梅雨末期の豪雨頻発 (2020年7月9日 中日新聞))

2020-07-09 09:58:59 | 桜ヶ丘9条の会
梅雨末期の豪雨頻発 (2020年7月9日 中日新聞) 
 
熊本や福岡など九州に続き、岐阜、長野の両県を中心に中部地方も激しい雨に見舞われた。梅雨の終わりに当たる六月末から七月初めにかけては、大きな被害をもたらす豪雨災害が数年ごとに起きている。頻発する雨の被害を受け、国はダムなどの施設整備を重視した施策から住民や自治体が加わる「流域治水」に切り替え、減災を目指す方針だ。 (戸川祐馬、安藤孝憲、榊原智康)
 ■熱帯並み
 「日本近海が熱帯並みになっている」。三重大の立花義裕教授(海洋気象学)は、梅雨の末期に豪雨が頻発する大きな要因として、地球温暖化による日本近海の海面水温の上昇を挙げる。
 日本列島の南の海域の七月の海面水温(平均値)は、五十年前に比べて一度上がって二八度になり、海水が蒸発しやすくなった。その結果、梅雨前線に南からの風が運び込む水蒸気の量が激増し、積乱雲が山にぶつかる際などに、これまでよりも大量の雨を降らせるようになったという。
 梅雨の末期でも七月の海面水温が六月よりも二度ほど高いため、雨量が多くなりやすい。二〇一二年と一七年の「九州北部豪雨」、一八年の「西日本豪雨」など九州で豪雨が集中することについて、立花教授は「この時期は西風になることが多いため、西側に海がある九州の被害が大きくなっている。風向きによって被害が出る地域は変わる」と説明する。
 ■広域化
 被害の範囲が広域に及んでいることも近年の豪雨災害の特徴だ。一四年には台風8号と梅雨前線による大雨で、沖縄から東日本にかけての広い範囲で被災。この雨で同年七月九日、長野県南木曽町の木曽川支流の梨子沢(なしざわ)で土石流が発生し、当時中学一年の男子生徒が巻き込まれて亡くなった。
 福岡、大分両県を中心とする一七年の九州北部豪雨では、福岡県朝倉市などで計四十四人が犠牲になった。西日本豪雨では九州や中国、四国地方で河川氾濫や土砂災害が頻発し、死者は二百人を超えた。当時、岐阜県でも大雨特別警報が発令され、同県関市で長良川支流の津保(つぼ)川が氾濫して男性一人が死亡した。
 ■対策
 これらの被害を受け、国は本年度から治水対策の方針を転換した。堤防やダムで「水をあふれさせない」としてきた従来の対策から、居住地の見直しや貯水池の整備、避難体制の強化などハードとソフトの両面で施策を見直し、仮に河川があふれても被害を最小限に食い止める「流域治水」という考え方を打ち出した。
 具体的には全国にある一級河川の百九水系を対象に、「流域治水プロジェクト」と名付けた対策を年度内に策定。今回の豪雨で氾濫した飛騨川を含む木曽川水系も対象になっている。
 名古屋大の田代喬特任教授(河川工学)は「水に漬かってもいい場所を事前に確保しておき、大雨になったら、あえてそこにあふれさせる。そうすればダムのような効果が得られ、被害が減らせる」と強調。ただ、場所を確保するには居住地の移転などが必要なため、「長期的なまちづくりと合わせて整備することが求められる」と指摘する。
 愛知工業大の小池則満教授(防災計画)が今後の対策のポイントにあげるのは、避難体制の強化だ。中でも、避難のタイミングなどを段階的に時系列で想定する「タイムライン」の普及に力を注ぐべきだとし、「自治体だけでなく、企業や学校など、より住民に近い施設で導入を図っていく必要がある」と話した。

 


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