。

鬼さんこちら、乳出るの方へ♪

2014-09-20 | ~ 出 産 ~
後日、二週間健診でも順調に体重が増えていた。
「元気ですね、将来楽しみだ」
小児科の先生がそう仰って下さるくらい、とても活発な娘である。
先生の言葉に安堵するものの、その頃から娘に異変が起きていた。
“おんぎゃぁ~”
夜泣きである。
皆が「おやすみぃ~」と床に就く頃、泣き地獄が始まる。
オムツを替えて、お乳を飲ませて、ゆらゆら抱っこで寝かしつけて、
うとうと…、さぁ、お布団の中に入りましょうね…と、
“う゛ッ。うぎゃぁ~、うえッ、うえッ、ぎゃぁー”
パチッとした二皮目、くりくりの大きな目を見開いた。そして、顔が豹変、鬼瓦と化す。
泣き出した赤鬼さんをあの手、この手で、いろいろ宥めすかすが、やっぱり、鬼だった。
“ぎゃぁー、ぎゃぁッ、ギャッ”
鬼さんは、さらにエキサイティング。
夜泣きはヒートアップ、バージョンアップ。アップアップで涙を流してまで泣く始末。
「紗ちゃん、どうしたの?何泣いているの?」
生後二週間日本語を知らない。こりゃ、エーリアン(異星人)だ。
なるべく早く、このエーリアンちゃんに日本語を叩き込もう…。
「お乳が足りないの?」
さっき飲んだばかりだが、再びお乳をやってみる。
すると、ベッと吐き出し、おっぱいを引っ掻いた。
まさか、お乳の出が悪いから?そうなの?そうなんだ。
お乳が足りないんだ。お乳…私のお乳、お乳がぁ…、あ、あ…、あぁ、
お乳ノイローゼである。
健診では、順調に体重を増えて、健康状態にも問題は無い。
娘に何の問題がない、とすれば…、
「私のせいだ。私に問題があるんだぁ、お乳も、あやし方も悪い。私のせいだぁ、あ~」
こうなったら病気である、深刻化する前に手を打とう。
「はい、母乳外来にお繋ぎします」
母乳外来に予約して、助産婦さんに救いを求めた。

初めてのことだらけ

2014-09-19 | ~ 出 産 ~
「すごい、頑張りましたね。お母さん」
娘は順調に体重を増やし、退院時2460gだった娘は、2680g。
一日55gずつ増えていった。
これで再入院は無くなった。
まずは一安心。
しかし、娘の体重を増やせばいい、というモノではない。
もう一つの課題は…、
「じゃ今度、母乳をあげてみましょう」
十分に飲ませる事が出来るか、である。
授乳クッションを装着、クッションに娘を乗せて、
「お腹とお腹をぴったんこ、あぁんと大きなお口を開けて…紗ちゃん」
娘の鼻に胸を近づけて、大きなお口を開けさせ、パクッと乳輪丸ごと銜えさせる。
ちゅば、ちゅばと音が出たら、やり直し。
(ちゅー、ちゅー)
乳房の中の小さいストローからお乳を吸い上げるような音と、感覚を感じたら、OK。
しかし、
「あ…」
お口から乳房をすぐに外す。
娘にとって初めての運動が吸うこと、私もお乳を出して吸ってもらうことは初めてで、まだまだ下手クソである。
「上手くいかないんです…」
最初から上手な人はいない、そう分かっていても、娘に十分に飲んで貰えないと、
自分を責めてしまう。
ダメなお母さんでごめんね、ごめんね…、
申し訳ない気持ちなる。
「十分に(お乳)出てるから、自信持って下さい」
助産師さんに手伝ってもらって、
「ほら、こく、こく、こく…、飲んでいるでしょ、大丈夫ですよ」
育児に母乳と初めてのことだらけで自信が持てなかった。けど、
初めての母乳外来で、少し、ほんの少しだけ、お乳に自信が付いた。

