三幸製菓の火災 従業員の安全守らねば (2022年6月3日 中日新聞)

2022-06-03 20:38:08 | 桜ヶ丘9条の会

三幸製菓の火災 従業員の安全守らねば

2022年6月3日 中日新聞
 企業の社会的責任をどう考えていたのか。米菓メーカー、三幸製菓(新潟県村上市)の工場が全焼し、従業員六人が死亡した二月の火災で、会社側が五月末、ようやく初めての記者会見を開いた。経営トップが謝罪した=写真。再発防止策にも言及したが、従業員の安全を守るという意識の欠如は明らかだ。
 会見によると、二月十一日の深夜、菓子を焼く釜の上部に設置された乾燥機の周辺で、炎が広がった。数分後には黒煙が充満し、場内は停電。翌朝まで燃え続けた。
 あまりに痛ましい亡くなり方だ。六人のうち、女性アルバイト四人とも、火災を感知して閉じられた防火シャッターのすぐ内側に倒れていた。四人とも深夜の清掃担当で、避難訓練には一度も参加していなかったという。避難経路や非常扉の存在を知らず、真っ暗闇の中、煙にのまれたとみられる。
 会社側も「周知が不十分だった」と認めたが、この工場は過去に何度も火災やぼや騒ぎを起こし、消防から避難誘導灯や消火設備の不備も指摘されていた。「その都度改善してきた」というが、安全管理意識の欠如は甚だしい。県警は業務上過失致死の疑いで捜査している。火災後、労働条件を定めた書面を四人と交わしていないという労働基準法違反の疑いも明らかになった。
 創業家出身の経営トップは会見までに三カ月半を要したのは「遺族対応、原因調査を優先したため」としたが、会見は遺族も強く望んでいた。「ぱりんこ」や「雪の宿」などの人気商品を製造するメーカーとして、説明責任を果たそうという姿勢がみえない。生産の再開は、消防の検査や遺族の理解を得た後というが、遺族が不信感を募らせているのは当然だ。
 新潟労働局の要請で、県内の米菓メーカー十四社が実施した緊急点検によると、計三十四工場のうち、三分の二に当たる二十三工場で「不適切な安全管理」が見つかった。特に「避難訓練の未実施」や「アルバイトは訓練計画上、対象外」がともに三割に上った。他業種も含め、自社の安全管理態勢を早急に再点検してほしい。