中日春秋 (2020年4月17日 中日新聞)

2020-04-17 09:45:37 | 桜ヶ丘9条の会

中日春秋 

2020/4/17 中日新聞

 歌人の島木赤彦による童謡詩『月夜』は、かすかな物音が耳元に響いてくるような夜の静かさをえがく。<杏(あんず)が熟れて/落ちるのか/月夜の畑に/音がする/草木も眠った/夜なかごろ/誰も知らない/音がする>

▼窓の向こうの道路から、いつもほど車の往来の音は聞こえてこない。近くに道行く人の気配も感じない。詩を思わせる夜が、ここのところ続いている。緊急事態宣言の拡大で、こうした静かさも全国に広がることになろうか

▼実際に地球は静かになっているらしい。世界の都市部を測定している地震計は、自動車や人の往来による振動が、激減していると示している

▼新型コロナウイルス対策のための都市封鎖などで、異例の静かさだそうだ。おかげで、研究者はふだん聞こえにくい音をとらえられるようになったという。米国のナショナルジオグラフィック誌が伝えていた

▼欧州では、夜のバルコニーから、医療に携わる人たちへの拍手が起き、感謝の声があがった。感染のおそれのなかで、ウイルスと闘う人たちだ。遠くの声を近くに感じさせるように、離れて奮闘する人たちへの共感を呼び起こす静かな夜であろう。わが国でも同じ思いを感じている人も多いはずだ

各国で空気もきれいになっているという。経済活動の停滞による一時的なこととみられるが、やればできるという声が耳元に響くようでもある。


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