母乳外来

2014-09-18 | ~ 出 産 ~
母の、思い出ぼろぼろ。涙のお披露目から二日後8月26日、母乳外来の日が訪れた。
この日は母乳チェックと、ドキドキの娘の体重測定がある。
これで体重が減っていれば…、再入院だ。
予約は二時半。
丁度授乳時間だが、飲むっぷりも診たいから、と
「母乳を飲ませず、お越し下さい」
産科婦人科の診療が終わった午後、静まり返った二階の待合室で、これから何が起こるか知らされていない娘はおくるみに包まれて、すやすや眠っていた。
「金田さん、まず、体重から測りますね」
娘は一瞬ビクッとなった。
当然、おくるみをはがされ、びっくりしたのだ。
「あ、ごめんごめん…」
10ヶ月あまり羊水に守られて過ごした娘には、ちょっとしたことでも大きな刺激なのだろう。
看護師さんに、ひょいと軽々と持ち上げられ、一人部屋の中へと連れて行かれた。
パタンッと大きな扉が閉まり、娘の体重測定…、私は急に不安が押し寄せた。
「増えているかな…」
授乳するたびに実感する命の重み…それが錯覚でないことを祈りつつ、娘を待つ。
「お母さんの方は、こちらの部屋へ」
娘が体重測定している隣の部屋に連れられ、私の母乳チェックが行われた。
むぎゅッと掴まれた胸が、
「イタッ」
右胸の奥に大きな塊があって、それに触れると痛い。
「搾乳する時も痛くて痛くて…これって、乳腺が詰まってる、ってことですか?」
詰まっているまではいかないが、流れが滞っているらしい。
つまり、お乳の渋滞だ。
押すと痛い。しかし、押して出して、解してマッサージしないと、詰まるらしい。
「授乳中も、ここ(右胸の塊)を押して、あげて」
授乳しないと、お乳は詰まる(止まる)。痛くても搾乳しないと、乳腺炎になる。
兎に角、痛くても、お乳を出すこと。
それが、お乳の出を良くする、最善策のようだ。

育児奮闘中

2014-09-17 | ~ 出 産 ~
生まれて一ヶ月が経ちました。

小さいのに、元気いっぱいです。

夜泣きはしなくなったものの、
日中、大わらわです。

愚図って、
乳やって、
乳くわえながら寝て、

「寝ちゃった…」
とベッドに寝かすと、
「うぎゃー」
突如、泣き出して、

胎動聞かせて、寝かせて、

やれやれ寝たわ、と思ったら、

「なんで、アンタまで…」

猫まで甘えてくる…。



三日の団子、母たちの思い

2014-09-16 | ~ 出 産 ~
「まあ、そんな大変だったの…」
授乳を終えた嫁を義理の母は労った。
母乳への思いは、一入。
私も主人も母乳で育っていない。
実母は母乳が出なかった。義理の母は留まることなく流れ続け、与えられなかったそうだ。
二人の母の、出ない辛さと出るのに吸わせられない悲しみを聞いていたので、私は出来れば母乳で育てたいと思っていた。
妊娠発覚から胸が張って「これなら…」と、妊娠発覚から乳マッサージをしていた。
妊娠中期に入って、お乳が出るようなって、もう「大丈夫だ」と安心しきっていた。
しかし、現実はそんな甘いモノでは無かった。
空腹を満たせる量か?
栄養が足りているか?
子の心満たせる量か?
総合的に、満たせるかどうか…大きな壁と、見えない不安にぶつかっていた。
“お乳が出るように…”
出産から三日目、主人は水筒を持って面会に来た。
中身は、義理の母手作りの三日の団子(米粉団子の味噌汁)だった。
これを食べると乳が出る…こちらの方の昔からの言い伝えである。
遠い昔から母の思いや願いは、一つ。
母の乳を飲み終え、満たされた寝顔の我が子、我が孫を見ること、それだけ。
「義母様の三日の団子のお蔭です…はい」
私は義理の母の腕に、娘を置いた。
愛おしそうに、大事に孫を膝の上に寝かせていた。
義理の母は、ずっと、ずっと、女の子が欲しかったらしい。
“次は、絶対女の子…”
家に女児用の服が40年も前からタンスに眠っていた。
それを引っ張り出して、着せてやって、と持って来た。
それに、娘と一緒にやりたかったであろう、縮緬細工が至る所に飾られている。
しかし現実に産まれた第二子が、今の私の主人。
女の気持ちも、母の思いも、からっきしで、大変苦労したであろう。