中部の激戦区 改憲優先とは言えない (2022年7月12日 中日新聞)

2022-07-12 22:57:44 | 桜ヶ丘9条の会

中部の激戦区 改憲優先とは言えない

2022年7月12日 05時05分 
 参院選は中部の激戦区でも自、公の優勢が目立った。しかし、結果からは、改憲や防衛力の強化に対する現政権の積極姿勢に対し、慎重な立場をとる有権者も少なくないことがうかがわれる。与党はおごらず、丁寧な政権運営を心がけてほしい。
 激戦だった改選四人区の愛知では、自民、公明の現職と野党の立民、国民の現職が議席を守った。一方、維新新人は知名度の高い河村たかし名古屋市長の全面支援を受けたが、中部地方で初の参院議席を得ることはできなかった。
 改選一人区では、三重で自民新人が当選。岐阜、福井、滋賀は自民現職が議席を守ったものの、与野党対決の構図になった長野で立民現職が自民新人を破った。
 この参院選で、自民党は焦点の改選一人区で二十八勝四敗と野党を圧倒し、単独で改選過半数を確保する大きな原動力となった。だが、中部六県の選挙区に限ってみれば、九議席のうち与党が六議席、野党が三議席を獲得しており、与党圧勝とまでは言えない。
 特に、愛知選挙区では旧民主系の現職二人が維新新人との競い合いに苦戦しながらも議席を守った。立民と国民に分裂して選挙を戦い、強力な支援組織となる労組票の票割りに苦労したことや、野党競合により与党批判票が分散したことが、かつて「民主王国」とまで言われた愛知で旧民主系現職が苦戦した原因だろう。
 とはいえ、憲法改正に前向きで与党とともに「改憲勢力」とされ、今回躍進した維新が議席を獲得できなかったのは、改憲論議を優先課題とする考えには必ずしも与(くみ)しない有権者が少なくないという証左であろう。また、改憲を第一課題に訴えた候補者もほとんどいない。国民も改憲勢力に色分けされるが、参院愛知選挙区で女性として初めて二期連続当選した国民現職は、むしろ「子どものための政治」を重点に訴えた。
 共同通信の出口調査では、投票先を決める際に最近の物価高を考慮したかどうかについて、「考慮した」と回答した有権者の割合は支持政党別で立民72・6%に対し自民も67・5%と高い。
 本紙の取材でも、中部地方の有権者から物価高対策や賃上げを求める声が多く聞かれた。岸田政権は改憲論議にかまけるのではなく、国民の暮らしをどう立て直すかに全力を傾けるべきである。